第3話 「飯!水!」『少女メアリーを救出』
「ぐへへ。中々いい女じゃねえか」
僕はいやらしい笑みを浮かべる盗賊の男の前に、颯爽と立ちはだかる。
「やめるんだ! 弱いものをいたぶることは、この僕が許さない!」
「ああ? なんだこのヒョロガキは」
「お前も飯に困ってるクチか? 悪いがこの獲物は俺たちのものだぜ」
こいつらは飯に困ってる奴なのか?
「そうだ! 僕も今空腹で困ってるんだ! 助けてくれ!」
「何言ってんだ?」
「しらね。邪魔するなら殺すだけだ」
やはりこいつらは悪人だ。
僕がこんなに空腹で困っているというのに、助け合うという気持ちはないのか?
「オラァ! くたばれガキ!」
「うわあ」
僕は振りかざされる剣を避けた。
「うわああああああああ! なんだこの暴風は!」
ん? なんか盗賊が全員吹っ飛んでいったぞ?
『やはり筋肉を抑えきれませんでしたか。まさか転がるだけで竜巻を引き起こすとは』
よくわからないけれど、周りに誰もいなくなった。
よし、ロイン魔法王国に行こう。
『ちょっと待ってください。盗賊に襲われていた方を助けないのですか?』
寄り道をしたせいで時間を無駄にしてしまった。これはよくない。一刻も早くロイン魔法王国へ向かわないと。
『水! 食料! あそこの馬車にありますから! 助けなさい!』
「うわ! なんだい妖精さん。急に叫んで」
『なぜ貴方は人の話を聞かないのですか? 貴方は辺境伯のお嬢様を助けたのです。お近づきになって水と食料を分け与えてもらえばいいでしょう!』
「僕は物乞いじゃないんだ。そんなことはしない」
『いや、御託はいいから助けろよ! お前の暴風のせいで才能あるお嬢様が死にかけてるんだよ!」』
うわ!
急に酷い頭痛が!
「く……。僕はここで死ぬのか……」
『あの馬車のお嬢様を助けると頭痛が治りますよ』
「神にもすがる思いとはこのこと……声に従おう」
僕は妖精さんの声に従い、転がる馬車に向かった。
そこには銀髪のメイドさんと金髪の少女がいた。
僕は土下座をした。
「頭痛を治してください」
金髪の少女がつぶらな瞳をこちらに向けた。
「先程の巨体……もしや貴方は【オーラ使い】なのですか」
「僕はマチョスです。頭痛を治してください」
『この筋肉バカ、マジで会話ができないじゃねえか。頭痛治すからまともに会話してくれ。頼む』
頭痛が治った!
「私はアンセム辺境伯の三女、メアリーです。襲われていたところを助けて頂き――」
「頭痛を治してくださいましてありがとうございました! あなたは治癒魔法が使えるのですか!?」
「いえ、私は何も――」
「感謝してもしきれません! 本当にありがとうございました! それでは僕はロイン魔法王国へ行くのでこの辺で」
僕はとりあえず感謝をすませ、走り出そうとする。
『待てや脳筋バカ』
「待ってください。実は私もロイン魔法王国の魔法学園の受験に向かう道中だったんです。もし差し支えなければ、一緒に――」
「ごめん。僕もう余裕ない。お腹も減ってるし喉も渇きすぎて、時間を無駄にしてる場合じゃないんだ」
「み、水と食料ならありますから!」
「ぜひ、ご一緒しましょう」
こうして僕は、メアリーとロイン魔法王国へ向かうことになった。
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