第11話 対抗策
どうしたものか……。
昼休み後の業務にて、俺は仕事が全く手についていなかった。
鈴峰さんから偽彼氏役を引き受けたのはいいとしても、しつこい男を引き剥がす手立てがない。ましてや相手が営業部部長の葛間ときた。
––––やっぱり引き受けない方がよかったか……?
鈴峰さんの前では男前っぽいことを口にしたが、本音を言うと面倒臭いことにはあまり関わりたくない。今回、相手が葛間ということもあって何かしらの弱みだったり、情報を引き出せることができるかもしれないという下心の結果がこれなのだが……
「せ、先輩! 頼まれていた仕事できましたっ!」
「ん? ああ、今確認する」
いつものごとく南が資料を手にして、やってきた。
どうせこいつのことだ。毎度のようにどこかしらミスがあるに決ま––––
「ってない?! え……お前、急にどうした!?」
資料をざっと確認したのだが、今回はミスどころか完璧だった。
たまたまの偶然か……?
「えーっと、修正箇所がないのなら私戻りますね!」
「え、あ……って、行っちゃったよ……」
南はピューっと逃げるように自分のデスクへと戻って行った。
昨晩の出来事があってから南はどこか俺を避けている節がある。
酒癖が悪い奴らであれば、南以上の黒歴史を持っているからあまり気にしなくてもいいと思うのだが、普段より調子が少し違う今の現状がもしも完璧な仕事ぶりと関係しているのであれば、しばらくはこのままの方が俺としては大変助かる。
さて、話は戻り、鈴峰さんに付き纏う葛間をどう対象するべきか。
鈴峰さんは偽彼氏がいれば、葛間も諦めてくれるかもしれないと思っているようだが、あいつはそんなちょろい奴ではないことくらい俺が一番知っている。
そもそも葛間には妻子がいたはずだ。なのに平然と愛人を作るくらいだから俺がいたところでそう簡単には諦めてくれないだろう。
なら、葛間が恐れているものを利用するという手はどうだろうか。あいつが一番に恐れているものは自分より立場が上の権力だろう。
いつも社長や副社長、取締役といった上層部にへこへこしていたくらいだからあそこを狙うか……?
いや、でも俺の立場では面会することすら叶わない。お荷物部署行きになった社員は要は会社のゴミみたいなものだ。会えたとしてもまともに聞き入れてくれるはずはない。
一体どうすれば……
「ん?」
ふと、スマホの通知音が鳴り、画面を確認すると鈴峰さんからのラインだった。
内容としては今日のお礼と後日、どこかへ出掛けないかというお誘いだった。
俺は適当な返事を送ると、深いため息をつく。
これに関しては別に時間制限やノルマといったものはない。ゆっくり考えながら対策を打っていく方がいいだろう。
大体、まだ鈴峯さんに葛間が言い寄っているところを一度も見かけたことがないからな……。
【あとがき】
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なんか手抜きになっちゃったかも……もうちょっと書きたかった。
以前はエリートだった俺が何者かにハメられ、社内ニートになった。新卒の指導係になったのだが、後輩ちゃんがポンコツすぎて辛い……。 黒猫(ながしょー) @nagashou717
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