約束の呪い

第1話


窓から薄明りが差し込む頃、いつも聞こえてくる歓声に似た声が聞こえてくる。


「おはよう‼陸」


窓越しに挨拶してきたのは幼馴染の碧井美玖。今日は中学校入学の日だからなのか声が活き活きとしているのだろう。


「おはよう」


「まだ、ベッドのなか?私なんかもう制服着ちゃった。陸も早く準備してよね。学校遅れちゃうよ」


それだけ言うと、美玖は窓を閉めた。階段を降りる音が聞こえてくる。


「はあ~、ねむ、だるいな~」


ベッドから起き上がり朝の仕度をし始める。これは小学校の頃から続く毎日の日課だ。真新しい身の丈に合っていない制服に袖を通し、リビングに向かう。


「おはよう。美玖ちゃんのおかげであんたを起こす手間が省けて楽だわ。あんたも美玖ちゃんに感謝しなさいよ」


リビングでは、お母さんが朝ごはんの用意、お父さんは新聞を読んでいた。


「へいへい」


そう言いながら、俺は自分の席へとついた。


「もう何よ、その返事。中学生になったんだからもう少しシャキっとしてよね。シャキっと。お父さんからもなんか言ってやってくださいよ」


「ん~。まあいいんじゃないか。これからだよ、これから」


「もう、お父さんは陸に甘いんだから。朝ごはんの準備できましたから新聞閉まってくださいね」


そう言われるとお父さんは新聞を片付け始めた。


「いただきます」


日常の風景。ただ、堅苦しい雰囲気がした。新しい生活が始まるからだろうか。学校へ向かう仕度をすべて終え玄関を出る。


「行ってきます」


「あ、ちょっとまって。ネクタイ曲がってるわよ」


お母さんに止められ、ネクタイを直される。なんだか照れくさい。そして、肩をポンっと叩かれる


「ほら、いってらっしゃい」


玄関を開けるとそこには、いつも通り美玖が待っていた


「遅い」


「お前が早いんだよ」


美玖は、俺の前でくるっと回って、満面の笑みで問うてきた


「それより、どう制服。似合う?」


言葉に詰まった。俺は制服よりも美玖の笑顔に目がいってしまっていたからだ。


「いいんじゃない」


すぐに制服の方に目を移すが何と答えていいのかわからず、当たり障りない言葉を返してしまった


「なにそれ、まあいいや。それより学校遅れちゃう。早くいこ‼」


元気いっぱいの美玖に引っ張られるように学校へと足を進めた。登校中会話という会話はあまりない。ただ一緒に向かっているだけなのに心が晴れやかな気持ちになっている。ただ、周りの目が気になってそれどころではない自分もいる。美玖はそれをものともせずに笑顔で歩いている。そんなに中学生になることが嬉しいのだろうか


俺たちが通う桜第一中学校についた。すると、美玖は一目散にある場所に走って行った。


「おい、どこ行くんだよ」


俺は急いで美玖を追いかけた。美玖は人込みのなかに飛び込みある掲示板を確認しに行っていたのだ。そして大声でこういった


「陸、同じ一組だよ」と



俺の通う中学校は大体が同じ小学校上がりの者もいるが、違う小学校の者もいる。そのため、周りの視線が痛い。同じ小学校の者は、いつものことだ流しているが、他の小学校の者は違う。様々な感情が込められた視線を一身に受ける。当の声を発した人物はその視線たちにものともせず、こちらに満面の笑みを向けてくる。俺も笑顔を返すがうまく笑えているだろうか。


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