第13話 山核特別入山協会
「昨夜はどこに行ってたんだ?」
午前中は自由時間だったため、朝からトレーニングルームで汗を流していた
「どどどどこでもいいだろう」
「動揺し過ぎだって。ひょっとして外にいい人でもいるのか?」
「そそそそんな人いないって」
「まあそうだよな。
ランニングマシーンの上で平静を保てない
「……どうしてそこで
「お前ら、付き合ってるんだろ?」
「付き合ってねーし!」
「ところでここって、恋愛禁止だったりするのか?」
「……知らない。聞いたこともない。なんでだ?」
「あ、いや、
「そんなこと考えもしなかった」
「それに
それに、
「あたしがどうしたって?」
「べべべつに何も言ってないぞ」
「ま、べつにいいけど。陰でこそこそ言われるのは慣れてるし」
「か、陰でこそこそなんて……あ、いや、ごめん」
他でもない
「それに、
「そうなの?」
「
少しだけ夢見心地でそんなことを言う
「二人もトレーニングか?」
「あ、そうそう。隊長に集まるように言われて、呼びに来たの」
真顔に戻った
◆
食堂に全員が集まると、
曰く、常々話題に上っていた“山核特別入山協会”についての話だった。
概要はこうだ。
山核に関わる専門の人員(山核隊)以外に、希望する一般人に山核内での活動を認め、これを統括する組織“山核特別入山協会”(通称、山核ギルド)を山核庁の下部組織として設立する。
山核ギルドは、機能している市区町村の役場の中で、必要な設備や人員を整え、許可された場所を支所として認定し、“一般狩猟者”(通称、ギルドハンター)を募集する。
希望者には適正試験や経歴調査を経て、合格者に“特別入山許可証”(通称、ギルドカード)を交付する。
ギルドハンターは許可された山核に、規定ルールの下で活動を許可され、そこで得たドロップ品は全てギルドハンターの所有物となる。
山核ギルドはドロップ品の売買を請け負い、その取引履歴は山核ギルド間で全ての情報を共有する。
山核ギルドは、ギルドハンターに対し武器や装備の貸与、販売なども担当するが、民間企業や個人の参入を規制するものではない。
「要するに、実にゲームや物語っぽい仕組みってことだ」
「ゲーム、ですか?」
「
「俺たちの世代って、ゲームどころの話じゃなかったですからね」
「そうなの?」
「うちも、両親や叔母がよくやってたみたいですけど、私自身はしたことないですね」
「それじゃあ、小説とかは? 異世界モノ」
「知識としてはありますが……」
だが、
「それで、その仕組みが私たちにどう影響するという話です?」
脱線しつつある会合の主旨を、
「おお、そうだった。要は、この仕組みの是非はともかく、きちんと運用しようとするとまだまだ時間もかかる。支部を作ったり人員を用意したり、希望者の選定だって簡単じゃない。第一、一番の問題はなんだと思う? 不慣れな一般人がろくな装備も持たず山に入るとどうなる? ほい、
「くっ、安易な入山で魔獣にやられる、です」
敢えて振ったのかデリカシーがないのか、隊長の問いに、血を吐くような思いで
「その通り! ただ、ビギナーズラックということで運よく魔獣を倒せたぞ。おお! これは珍しい技能を手に入れてしまった! 逃げよう! だが緊急下山を使ってしまえば没収だ!! さて、
「……隠れて、救助を待ちます……」
ノリノリの隊長のセリフになんとなく状況を察した
「おっと、山核の石板を確認したら、帰還限度時間を過ぎても入山者の名前があるぞ?
「救助隊、出動します!」
「ということだ」
身構えていた
どうせ後先考えずに救助に向かうケースを答えさせられると思っていたのだ。
「シチュエーションは分かりますしー、そうなるだろうことは想定できますけどー、まだまだ先の話でしょ?」
「
「ハルナフジですと、第一隊の管轄ですよね?」
隊長の説明に
「まあ、そうなんだけどな。この仕組みって確実に救助隊の出番が多くなるわけよ。つーか、ギルドハンター一人に救助隊が二名体制で張りつけって言われてるんだ」
「それこそ、危険回避なら狩猟隊が担当したほうがいいんじゃないですか?」
次から次へと開示される隊長の新情報に
「それじゃ訓練にならんだろ? ギルド自体が狩猟隊の真似事をするんだ。救助隊は基本的に何もしない。いざというときに緊急下山させたり、自力下山を手伝うんだとさ。第五までの各隊から四名ずつ出すってことになっている」
隊長の説明に
「ウチからの四名って……」
挙手して問いかける
「今期、他の隊は元々四名ずつ入隊させてたろ? どこも新人くんたちが出てくるそうだ。おお、そう言えばウチの新人も四人になったな!」
隊長の白々しい口調に、新人四人は微妙な顔をしながら視線を絡ませ合う。
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開たちは、隊長から「山核特別入山協会」の話を聞く。その準備段階として十名ほどの希望者に対しハルナフジでテストを行うことになり、そこにハルナ救助隊の各隊から四名ずつ召集されることになり、第五からは案の定、新人四名が担当することになった。
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