66 冬の妃と麒麟の死骸
出産から一晩経ち、解毒の経過と
宮と宮は二連橋で繋がっている。庭や道の端には雪が残っているものの、妃嬪が転倒することのないよう遊歩道や橋などの雪は綺麗に掃かれていた。葉を落とした梢にはまだ雪の牡丹が咲き群れている。
ひとつめの橋の越えたところで、見覚えのある影といきあった。冬の季妃たる
慧玲は橋の横に避け、通りすぎるまで頭をさげる。だが
「む、そちは食医ではないか」
「
皓梟は
「そうか、そちが
「冬の妃妾たちを助けてくれたとか。礼節を失した
「恐縮でございます」
皓梟は不意に、遠くに視線を馳せた。
「されども願掛け如きで
予想だしなかった言葉に、慧玲は戸惑いを隠せなかった。
麒麟は皇帝の威光を象徴する。麒麟の死を語るとは不敬であり、現皇帝にたいする反心と見做されかねない。慧玲の緊張を感じてか、皓梟は続けた。
「ほほほ、物の
「はあ、譬え、ですか」
「左様。麒麟が死したのであれば、宮廷で骸が見つかるはず。それが
「ああ、骸といえば、後宮にある古き
「廟ですか。
「
「そもそも後宮のなかに廟があるなぞ異様であろう。果たしてや、なにを納めた廟であったのか……
微笑を残して、皓梟は今度こそ通り過ぎていった。
(それにしても)
「
皓梟といれ違いに
藍星には
「終わりましたよ!」
「お疲れさまです」
「毎年寒くなると
藍星の報告に笑顔で頷きながら、慧玲は頭のなかで考えを巡らす。
(麒麟は、確かに息絶えた。先帝が処刑されたあの晩に)
慧玲だけが事の真相を知っている。
だが息絶えた麒麟に触れた彼女は気絶し、意識を取りもどしたときには通りがかった宦官に捕らえられ、罪人として投獄されていた。それからは処刑場に連れていかれ、皇帝と取引をし、離舎に還された後、再度確かめにいったときには麒麟の死骸はこつ然と消滅していた。
(麒麟の亡骸は、何処にいったのか)
胸が重く、脈を打つ。身の裡で別の命がうごめくように。
予約投稿できていなかったことに気づきました……。
金曜日に投稿するつもりだった話ですが、一日後れで投稿させていただきます。
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