第2話
白い受け皿の端に置かれ、絶対に食べてもらえないことに気づく。きれいだった体にクリームやらチョコやらがくっついていて不快だ。気持ち悪い。ほかのトッピングやアイスなどは透明の容器の中にいる。それらは見上げているうちに、細長いスプーンによってどんどん減っていく。羨ましさと、悔しさが混ざる感覚がする。食べてもらいたかったな。なんでなんだろ......
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ある晴れやかな5月の中旬。広々とした畑には、一面にみどりが広がる。私はこの中の1つだ。今日は収穫の日らしい。こんないい天気の日に収穫されて、幸せ者だなぁ。収穫後、大きなかごにまとめられる。今から見た目や大きさによって選別されて、どう使われるか決まるのだ。周りを見渡してみる。どうやら私はほかの子よりも大きくて元気そうだ。これがどう影響するかなんて知らないが、元気なことはいいのではないか。そんな話をどっかで聞いたことがある。思った通り、大きくてきれいな若緑の葉ばかりが集められるところに入れられる。ふとかごの外を見てみるとほかの子たちはもう袋に詰められて別の工場に運ばれようとしていた。私はどこに行くんだろう。考えただけでわくわくが止まらなかった。
その後、さらなる選別が行われた。色や見た目でさらに分けられた。運ばれる途中で少しでも傷がついたものは外された。初めてそれを目撃してから、みんなビクビクしていた。今度は自分の番かもしれない。そう考えたらひと時も気を緩められなかった。
選別を無事くぐり抜け、やっと出荷の日を迎える。ようやくだ。ようやくこの地獄から抜けられる。袋詰めされ、大きな段ボールに入れられて運ばれた。トラックの中は真っ暗だった。何も見えない状態のまま、第2の旅が始まった。
それから何時間経ったのだろう。やっとトラックが停車した。もうわかんない。もしかしたら何年もたってるかもしれないし、数分の出来事だったのかもしれない。でもとにかく到着したのだ。段ボールの手持ち部分から外の景色が見える。でっかいホテルの様だ。そして、中へと運ばれる。中では、様々な食材が並んでいた。その一角に置かれてしばらくはそこで過ごした。この中にいるうちに何がどう使われるのか分かってきた。どうやら、肉や魚の味を引き立たせるのに使われるらしい。私は、この一角から出る日を楽しみに待ち続けた......
数日後、外に出る日が訪れた。ボウルに入れられ、運ばれる。ちょうど刻まれた子が魚の切り身に乗せられていた。あんな風になるのかなとか考えながら持ってかれる。そしてついにボウルから出される。その時違和感を感じた。ほかの子はひとかたまりで取り出されていたのに私だけ1人だったのだ。たどり着いたのは高い場所だった。そう、パフェのてっぺんだ。そのまま客のほうへと運ばれていく。なんの役割かは知らないが食べてもらえるはずだ。そう思っていた。
テーブルにたどり着いた。客は嬉々とした表情でパフェを見てスプーンをとる。しかし、私を見つけた途端スプーンを置き出した。そして、私をつかみ下の受け皿に置いた。邪魔者が消えたという顔が見えた。パフェはどんどんなくなっていった。私は最後まで残っていた。
数十分前にいたところに戻ってきた。私はどうなるのだろう。怖くて仕方がなかった。洗い場に皿ごと持っていかれ、残飯が集まるゴミ箱に運ばれた。中に入れられ、ふたが閉じられる瞬間まで、なぜ捨てられたのか理解できなかった。
これが、私の見た最期の光だった。
いらないもの あいくま @yuuki_zekken
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