事件簿2 死が恐ろしくて学校に行きたくない

 登校を拒否しようとした俺は、母親のおでこに現れた時間制限を見て慌てて家を出た。

 母親にとっては登校拒否自体が事件なのだ。

 こうなると俺は奴隷なのかと聞きたくもなる。

 要するに俺は誰かに何かあったと気づかれない様に振舞わないといけない訳だ。


 内心ではふてくされながら、何事も無い素振りで登校する事にした。

 すると、後から声をかけてくる女子がいた。


端帝はみちゃん、待って~、出るの早いよ~」


 幼馴染の玄京くろいけい綿子わたこが元気に走って来るのを見ながら指でカメラアングルを構える。

 女子が駆け寄って来る姿というのも、中々に眩しくて良いものだと思ってしまう訳だ。


「おはよ、綿子わたこ、寝坊とは珍しいな」

「それがねぇ、昨日、神社に行ったら大雨にあってね、髪留め失くしちゃったのよ」

「ふうん」


 その言葉と同時に、おでこに制限時間が表示された。


(おい!まじかよ、それくらいの事で事件にするな!

 通学はこれだから嫌だったんだよ!

 取り合えず、目を閉じてればいいんだったか?)


 俺は目を閉じてモヤモヤ浮かび上がる物を確認する。

 綿子わたこが俺に何かを渡している。

 これは昨日のシーンで、休憩時間だったかな?


 目を開ければ時間は『3:00』となっていた。

 あまりじっくりと考えている時間はない。


「昨日、俺に渡しただろ?」

「え、そうだっけぇ?確か……、あー、そうそう、ちょっと持ってもらて髪型直してる間に、端帝はみちゃんが友達に呼び出されて、持って行っちゃったんだよ」


 よし、これで解決だ!と思ったのにまだカウントダウンは終らない。


 残り時間は『1:30』

 どうやったら止まるんだよ!


「で、持ってるんでしょ?髪留め」


 そう言われて俺も思い出した。

 確かにあの後、ポケットに。


 ずぼっと、ポケットに手を入れると出てくる髪留め。

 さっと差し出したタイミングでようやく時間は止まった。


 残り『0:05』

 危ない所だった。


 通学路は危険がいっぱいだ。

 間違いなく今日中に死ぬ気がした。

 ちなみに、この時の報酬はジュース一本だった。


 ジュース一本に賭ける命ってなんだよ。

 どうせならもっと大きな事件であってほしいな。

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