第6話 相談その3
「俺の場合は、Aさんが心配で・・・俺よりひどい凸凹だから。20代から知ってるけど、何とかしてやりたいなって・・・ずっと思ってて。こういうのが友達って言えるのかわからないけど」
俺はAさんとの関係を説明する。Aさんが好きかと言うと、同胞という感じがしている。同じ傷を持つ間柄。
「で、美須々ちゃんはこれからどうすんの?」
「離婚しようかと思います。子供に父親が必要だっていう考え方もあるけど、あんな変な父親だったら、いない方がましだから・・・」
「あ、そう・・・でも、あいつ、支えてくれる人がいないとダメだから・・・あいつなりに、君のことが好きだと思うんだよ。だから、話しあってみたら?」
「でも、会うのも怖くて・・・気持ち悪いっていうか、、、思い出しただけでパニックになってしまうんです。これから、あんな人の子供をどうやって育てて行っていいかわからなくて・・・」
美須々ちゃんは泣きだした。
「子供はきっとかわいいよ」
俺は奥さんが子供を愛せない・・・って風になったらどうしようと心配だった。
実家が育ててくれるかな。
発達障害は遺伝だと言われている。50〜80%(平均70%)の確率で受け継がれる。特に男児は遺伝しやすい。
美人で将来安泰だったはずだったのに・・・今は身重の彼女。
もう、産むしか選択肢がないなんて。
彼女が軽率だったなんてそんなことはない。
人生、一寸先は闇だ。
「ちょっと鬱になっちゃって・・・」
「そりゃなるよね・・・」
「江田さんに頼っちゃってごめんなさい。彼女いるのに。本当に好きなんです。無理なのわかってるけど・・・」
「気持ちは嬉しいけど・・・」
優柔不断な俺は当たり障りのないことを言ってしまう。
彼女のことが好きだという気がする時もある。
マンションで会った時の巨乳を思い出す。その丸みに触れたい・・・。
俺はエッチな動画を見ながら話す。
「私、子供を愛せるかわからない・・・あんな人の子供だし、顔が似てたらどうしよう」
「生まれたら、きっとかわいいよ」
顔より性格が似る方がよっぽど怖いよ。俺は片手間に思う。
「でも、怖いんです・・・」
気が付いたらAさんからはもう連絡が来なくなっていた。俺が奥さんと親密になったことに腹を立てていたんだろう。俺と奥さんは親密なんじゃない。奥さんが毎晩電話してきて、勝手に喋ってる・・・。
俺は単に人の不幸が好きなだけ。
その後、Aさんはマッチングアプリで複数の女性と交際していたから、被害者の人たちから訴えられたそうだ。それで慰謝料を払わされたらしい。一人当たり数十万で、Aさんにとってはそれほど痛くもない金額だ。その後は、結婚目的じゃない、もっとカジュアルなアプリを利用するようになったらしい・・・。
Aさんは奥さんの美須々さんと離婚して、また独身になった。
今度は養育費を払わされるみたい・・・。美須々さんによると、月10万だとか。彼女は最近また派遣で働いている。それに、俺をいまだに好きだと言う。
でも、俺は彼女には1回しか会っていないんだが。電話では何百時間も話しているけど・・・。
この間、Aさんから俺に連絡あった。
「合コンない?」って。
俺がこんなおっさんになっても、まだ20代の頃のように合コンをやっていると思っているのか・・・。Aさんは馬鹿だ。
「マッチングアプリがあるだろ?」
「でも、出会える女のレベルが低くて」
「君も年を取ってくんだから仕方ないよ・・・」
Aさんは最近ちょっと禿げて来てる。
イケメンにも陰りが見えてきた。
「そろそろ、結婚考えたら?」
俺は提案する。
そしたら、また・・・新しい奥さんがやってきて・・・同じ展開になる。
俺はちょっとそれが楽しみだ。
カサンドラな新妻 連喜 @toushikibu
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