第14話 お泊り訓練
「あたしは別に嫌じゃないよ。救助隊としての仕事らしくていいと思うし」
双子山での戦闘訓練途中、単独で出現した青犬を単独で倒した
「まあ、俺も別に問題はないけど」
「私も……」
「俺は単純に経験不足だから、そこが心配なだけだ」
午前中の隊長の話に、それぞれがなんとなくモヤモヤしたものを抱えていたのは事実だが、それがどうしてかは
「たださ、なんで新人ばかりなんだと思う? ウチはなんとなくこの四人なのかな? とも思ってたけど、全部の隊で新人を出すってどうなんだろ?」
そんな
「これも教育の一環なのかもね」
「教育って?」
「ほら、覚えた事をキチンと説明したり指導できないと、本当に理解出来ているとは言えないって話し。実際に私たちも二人にいろいろと教えることで、理解が足りないこととか、新しい気付きもあるからね」
「なるほど、一人前になるための試練ってことかな」
「でも、それだってまだ先の話だろ? 早くても八月? 夏休みに合わせるって言ってたよな」
「二か月後かぁ、あたしに指導とかできるのかな」
「私たちでもできてるんだから大丈夫だよ」
弱音を吐く
「あのさ、あたしだって狩猟隊で二か月やってきたの。討伐専門で。にも関わらず、二人ともあたしよりはるかにすごい戦闘能力を持ってるんだよ? それを安易に私たちでもできたとか言われても説得力ないし」
「あのな、俺から言わせてもらうと、異動二日目にソロで青犬を倒す
うなだれる
「
いろいろな物事をはっきり言う
「技能と言えば、ギルドハンターの護衛任務は、
「それ、考えてるんだけどさ、みんなどう思う?」
「使うべきかどうかってこと?」
「それもそうだし、そもそもあたし、この技能のこと隊長にも誰にも言ってないのよね」
「あれ? 山核庁の偉い人に特別な力がどうとかって言われたんでしょ?」
「あたしは結局、誰にも言えなかったし、言わずに除隊するつもりだったの。でも山核庁の人にそれっぽいことを言われて、ああ、察しはついているんだろうなって思っただけ」
「無理矢理、聞かれたりしなかったのか?」
「……
彼自身、恐らくは武具持ちであることは皆にばれているにも関わらず、隊長以下、隊のだれからも指摘や質問はない。
「ウチは、プライバシーを守るって言ってたよ」
「それで済むのかなぁ。こうやって四人で訓練してるのも連携強化のためでしょ? ならさ、いざというときのために、お互いのできることちゃんと知っておく必要があると思うんだけど」
「今のところ俺たちの訓練で
「そうだよな。俺なんか隊服のおかげで怪我一つしないけど、普段着だったら何回か死んでると思うもんな」
「人は何回も死なないでしょ。いのち大事に、だよ」
自嘲気味に笑う
◆
「一泊訓練、ですか」
四人での訓練を始めて二週間が過ぎ、連携も親睦も深まりつつある六月の末、新人たちは隊長に特別訓練の指示を受けた。
「そうだ。午後の訓練の延長で夜間の動きは慣れてきただろうけど、山核内で一夜を明かすってのはまだ未経験だろ?」
「えっと、緊急時には下山できるのに、わざわざ山核の中で泊まる必要ってあるんですか?」
「
「まあ、お泊り訓練もどうかなって気がするけどねー。私たちが山核で泊まるハメになったのって過去にもそんなにないし、大抵の場合は無理してでも下山するし」
「でもいい経験になると思うよ。山核内での夜間警戒や睡眠は」
「睡眠……寝られそうもないですね」
「あら、この二週間で四人の信頼関係は構築できてないのかな?
「え? いや、男子がどうこうより、山核内で寝るってのが心配なんですけど……」
「夜間は魔獣も強いのが出たりしますよね」
「なんだ
「それはまあ、そうなんですけど……」
少しだけ苦しそうに答える
山を解放したいというしっかりとした動機を持つ
つまり、彼の言う通り『隊服がなければ何度か死んでいる』そんな危うさを持っているのだが、彼自身がそれを改善できないらしい。
(俺が守らなきゃ)
(私がみんなを守る)
(あたしが守るのか……)
◆
双子山、雄岳と雌岳の分岐路でもある標高1100メートルの場所に立ち、
(よりにもよって、この場所かよ……)
夏至の直後ということもあり、17時という時刻はまだ青空が広がっている。
通り抜ける爽やかな風を浴びながら、
「本格的な登山って、あたし初めてよ」
「この程度の山、登山じゃないぞ」
やれやれと腰を下ろす
「あの時以来だね」
=========
連携を深める四人は、これから始まるギルドハンターの護衛任務に向けてそれぞれの考えを話し合う。そんな時、隊長は山核内での一泊訓練を指示する。指定された野営地は、かつて開と百合香が青い熊と戦った場所だった。
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