第5話「受験、絶対合格してやる!」『確実に不合格』


「それでは、まず的当ての試験を開始する」


 この試験は、なんでもいいから魔法を使って的を狙う試験。放たれた魔力によって点数が数値化されるらしい。



 一番手は赤髪の眉目秀麗な少年。



「ファイア!」



 彼が一言詠唱を唱えると、的が倒れて数字が出た。



「受験番号001、ニック! 的当て100点!」



 すごいなあ。


 この試験の平均点は40点だそうだ。


 あのニックと呼ばれた少年は非常に実力があるみたいだ。




 そうして次々と受験生が的当てをこなしていった。



 点数は様々だったけど、最初のニックの100点を超える点数は出なかった。




 お、次はメアリーの番だ!



「ライトニング!」



 メアリーが一言詠唱を唱えると、的が倒れて数字が出た。


 なんか凄い勢いで的が倒れたぞ?


 というかぶっ壊れたぞ?



「受験番号114、メアリー! 的当て999点! 上限突破!」



 999点!?


 すごすぎる……。



 次は僕の番だ。


 あんな凄い魔法を見せられたあとだと、緊張するな……。


 でも大丈夫。僕は妖精さんから魔力を授かったんだ。



「ウオオオオオオオオオオ!」



 僕は魔法がよくわからなかったので、的に向けて拳を振るった。



 的どころか、その奥の壁まで吹き飛んだ!


 これは前代未聞の高得点じゃないか!?



「受験番号115、マチョス! 的当て0点!」



 え?



『パンチの風圧でぶっ壊しただけですから、そりゃ魔法点数は出ませんよ』



 くそぉ。的当ては上手くいかなかったみたいだ。


 だけどまだ試験は残ってる。まだ諦めないぞ。






「次は魔力測定! この水晶をそっと握ってください! 潜在的な魔力が数値として出ます」



 さっきの的当ては詠唱がわからなかったから失敗したんだ。魔力測定ならちゃんとした数字がでるはず!




 一番手はやはり赤髪の眉目秀麗な少年。



「受験番号001、ニック! 魔力100!」



 やはり彼は優秀みたいだな。的当ても魔力測定も高得点。ニックは将来有望な人間だろうな。



 そうして次々と受験生が魔力測定をこなしていった。



 点数は様々だったけど、最初のニックの100点を超える点数は出なかった。




 お、次はメアリーの番だ!



「受験番号114、メアリー! 魔力無限! 上限突破!」



 無限!?


 限りがないってことは……つまり限界がないってこと!?


 メアリー、なんて規格外な存在なんだ。



 可憐な姿をして、実はものすごい力を秘めていたんだな……。



 次は僕の番だ。


 あんな凄い数値を見せられたあとだと、緊張するな……。


 でも大丈夫。僕は妖精さんから魔力を授かったんだ。



「ウオオオオオオオオオオ!」



 僕はありったけの力を込めて水晶を握った。



 水晶は爆散した。



 これは前代未聞の高得点じゃないか!?



「受験番号115、マチョス! 魔力0! 【魔力無し】!」



 え……。



『握力で握りつぶしただけですから、そりゃ魔力判定は0ですよ』



 くそぉ。なんでか分からないけど、魔力測定も上手くいかなかったみたいだ。


 きっと何回も測定をしたせいで水晶が壊れていたんだな。不運だ。


 だけどまだ試験は残ってる。まだ諦めないぞ。




 次は模擬戦闘試験だ。ここで決めなきゃ、あとがない!


 頑張るぞ!



『いや、お前どう考えても不合格だから。諦めろや』



 まだ諦めないぞ!

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