2章 青春はいじめです!!
第12話
拝啓
窓際の林檎と桜の木がすくすくと伸びている今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。
名前も知らないあなた様には、私の現状からお伝えしなくてはなりませんね。
私は今、制服に袖を通しています。二度と着てやるものかと思っていた私の転校先、船橋三栄高校のブレザーです。着心地がいいせいで逆に吐きそうです。
きっかけは、一通の手紙でした。
おつかいから帰ってきた私は、リンゴを外に待機させ、悠々と帰宅しました。時間は遅くなりましたが、目的は達成されたのです。母から労いの言葉があると期待するのも、不思議なことではないでしょう。
しかし待っていたのは、仁王立ち激おこぷんぷん丸の母でした。
「なにが言いたいのか、分かるわね」
母は言いました。
「分かりません」
私は言いました。
すっとぼけでもなく素で話す私に、母は失望した様子でした。おばさん臭いため息と一緒に、簡易書留で送られた郵便が差し出されます。
そこには、こう書かれていました。
「あんたこれ以上休んだら留年するで」
すいません、ショックだったので大部分を割愛しましたが、大体このような内容です。
「学校に行きなさい」
母は言いました。
「嫌だ」
私は言いました。
そこから先はご存じの通り、母が論破して私が黙る、いつもの流れです。ただ一つ違うのは、私がその場凌ぎで頷かない部分でした。
一向に首を縦に振らない私に、母は怒りの熱を増していきました。そして、とんでもないことを宣いやがりました。
「学級委員長の久留里ちゃんに説得してもらったのに、どうしてそう意固地なの」
なんと、母が私の居場所を久留里に教えていたのです。どうりで示し合わせたようなタイミングで現れると思いました。
久留里が学級委員長であるという情報は、この際どうでもよいでしょう。
私は激昂しました。身振り手振りを使って、全身で久留里の残虐性と被った被害を主張しました。
その説明を妄想だと片付けられて、私は更に狂乱しました。他人と自分の娘を比較して、久留里の方が信頼できると判断されたのですから、大人しくしてなどいられません。
ここから先は何を言ったのか覚えていません。とりあえず、待ちきれなくなったリンゴが入って来て途轍もない混沌が生み出されたのだけは覚えています。
ああ、話が散らかってしまいましたね。つまり私がこの手紙で記したいのは、こうして母の監視の元制服に着替えさせられている、現状への不満です。
最後に手紙を読んでいる皆さんが私よりも幸福であることを願って、平凡な一日の挨拶とさせて頂きます。
敬具
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