第10話「実践授業のチームメンバーが不安だ」『一番の害悪要因』

 今日は待ちに待った実践授業だ!


 講義は説明が下手すぎて何も分からなけど、実践授業はみんなの魔法を見て学べるから、良い授業だ!


『お前はまだ一つも魔法を学んでいないけどな。筋肉の放熱を魔法とは言わん』



 ん?


 なんか今日は先生と生徒の数が多い気がする。



「はい、みなさん集まって。今日の授業の主任のエリス先生のお話を聞いてください」



 あ、今日の授業内容の説明があるみたいだ。



「今日はみなさんに、ちょっとダンジョンに潜ってもらいます」



 え?


 ダンジョンに潜ることが魔法の習得に繋がるのか?



「この一ヶ月でみなさんは、座学にて魔法を学んできました。今日は探索済みで比較的安全なダンジョンで、実際に魔物相手に魔法で戦ってもらいます」



 なるほど、敵を倒しながら魔法を学ぶのか!



「探索済みのダンジョンとはいえ、危険が伴う授業です。引率の先生や有名冒険者の方々が強力な魔物は間引いていきますが。くれぐれも油断はしないように。それでは、三人一組でチームを組んでください!」



 なるほど、誰かと一緒にダンジョンに潜るんだな!


 ここは優秀なマックと組もう!



「おーいマック……ん?」




 なんかマックの周りに人だかりができているな。



「ニック様! 私と組んでください!」


「いや、ニック様はアタシと組むんだから」


「俺と組んでくれるよな? 幼馴染の仲だろ? ニック」


「拙者もお供させていただきたく!」




 これは、もしや!



 優秀なマックから僕を引き剥がすクラリスの工作か!


 ここまでやるとは、さすがに彼女の差別思想も行き過ぎていて怖い。



『いやお前の妄想の深刻さのほうが行き過ぎていて怖いよ』



 クソ、仕方ない。こうなったら一人で潜るか。一応ダンジョン探索の経験はあるしな。



「あの、マチョスくん」


「ん? ああ、メアリーか。あれを見てくれ。まったく、酷い差別、工作だよ……」


「はぁ。よく分かりませんが、もしよかったら私と組みませんか? 【オーラ使い】の方の戦い方を見るのは良い経験に――」




 ん?



 なんか向こうに見覚えのある子がいるな。


 孤立している。僕と同じく差別されている人間か?



「ってあの服はやはり! おーい、君!」



 あの服はこの前僕と同じく服で差別されていた子じゃないか。名前は……よく覚えてないな。




「あ、あなたはこの間の……マチョスさん、でしたっけ?」


「そう。僕マチョス。やはりまた服で差別されているのか、エリスさん」


『それは授業の主任の先生の名前だろ。覚えてないなら適当に呼ぶなよ』


「セリーヌです。いえ、差別というわけではないのですが、私は友達がいなくて……」


「僕も差別工作で困っていたところなんだ! 一緒に組まない?」


「え? いいんですか? ぜひお願いします!」




 よし!


 チーム完成だ!



「それじゃあさっそくダンジョンに向かおう!」


「あの、あと一人足りてませんが……」


「はじめましてセリーヌさん。メアリーって言います。私もご一緒させて頂く予定ですよ」


『あ、こいつ筋肉バカと会話するの諦めたな』


「め、メアリーさん!? 常に主席のメアリーさんと一緒だなんて……」


「いえいえ、私なんて【オーラ使い】のマチョスくんと比べたら、まだまだです」

 

「お強いのに、謙虚な方なんですね……。凄いです。迷惑をおかけしないよう、頑張ります」


「いえいえ、こちらこそ」



 なにを呑気にしてるんだ!



「おい! 気を抜いてお喋りなんてしてたら、ダンジョンでは危険なんだぞ! まったく、今はいいけどダンジョンに潜ったら常に危険と隣り合わせなんだ! 呑気にお喋りなんかして、迷惑をかけないでくれよ!



『こいつマジでクズだな。お前が一番迷惑だろ』




 なんか不安な二人と組むことになってしまったな。



 まあいいや。なんとか頑張って、この授業を乗り越えて魔法を習得してみせる!



 出発だ!

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