事件簿3 帰り道にも事件の匂い

 色々あったが、どうにかこうにかその日をやり過ごした。

 大変な日だったと思い返しながら綿子わたこと一緒に帰る最中、銀行前で不信な男を見かけた。

 嫌な予感しかしない。

 だが、その男のおでこに時間の表示はない。

 胸をなでおろしたが、そこで綿子わたこが銀行に行くと言い出した。


「銀行なんて、明日でいいだろ?どうしても今日じゃなきゃダメなのか?」

「うん、頼まれてた振り込みがあるの」


 仕方なく俺はついて行ったが待つだけで暇な俺はATMコーナーの片隅で、ぼ~っと列を眺めていた。すると機械の操作に悩んでるお婆さんを見つける。

 そんなのは流石に探偵の出番ではない、銀行員の仕事だろうと思いながらスマホでゲームを始めたが、先ほどの不信な男がお婆さんの真後ろに居るのを見つけた。

 何気なく、その男の写真と撮ってしまった。


 これは探偵としての勘だ。

 もとい、カウントダウンの災難が来る前に対処する、それが一流の探偵なのだ。キリッ。

 だが、事件は一向に起ころうとしない。

 気づけばウトウトと居眠りをしてしていたらしい。

 不審な男とお婆さんはいつの間にか居なくなり、綿子わたこにも呆れらた。


「もう~、大変だったんだから~」

「うん?何が──」


 綿子わたこのおでこに制限時間が!


「何があった早く言え!」

「私の横のATM使ってたお婆ちゃんがね、外に出た所でお金取られちゃったんだよ」

「どんなにだ!?」

「私はちらっと見ただけだから、分からないけど、女の人だったよ?確かねぇ~、黒いニット帽を被っててねぇ」


 長々と続く人物像の話、時間は刻々と減ってゆく、気が付けば残り『1:00』となった。

 目をつぶって浮かび上がるのは確かに女性だった、ソイツは不信な男の後ろに居た様だ。

 先ほど撮った写真を確認すると、偶然にもその女が映っていた。それを見せると綿子わたこは「あーコイツだー!」と叫び、ようやくカウントダウンは止まった。


綿子わたこ。その解決の為には、この犯人が何処に行ったか気になるよな?」

「え、うん、そうだね」


 思った通り制限時間が表示された。

 それと同時に第三の目を発動させる。


綿子わたこ、このスマホの写真を銀行員に見せて来い、そしてこの犯人が隣のネカフェに居る事も伝えてくれ」

「すごいよ!どうしてそんな事がわかるの?本物の探偵みたい」

「話しは今度だ、犯人が逃げれないように俺が出口を見張っておくから警察を呼ぶように話してくれ」


 この時点で制限時間は消えていた。

 恐らくは綿子わたこが解決したと思った事でそうなったのだろう。

 それから、警察がネカフェに踏み込み、無事捕らえる事が出来た。

 お婆ちゃんが戻ってくると、お礼をといって高級な菓子折りを渡された。


 そして、土曜に表彰するから警察に出頭せよと言われるたが、俺は戦々恐々の想いだった。

 これはやばい、あそこは事件抱えた奴らの巣窟じゃねえか。

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