第25話 山核隊の存在理由
(やっぱりか……)
二人が第五隊に来たのは、やはり
支給されている医療品の中には四級程度の治療薬もあるが、全員の視力が失われた場面で、それを正しく素早く使用できたかは分からないのだ。
双子隊を守る手数も増え、万が一の対応もできる。
双子隊は
魔核を回収するのが主な役目?
それだけではないだろう。救助活動に対し、
今回のような他の山核隊からの応援要請にも優先的に参加できるためか?
それに、登頂隊や狩猟隊は、解放や討伐といった結果を求められるが、卓磨の管理下にあるハルナでは、その二隊に肩入れできない。
だから
魔核を得て、他の山核に干渉するために。
そこに、血縁関係者である
救助隊の維持と
だから装備も人員も技能も武具も集中する。
(俺が救助隊に受かったのって……)
それがどんな手段で行われたのか分からないが、それを知る力がある。
それによって
「ちょっと、どういうこと? なんで山核庁の人があんなラフな格好でウチに来るのよ。それにあのバッグって拡張してたよね? なんであの人がそんなの持ってるの? で、コートだの銃だのって、ウチの装備って山核庁から提供されてるってこと?」
走り出した車の中、小声で
「
「やっと謎が解けました。ウチの真の姿って、装備や技能をテストする部隊ってことなんですね」
「やっぱエリート部隊ってことですか……それじゃなんで俺みたいな犯罪者を?」
「
「
「お、俺だって別に、わざと攻撃を受けようとしてるわけじゃないって!」
二人の間に挟まる
今回の
そしてすぐにアカギに入山した。
第五の緊急対応と
何らかの意思が働いているようにも見え、不測の事態が発生しているようにも見える。
アカギに着いて
それだけを考えればいいと思いつつも、それだけでは済まない予感も膨れ上がっていた。
「後席、静かに。情報の伝達と指示を行うぞ」
ハルナレイクの検問所を抜け、隊長が声を出し、
「そもそもアカギから応援要請があって、アカギには明日にでも向かう予定だったが、
「
「
「そこから
「ほぼまっすぐに山核へ行ってるな。個人の意志か、それとも……」
「それとも? 拉致とかですか?」
隊長が可能性に言及する前、
「そうと決まった訳じゃないでしょ? それに拉致の理由は? なんで犯人は山核内に逃げ込むのよ」
「理由は分からないけど、逃げるのは警察とかに介入されないから、とか?」
「山核内は警察より怖い魔獣の巣窟なんだけど?」
「つ、強い犯人かもしれないだろ?」
『ホントよね。何といっても山核の外でも使えるのがすごいよね。これがあれば下界で安全に別の商売ができると思わない?』
それをどこかで誰かに見られ、衝動的に連れ去られた可能性も浮かぶ。
「入山許可証を持たずに魔獣を倒せる人なんてそうそういないでしょ」
「……いや、そうでもない。そういった人物はいないこともないよ」
運転中の
「
「えー、資料なんか持ってきてないのに」
隊長と
「神山事件って隣のT県のですか?」
「ああ、お前らも着実に山の幸を手に入れてるだろ? その上、山核庁から最新式の装備も受けている。言ってしまうがな、ハルナの他の救助隊にもこの装備は与えられていない。ウチだけだ。強大な力を持った人間の顛末は勉強になるぞ」
「神山事件って、山核の発生直後から強い武器をもらった
「俺は多くの人を守った英雄って聞いてるけど」
隊長と
「視点によっていろんな見解があるんだ。だから事実だけを語るから個々で判断してくれ。
「分かりましたよ……」
促された
新人三人にとって知っている情報も、曲解している内容もあったが、この時代に於いて山核に対抗できる力を持つ者がどんな末路を辿ったかという話は、非常に切実に心に響いていた。
「俺たちの持つ力は大きい。それを自覚して行動すればいい。
「解放は、望んじゃいけませんか?」
隊長が第五隊としての方針を語ると、
「
「えっと、山核に対抗すること……」
「山核解放だ。お前が望む思いは、ここに関わっている人間、大なり小なり思っていることだ。四年前の山核の無いあの頃に戻る。もっとも世界の全てがそれで元通りになる訳じゃないがな」
隊長は少しだけ笑って答える。
生活圏の確保、山に登れるということ、魔獣や魔樹に怯えない生活、分断された日本の国土を取り戻す。
多くの人の願いを山核隊は背負っている。
「それに、この程度の装備でなんとかなると思うか? 偶発的な解放はともかく、山核が安定してから解放された山は、公的には存在しないんだ」
隊長は力を持って野心を抱く
もし
管理者とは山核のルールを容認し、そのルールを人々に強要する立場だ。
苦しんでいる人を利用する山核側の存在。
(俺にはそんなことはできない)
だからこそ隊長の言葉が染みる。
『まずは自分、次に手の届く範囲の誰か、余裕があれば範囲を広げる』
だから今は、
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広大と優実を第五に送り込んだ山核庁の男は卓磨だった。隊長はそれを山核庁が指定する新装備のテストと言ったが、開の中では卓磨の私兵という認識が強くなった。ただ、誰の思惑があろうとも、まずは百合香を助けることを決意する。
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