第2話
クラスに入ると、美玖は同じ小学校の顔馴染みの方に向かった。俺もクラスに入るなり声をかけられた。
「おい、陸。朝からおあついね」
「からかうのはやめてくれ。太一」
クラスに入って最初に声をかけてきたのは小学校からの友達の立花太一だった
「悪い悪い。でも、あれはまずいな」
「視線が痛い。どうにかしてくれ」
「まあ、あの美女に名指しされた男だからな。注目をされるだろ」
そう美玖は美人なのだ。美玖の周りには、いつの間にか人だかりが出来ていた。他のクラスから見に来たものや同じクラスで声をかけあぐねている者。それに比べ俺はすべてにおいて普通。そりゃ、不思議がるだろう
「まあ、小学校みたくはいかなくなるんじゃないか」
「はあ」
そして俺の周りにも主に男の人だかりが出来始めた。大体の奴の目的は俺ではなく美玖の方だろうがな。
「あの子とどんな関係?」
「幼馴染だよ」
「じゃあ、紹介してくれよ」
そんな定型文の様な会話でホームルームまでの時間が流れた
無事入学式も終わり帰り支度をしていると案の定声をかけられる
「帰ろう、陸」
「お、おう」
断れるわけもなくいつも通り一緒に帰ることになる。仲のいい女子もいるだろうになぜ俺なのだろうかといつも疑問に思っていた。ただ、それを声に出して言うことは出来なかった
「陸は部活何にするか、決まってるの?」
「俺?俺は野球部かな」
「野球部か。昔から野球好きだったもんね。私はね、吹奏楽部に入ろうかなって思ってる」
意外だった。美玖なら文化部ではなく運動部に入るものだと思っていたから。美玖は昔から体を動かすのが好きだと思っていたから
「そうなんだ」
それしか言葉が出てこなかった
「サッカー部に入るんだったらさ、ちゃんと公式試合勝ち進んでよね」
「そりゃ頑張るけどさ、何でそんなこと?」
「そんなことどうだっていいじゃん。じゃ、また明日ね」
「また、明日」
中学校の生活も慣れ、お互いの部活が始まり俺と美玖の生活のリズムが変わっていった。それでも美玖は毎日の日課を止めようとしない
「そろそろあの約束やめてもいいんじゃないか」
ある帰り道無意識に俺はそう告げた
「絶対嫌」
「お前な、俺朝練とかあるし、放課後も時間合わない事多くなってる。美玖も大変そうだから言ってるんだよ」
「私は別に大変じゃない。私は絶対に嫌だからね」
そう言うと美玖は家へと入っていった。次の朝は何事もなかったかのように起こしにきた
「おはよう。ほら朝練遅れるよ」
「おはよう」
その日の学校で太一と一緒にいる時、ある場面を見てしまった。美玖が二組の男子に告白されているところを。
「おい、あれ。いいのかよ」
「言いも何も俺には関係ない」
「はあ、関係ないね。そんな風には見えないけど」
「何が言いたいんだよ」
「別に」
「そういえばさ、何で陸と美玖って学校で話さなくなったんだっけ?」
「お前らのせいだよ」
無意識にその言葉が出ていた
「へ?」
運よく太一には聞こえていなかったようだ。
「あ、いや、なんでだったかな」
俺は嘘をついた。いつからだがははっきり覚えていないが美玖と学校で話さなくなったのは、正確には覚えていないが理由ははっきり覚えている。からかわれるのが嫌だったからだ。
「お前ら仲いいな。付き合ってるのか」「女子と遊んでんのかよ。」とか
それが嫌で美玖を遠ざけようとした。その時俺はただ単に美玖といるのが楽しくて一緒にいただけなのに。だから、美玖にこう告げたのだ。
「一緒に学校にいかない。学校で話かけるな。帰りも一緒に帰らない」
そうしたら美玖は、昨日の様に「絶対嫌」と泣きながら断ってきた。俺はどうすることもできなく沈黙が流れた。少しして美玖が「登下校だけは一緒にして」と提案してきた。俺は了承せざるを得なかった。これが俺と美玖の約束。それが今でも続いている。
その約束が今俺を苦しめている。約束が呪いへと変わったのだ。小学校の頃ならば、家が近いから一緒に登下校しているという理由もつけられた。でも、中学校からは違う。その理由は意味をなさなくなっているのだ。今の俺と美玖の関係は周りからしたら歪な関係に見えているだろう。その関係を変えなければならないことはわかっている。わかってはいるが行動に移せない。今の関係が壊れるのが怖いというのもあるが、一番は自分の気持ちに向き合うのが怖いのだ。今は俺の気持ちは誰にも言えない。でもいつかは言わなければ、いや言いたい。直接面と向かって。どんな結末を迎えようとも。
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