第二部《火の毒》は燃えさかる
20 回想…麒麟死す
その晩、緑に燃える星が落ちた。
秋だった。
今晩、先帝の死刑を執行するとの報せを受けたときも、皇后は取り乱すことなく神妙に肯った。それがあるべき帰結だというように。
その後皇帝の処刑を待たずして、皇后は毒盃を飲み、命を絶った。
それは、
幼い頃から毒殺の危険にさらされては解毒を繰りかえしてきたせいか、毒のまわりが異様に鈍かったのだ。
哀しいのか、怨めしいのか。
混濁する意識のなかでは、解らなかった。
ただ、帝に逢わなければならないとおもった。
慧玲は宮廷の処刑場にむかって、黄昏の竹林を歩きだした。陰った雲は青みがかって重く垂れさがっていた。何処までも昏いばかりの夕だった。
次第に季節はずれの雪が舞いはじめた。慧玲は雪に凍てついた笹を踏み、裸足で進み続ける。時に転びそうになりながら。
暮れふさがる白銀のなかで彼女は、現実とは想えぬものに会った。
龍を想わせる有角の頭に鱗に覆われた鹿の身。
麒麟は蹄のある六脚を投げだして、静かに横たわっていた。
言葉を絶するほどに美しく、惨たらしかった。
まもなく息絶えるのだとわかった。
麒麟は国の
「……父様」
何処からか、処刑斧の響きが聴こえた。
処刑場までは遠い。人の耳に聴こえるはずがなかった。想わず振り仰げば、星の
麒麟は最後に哀しげな声をあげ、死に絶えた。
想わず麒麟の亡骸に触れる。そのとき、何かが彼女の身に
想いかえせば、あれが
すべての始まりだったのだ。
* 連載再開、ここから第二部の開幕となります。
今晩は二話投稿です。続きは21時に投稿致します。お楽しみに!
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