事件簿4 神(しん)犯人
警察では思った通り大変な目にあった。
カウントダウンが次々と発生し、それを手当たり次第に解決していくと表彰どころではなくなり、現場にまで連れて行かれる始末。
俺の立場は完全に警察に同行する名探偵となっていた。
結局、丸一日がつぶれ、さらにはまた協力してくれと言われた。
その上報酬が無かったのだ、あえり得ないだろう。金十封くらいあって然るべきだ。
こっちは命を懸けているんだぞ。
次の日、日曜だというのに母親はソワソワしていた。
関わりたくないとは思いつつ、おでこを確認するが何も出てこない。
自室に戻り、ゴロゴロしていると、なにやら焼き菓子の様な匂いがする。
そう言えば今日は、
さては何か企てているな?なんて思いながら自室に迎え入れた。
「
「ああ、そうか。そんなのもあったな、いや、全然決まっていない」
これは“俺が決めない”という事件扱いになるのかと肝を冷やしたがそうはならなかった。
将来、何になりたいかが何も思い浮かばないというのは俺の悩みだ。
決して事件でもなんでもない。
「でも聞いたよ?警察ですごいお手柄上げたんだって?」
どうしてその事を知っている?わざわざ警察に行かないと知る由も無いだろう。
「ああ、事件が溜まりに溜まってたのを次々と解決したからな」
「かっこいいねっ、私も見たかったなぁ。ズバズバって解決して、真実は一つ!とか言う所」
「そんな事、言わねえよ、何処のアニメだよ。だけど探偵かぁ、いいな、進路はそれにするか」
元々推理好きではあったのだが、それで食っていけるとは思っていなかった。
下手の横好きで本業に出来る程、甘くないと今まで思っていたが、神のお陰でその道筋が見えた。だが、死ぬのは勘弁してほしいので迷いはあった。
スマホで軽く調べれば探偵に向いている進学先は専門学校か法学部や心理学部のある大学らしい。第三の目がある俺にそれが必要かどうかは別として、生き残る為には行く方が良いだろう。
「でね、いいモノ買って来たの。じゃーん、帽子とコート!探偵なりきりグッズ!」
「コスプレかよ、って、それ俺にくれるの?」
「そうだよ、誕生日おめでとう!」
「ああ、そうか、今日は誕生日だった──」
(んで、どうしてこのタイミングで制限時間が表示されるんだよ!)
仕方なく第三の目を使うが、出てくるイメージは小さい頃に神社で二人で遊んでいる風景。
何かを約束してるかの様に指切りげんまんしているが静止画で詳しくは分からない。
残り時間は『4:00』
これ以上は言葉で聞き出すしかないぞ。
「子どもの頃の約束………だよな」
ここまでは正解の様だ、だが、これ以上何の事かはわからない。
残り時間『3:00』
これまでの
残り時間『2:00』
時間が減る速度が上がった気がする。
焦る気持ちで思考が纏まらない。
残り時間『1:00』
最後の手だ、これに賭けるしかない!
「
残り時間『0:00』
俺は泣き出しそうな
どうやらゲームオーバーらしい。
そしてほのかに明るい何かが見えたかと思えば、死んだ俺に動揺して泣きじゃくる
約束の事を口走っているがもう遅い。
俺はその事を忘れていたのだ。
(そうだ、そういう約束だったな、懐かしい)
その時、何処からともなく声が聞こえてくる。
『オゥオゥ、まさか本当に死ぬなんて情けネェ、ルールが厳しすぎたか??
仕方ネェちょっとだけルールを変えてやるゼェ、
そうだナァ、五分で解けなかったら一時間、変顔で意識を失うでどうダァ!
ついでに30秒あれば解決できるだろ、次は頑張れヨゥ!
全クゥ、願い事を叶えるのも難しいゼェ』
その言葉を聞き終わると同時に、意識が戻る。
まるで酸欠状態からの帰って来た様に息が乱れている。
状況を確認すると
そうこうしている内に残り時間は『0:25』
時間が戻った今度こそ、約束を果たそう。
そうだ、将来の夢が決まれば俺は言わなけてはならない言葉があった。
「
「うん!」
今度は嬉し涙が零れ落ちた。
とはいえ、本当に結婚できるのは2年後になる。
『なりたい仕事が決まったら結婚しよう』
子供の頃の約束を今でも信じていた
それだけで良しとしよう。
(ん?まてよ?)
「
「決まってるじゃない、『─────────』って」
名は体を表す通り、『
(神様まで呼び出した事はちょっと恐ろしいが、まぁいいか。
結果的には面白い事になりそうだからな)
斯くして五分で解決探偵の物語はここから始まった。
時々、七十分で解決探偵になるのはご愛敬だ。
探偵業に本腰を入れ始めると警察とのコネクションは瞬く間に広がり、多忙で刺激的な日々が続くのだが、それはまた別の話だ。
了
5分で解決探偵は、死と隣り合わせ なのの @nanananonanono
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