第9話「差別は許さん!」『色気より食い気』

 学園生活が始まって一週間が経った。


 相変わらず先生の説明は下手すぎてダメだね。


『お前の頭がダメなんだがな』



 ああ、早く実践授業がしたい。


 もっと魔法を覚えたいんだ!




 さて、お昼の時間だ。食堂に行こう。



 ん?



「おい、そこの女! ここはオレらの席なんだよ! どけや!」



 なにやら女子生徒が絡まれているようだ。


 お腹が減るとイライラするのは分かる。



 僕も今すごくイライラしてるから。



『イラつくのはいいけど巨大化はしないでくれよ』



 さて、今日のメニューは何かな。



「つーかその制服、お前Fクラスじゃねえか」


「落ちこぼれのFクラスが生意気に食堂に来てんじゃねえよ」



 なんだと?



 僕は銀髪の女子生徒に絡んでいる男子生徒の肩を掴んだ。



「おい君。今、なんて言った?」


「ああ? なんだオマエ? 見りゃ分かるだろ。こいつの制服、Fクラスの――」


「服で差別をするのはやめろ! 僕もSクラスなのに、なぜかみんなと違う服を着せられているんだ! こんな差別は許されるべきではない!」


『いやお前の服は伸縮自在の特注だから仕方ないだろ』



 クラリスの工作はいたるところに及んでいる!


 差別思想に陥った彼女は、服による差別も企んでいるんだ!



「Sクラスだぁ? そんな奴がこんな学園の端の食堂に来るわけねえだろ。冗談もほどほどにしろよ」


『いや、こいつはもう上級クラスの食堂のマチョス専用メニューを食い尽くして、それからここに来ているんだよね……』



「つーかこのヒョロガリ、【魔力無し】のくせにおこぼれで合格してたやつじゃん」


「うわ、そんなんで正義の味方気取り? だっせえ奴だな!」



 なんだと?


 今の言葉は聞き捨てならないな。



「僕は【魔力無し】なんかじゃない! ちゃんと炎魔法が使えるんだ! ウオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」


『ホント、特注の制服を用意した学園の采配は正しかったな。放熱が加減されてるから死人は出ないだろう。それにしても膨らみ過ぎだが』



 クソ!


 なんか前より火力が出ない!



「あ、暑い! なんだこりゃ!」


「こんなクソ暑いところいられるか! 仕方ねえ、向こう行くぞ!」




 ん?


 なんか知らないけど逃げてしまった。



 まあいいか。魔法を使ったらお腹の減りが加速してきた。



「あ、あの。助けてくれてありがとうございます。私、制服を見て貰えば分かる通りFクラスの落ちこぼれで。水魔法の、それもシールドしか使えなくて……」


「服で差別される気持ちはよく分かる! これからも差別をされたら僕に言って! 魔法で倒してあげるから!」


「は、はい。というかさっきの【オーラ発現】……あなた、噂のマチョスさんですよね?」


「うん。僕はマチョス。君は?」


「セリーヌって言います。あの、よかったら一緒にご飯食べませんか?」


「え? やだよ。僕の食べる分が減るじゃん」


「え?」


「悪いけど、差別されている子だからって、食べ物を恵んであげるほどの余裕はないんだ」


「は、はぁ」


『いや、この子の飯はもう目の前にあるんだから、これからお前が食う飯が減るわけじゃないだろうが』



 ああもう、我慢の限界だ。


 早くなにか食べないと餓死してしまう!



『そもそも、こっちの食堂にもマチョス専用メニューが用意されてるから、どうやったってお前の食べる分が減るなんてことはないんだが。まあこいつにそんな難しいことが分かるわけないよな……』




 さて、今日のメニューは何かな!

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