第3話

私は今二組の男子と校舎裏に呼び出されていた。中学校に入って何回目だろうかここに来るのは。


「俺と付き合ってください」


「ごめんなさい」


「理由を聞いてもいいかな?」


「今は部活に集中したいの」


「あいつは関係ないの?」


「あいつ?ああ陸のこと。陸は幼馴染だよ。虫よけになってくれてるの」


「あ、ああ、そういうことか。わかったよ」


そう言うと彼は引き下がっていった。諦めてくれたかどうかはわからないけど。

三階の隅の窓から陸と太一が見えた。太一はこちらを見ていて、陸はそっぽを向いている。どうせ俺に関係ないとか言ってそうだな。そう考えるとどこかが軋む音がした。


「みーちゃんどうだった?」


この子は友達の伊中一葉。近くで様子を見ていたようだ。


「断ったわ」


「えー、なんでもったいない。付き合ってみればいいのに」


「いいの。私は中学校では部活に力を入れるの」


「あいつでしょ」


勘のいい友達は嫌いだ。長年一緒にいるからこそわかってしまうのだろうか。


「何のことだか」


「今日も一緒に帰るの?」


「そうだよ。いい虫よけでしょ」


「もう、頑固者」


「ほら、部活行くよ。早くしないと先輩に怒られる」


私はその言葉を無視して部活へと向かった。


「あっ、待ってよみーちゃん」



部活が終わりいつも校門の前で陸を待つ。それが日課になり始めていた。待つのには慣れている。全然苦ではない。


「ごめん。待たせた」


「遅い。さあ帰ろう」


つい言ってしまう言葉。本当に素直じゃない自分が嫌になる時がある。いつも通りの帰り道のはずなのに何か違和感がある。陸から話題を振らせないように必死で話題をふる。


「今日も部活大変だったよ。文化部なのに外周させられたの。体力づくりだって」


「そうなんだ。大変だな」


「野球部はどう?」


「うーん。そこそこ。一年だからか雑用が多い」


「どこも一緒か」


陸は心ここにあらずという様子だった。それでも私はその後も主導権を渡さないようにあがいた。いつもは沈黙が続いても平気なのにこの時も口が勝手に動いた。でも、家に着いた頃、昨日のように陸は意を決したように言葉を発した。


「あのさ、やっぱりあの約束やめよう。お互い大変だろ」


「またその話?絶対嫌だからね」


そう言って家の中へと入っていく。私が欲しい言葉はそれじゃない。陸はまたあの時と同じ思いにさせる気なの?小学校の頃に言われた言葉。その言葉は深く心のなかに刻み込まれている。


「一緒に学校にいかない。学校で話かけるな。帰りも一緒に帰らない」


「絶対嫌」と言葉を発したのと同時に涙が出てきた。私は、陸が学校でからかわれているのを知っていた。でも、そんなの無視すればいいのにと思った。でも、その言葉を発した陸の何とも言えない顔を見ていたら「登下校だけは一緒にして」と言葉にしていた。陸もそれを了承して私たちの約束が出来上がった。


その時はこの約束がどんなものになるか私も陸も思っていなかったと思う。でも、私は中学校に入る前に気付いていた。そして自分の気持ちにも。それでも、素直に気持ちを伝えられずに中学生になってしまったのだ。それがどんなに歪な関係になるとわかっていたのに。もうここまで来たら、意地でも続けてやろうと思った。私の気持ちを誰にも言えなくても。私と陸の関係を聞かれたらこういってやる、「幼馴染だよ」と。だって陸も入学式の日そうクラスの男子に言っていた。おあいこだ。


陸が言葉を変えない限りこう言ってやる「絶対嫌」と。周りからどう思われていたって関係ない。私と陸のなかでは、登下校を一緒にしているだけの仲のいい幼馴染なのだから

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約束の呪い @EI-aki-

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