第12話 深夜の会合(後)
「使ってるだろ? 隊服」
「へ? 隊服?」
「マジックバッグとか、ブーツとか他にもいろいろあるけどな。神具ってのは山核の外でも効果を発揮する道具の総称だ」
食品や素材、薬品といった消耗品を除き、山核で得た“山の幸”は山核の外では使えない。
「以前、使用権限を付けていると言っていた……」
「そうだ。誰にでも与えられる物じゃない。理由は、分かるだろ?」
山核で得た力を好き勝手に行使することを、以前に
氾濫は理不尽な力。
それによって世界は大きく変化してしまった。
大きく言えば、人類を山核から守りたいと思っているのかもしれない。
ただ、それを聞いても、きっとはぐらかされるだろう。
「そんなに第五隊が好きなんですか?」
だから
それまで冷笑を浮かべていた
「そっか、俺は奴らのことが好きだったのか」
「あら、気付いてなかったの?」
「まあ、そういうことにしておこう。俺はキミらのために、キミらだけが使える神具を創り提供している。で、だ。先ほども言った通り、神具を創るためにはこの程度の魔核ではダメなんだ」
「もちろん。これによって創りだされるモノもたくさんある。それだけでもこの世には本来存在しないものを創りだすことはできる。だが、山核で得られる武具や装備といったモノに匹敵する神具は、それなりの魔核が必要になる。俺が山核を管理しているのは、たまに現れるレアな魔核を手に入れるというのも理由の一つだ」
「……発生させる魔獣の種類とか、設定できるんですよね?」
「もちろん。
「俺はもう残っていませんけど」
「外で武具を使い過ぎたな。まあ、管理するつもりがなければCPなんてその程度にしか使えないんだ。で、そのCPを稼ぐってのは目的というより管理者の責務みたいなものでな、それを使って魔獣を生み出したり、まあいろいろだ。ただ、レアな魔核や褒賞を発生させるってことは管理者にもコントロールできなくてな、ランダムで発生する。そして俺は神具を創る為、それを欲する」
「だから第五に装備を? 救助隊っていうのは隠れ蓑で、魔核専用のハンターをさせてるってことですか? なんでそれを狩猟隊にやらせないんですか?」
「言ったろ? 神具を創るにはレアな魔核が必要だって。あんな大所帯に装備を行き渡らせるほどの魔核が無いんだよ」
魔核を手に入れるには戦う装備が必要だ。その装備を創るには魔核が必要で、定期的に魔核を手に入れる存在が必要で、それは魔獣を狩るだけの力が必要……。
鶏が先か、卵が先か、混乱する
「さて、
「工夫?」
「それが、今日ここに来てもらった本題と関係する」
それは出かける前、
『以前、はぐれを倒した際の魔核、俺に預けないか?』
彼は何をどこまで知っているのか、
そして
『三、四等級では、本気の装備は創れない』と。
これがどのくらいの等級か分からないが、金の熊は、少なくとも双子山で戦った青熊よりは強かった。
価値はともかく、これを預ける対価として武具を何とかしてもらえないか、と考えてここまで来たのだ。
「これは差し上げます。だから俺の武具を、もう一度使えるようにしてください」
「キミは何か勘違いしているみたいだが、そもそも山核で得たものは山核の中で使うものだ。それを下界で具現化させようとするからCPを消費する」
「……ですから、そのCPはもう無いんです」
「山核内なら、実体化させるぐらいのことは魔素で代用できる」
「え?」
「どうせ山核内では試してないんだろ?」
宿舎内の自室でピクリともしなかった武具。
隊員の皆がいる山核内での訓練中は確かに試してはいなかった。
その時、空気が変わった。
薄い膜のようなものが
「試してみろ」
山核内で試してないんだろ、と。
(じゃあ今、この場所は……)
「顕現せよ、丁丁発棘」
それはいつもそこにあったように、
「そういうことだ。実体化だけでもそれなりに使えるだろうさ。それでも長時間は使えないし、ましてや特殊効果は望めない。魔素の量と使い方次第だろうけど、恐らく十分程度で限界がくる。そしてしばらく使えなくなる」
「……使えない?」
「入山許可証の緊急下山と同じ。あれも丸一日のクールタイムってやつがあるだろ」
「なるほど……」
顕現できることが分かっても、このままでは思うように使えない。
それでも、いざというときの切り札になる。それを教えてもらえただけでも、
「一つ聞いてもいいですか? 二か月前、双子山でこれを使った時、CPが少し復活したんです。あれは
「CP譲渡という管理者が持つ権限の一つさ」
「……では、これはあの時のCP代と、今日の情報量ということでお渡しします」
「こちらとしては拍子抜けだが、キミはそれでいいのか?」
「俺にはそれを使う方法がありません。これまでもただ、眺めているだけでしたから。
「世の中の、ため、ね」
「違うんですか?」
「さあな。どんな行動が、どんな結果が、世の中のためになるのか、俺には皆目見当がつかないだけさ」
◆
見送りに出てくれた
「山核の範囲、多少は調整できるのよ。なにせ、力を使うには山核の中じゃないとね」
「……氾濫に、なるから?」
以前に
「
「のぶれす?」
「力を持つ者の義務と責任。そして矜持」
「よく分かりません」
「
おやすみと言って
彼女を守ることを第一に考えてます。他は全部ついでです、と。
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開は救助隊に与えられた装備のいくつかが神具であることを知る。そして、山核内であれば武具が具現化できることも。
それらの情報の対価のつもりで、以前手に入れた金色の魔核を卓磨に託す。
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