第2話 スコ・カタタキ

 ドスッドスッ。


 僅かに身体に起きる痛みで健は目を覚ました。青い空。白い雲、太陽はまぶしく木々が多い茂っている。何が起きたのかと思い周囲を見て健は驚いた。



「ひぃぃっ!!」


 自分の身体の周囲に見たこともない生き物がいたからだ。大きさは小学生の子供くらいだが顔つきがどうみても人間ではない、というか肌の色も違う。健は暴れた。とにかく暴れた。おもちゃコーナーで親におもちゃを買ってもらえない子供のように手足をバタバタさせとにかく暴れたのだ。その様子はまるで小さな台風ともいえるだろう。


「ギィィィッ!!」


【レベルが上がりました】


「あああああって、え? 何今の?」


 しばらく駄々をこねた健は妙な声が聞こえ冷静になった。そして周囲が静かなのに気づき、恐る恐る周囲を確認したが誰もいない。先ほどみた緑色の奇妙な化け物の姿がなく代わりに小さな緑色の石が落ちていた。それをゆっくり拾って近くで見て見ると綺麗な宝石のような石だった。それが3つ落ちており何となく拾ってポケットに入れる。


「あれなんだったんだ? っていうかここどこ? それにレベルがどうのこうのってなんぞ?」


 そうしてようやく冷静になり何が起きたのかを思い出す。そう公園で起きた壮絶な戦いを、その時に後頭部に受けた傷を、健は思い出したのだ。



「そうか。おれ死んだのか? はぁ…………まぁいいか」



 開き直った。

 そう、死んだ者は仕方ないとあきらめた。だってもうそれは仕方ないからである。



「あれでも生きてるな。そういえば変な夢みたぞ?」


 

 そうして健は思い出す。あの白い夢を。自分が転生したという事実を。



「いや、声が聞こえた所しか覚えてない。その後どうなったんだ?」



 記憶は彼方へ。だがそれも致し方ないことだ。あの公園での壮絶な戦いを考えればこの程度は些事なのである。しかし健はあることに気が付いた。



「だめだ。思い出せない。よしもうあきらめよう。とりあえず俺は生きている。それでいいや。……ただレベルアップって言ってたな」


 レベルアップ。その単語から連想される事柄は限られている。そしてゲーム脳であった健はすぐに次の可能性に気が付いた。そう――。



「ステータスとか見れないかな……って何か出てきたぞ! ……地面に――」


 ステータスといった瞬間、何故か地面に文字が現れた。そこにはこう書かれている。 


===============

 名前:スコ・カタタキ

 称号:超ポジティブメン

 種族:人間

 レベル:2

 筋力:11

 速さ:10

 持久力:11

 精神力:52

 スキル:ダダッコ

===============




「色々突っ込みたいんだけど、なんか名前おかしくね?」


 彼の名前は堅田木健だ。それがステータスで表記されている。しかし何かおかしい。堅田木の読み方はあっている。だが健の読みが何故かスコになっている。意味が分からない。


「すこ? すこって……健やかとかそういう読み? うそだろ?」


 なぜそこだけ訓読みなのかスコは頭を抱えた。それに表記されているステータスの数字もなんか変だ。軒並み10と11。精神力だけ52と書かれている。


「もう名前はこの際いいとして、11ってなんだ? 絶対弱いよね?」


 そう独り言を言いながら地面に書かれたステータスの筋力部分を指でなぞっているとまた不思議な事が起きた。筋力10の横に文字が追加されたのだ。



 筋力:11 木の枝を折る事が出来る。また分厚い筋肉によって筋トレをしても骨に影響はないだろう。



「まじかよッ! すげぇな!」



 スコは歓喜した。以前であれば木の枝を折ろうとすれば骨が折れている。しかも筋トレしても骨折もしないらしい。自分の未来が明るい事を確信した瞬間である。



「他のも見るか」



 速さ:10 犬に追いかけられても100m程度は逃げられる脚力。

 持久力:11 全力で走っても100mくらいは元気に走れる。

 精神力:52 犬に吠えられても動じない鋼の精神力。



「おお……すごい。以前の俺に比べれば大違いじゃないか」



 以前の自分の貧弱さを考えればこのステータスは破格とも思われた。後は自分の努力次第という事だろう。それがスコにとってとてもうれしいものだった。なぜなら以前はその努力すら身体が付いてこれなかったからだ。

 何が起きたのか未だに整理は出来ていないがこの新しい場所で誰からも頼りにして貰えるような強い人間になろう。そうスコは心に刻み旅立つのである。





「――でもどこ行けばいいんだ?」



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る