はじめは正直、ただのえっちな百合小説だと思って読み始めた。けれど読み終わってみたら、こうしてレビューを書いている。初めてレビューを書きたいと思った。端的に言えば、とても面白い作品だった。
読み始めてすぐは、「先輩×後輩ですか、いいですね」と腕を組んでいたが、次第に「この作品は何か違うぞ」と思い始めた。それは地の文の綺麗さだったり、キャラクターの台詞回しだったり、ともかく「文章のうまさ」が理由だと思った。
その「何か」が何であるか、決定的だったのは、畑野がサッカー少女の青春小説を書くシーン。そこでようやく、この作品が文章を通して我々にメッセージを伝えようとしていることに気がついた。語弊を恐れずに言えば、web小説でそこまで表現する作品は珍しいと思う。
そして、「努力が報われなくても、努力してきた事実は消えない」というメッセージが、読後感に浸っていた私にレビューを書かせたのだと思っている。もちろん、作者がこの作品によって本当は何を表現しようとしていたか、それは定かではない。しかし、今までの人生の歩みが決して無駄ではない、だからどんなに遠回りしても最後は前を向こう、という非常に前向きなメッセージを私は受け取った。
私は人生において大きな挫折や苦悩を味わったわけではないが、それでもこのメッセージには激しく共感した。何かにつまづいているわけではないが、励まされたような気がした。そんなパワーのある作品だと思う。
文芸同好会の飲み会に参加した畑野は、不本意ながら酔った篠宮を送ることになる。だが、彼女を家に泊めた次の日、二人はなぜか同じベッドで寝ていた。しかも全裸で。記憶にはないが、彼女たちは一線を越えてしまったのであった。
という出来事をきっかけに、二人は少しずつ交流し、お互いを知り、心を通わせていきます。その過程で描かれる様々な感情はとても強いもので、読んでいるこちらの心まで揺さぶられました。画面を突き抜け、私自身の心がそれらに曝される体験をしました。苦悩、渇望、愛情。どうしようもなく葛藤しながら足掻いたり、心の奥の方が満たされたり、想いに身を焦がしたり。そんな畑野と篠宮にすごく感情移入したし、心を掻き乱されたし、ドキドキしたり、思わず笑ってしまったりしました。
二人の人柄、歩み寄る様子、心の変化など、本当に丁寧に描かれていると感じました。友愛、恋愛、依存。二人の関係によって少しずつ「好き」の見え方が変わるのも良いなぁと思いました。
持つもの、持たざるもの。努力、結果。それらは全ての人間が共感し得るもので、込められたメッセージは心強かったです。他者と向き合い、自分と向き合う物語でもありました。
正直、良すぎて感想がまとまりません。
心と心の強い結びつき、藻掻くような生き様、成長物語。百合に限らず、そういった言葉に心を引かれる方は、ぜひ読んでみてください。
劣等感で苦しい、努力がなかなか報われない、心が折れそう。そんな方にも読んでほしいです。
素晴らしい作品でした!
タイトル詐欺に遭いました。(良い意味で)
これはただのエッッな百合ではありません。
むしろそういう描写に期待すると肩透かしをくらうと思います。一応百合に分類されると思いますが、枠に留まらない魅力があります。
正義感と理屈で世界を見つめる主人公と本当の自分を見失ってしまい迷走中の彼女。一般小説に近い文体で、表現豊かに、かつ繊細に物語が進んでいきます。描出力の高さもこの作品の凄さだと思います。繊細な心の移り変わりが丁寧に綴られていて、読み手も感情が揺さぶられます。
ちょっとでもタイトルが気になった人、(百合が好きだけど)タイトルで避けようとした人、繊細な心理描写が好きな人は必読です。
It is hard to convey how well written the story is. Not only every aspect of characters is described thoroughly, but their emotions and struggles are realistic and charming that i can't help but read all of it at once.
Not just about dare to dream and follow your dream, but also redemption and forgiveness. Overcome such hardness, the two MCs finally found their happiness together.
10/10 would read again.
入りはタイトル通りだし、フックとして十分機能してるとは思う。
私自身タイトルに引っ張られて読み始めたので。
そして、表現の艶っぽさとか、動きのきれいさと相まって読み始めのスタートダッシュはバッチリ。
けれど、そこより何より。
作品の魅力は登場人物の心理描写、感情のグラデーション、キャラクター造形が素晴らしい。
また、描写が簡潔ながらも的確で
もうホントに小説なのだけど情景が絵として浮かび易く頭の中でマンガみたいに動いてました。
水族館のトコとかホント好き。。。
文体も読み易く、
20代前半-中盤位の情熱と現実、感情と自身を規定してきた何かの葛藤とか、読んでて応援したくなる一作。
是非読んでみて欲しい
人と向き合うってこういう事だったなって
感じさせてくれる作品です。