罪状の社
矢代
第1の罪 序長
緑豊かな森はまるで絵の具をかけられたかのように一斉に赤へと染まっていく。
ひとつの間違いのない作りの建物は段々とその形を崩していく。
いつか何にも終わりは来る、と言う言葉はこの状態を正に表しているのではないだろうか。
これがたった数人での出来事だというのだから末恐ろしい。
裏切り、不信を繰り返していくあまりになってしまったのだから誰もなにも言えない。
いや、死人に口無しというべきだろうか。もはや炎の中で生き残っている者は誰もいない。異常なその景色の中に異常な物がその場に立っているだけ。
貼り付けたような笑いをし、動かない何かを踏み歩き''それ''はまた次の場所へと足を進めた。
また次の犠牲者を出すために。
___
それは突然とやってきた。地球を揺るがす大事件__私の家出だ。
毎日勉強しなさいと口うるさい母に仕事だから遅くなると言いながらズボンには金髪が張り付いている父。
とうとうどちらかの悪事がバレたのかなんなのか今日の喧嘩はヒートアップし、とうとう家の壁に傷が出来てしまった。
これはダメだ。ここにいると私まで巻き込まれる。そう直感した。
なけなしのお金をカバンに詰め込み携帯はもたずがむしゃらに走ってみた。
お腹は不思議と空かない。ただ、寒くて凍え死にそうだ。
ご飯は問題はあまりなかった。スーパーの安売りになっていたおにぎりを3つ買い、それを一日に一口ずつ食べればいいと思っていた。
ただ問題なのは寝る場所だ。夜だからまともに空いてる店はない。味方するのはただ1件ポツンとあるコンビニ。
だからといって私のような年齢が夜中にコンビニに出入りしたら不自然だ。
田舎だからか街灯はほぼ無く月の光をたよりに重い足を進めていく。
「慣れないするんじゃなかった…帰ろう」
誰に言ったのかも分からない言葉を放ち家路を辿る。
家に戻ってしまうんだ、と思う度に足取りは重くなっていく。
ふと視線を横に向けると見慣れない柵で囲まれた土地があった。柵には古びた看板がたてられていて立ち入り禁止と強く書かれている。ただ、その柵には子供ならギリギリ入れそうな穴が開いており、不思議とその雰囲気に惹かれた私はその柵の中に入ってしまった。
ただの森みたいなとこか…と思ったが想像以上に広い。木々がかなりの密度で生え、空は木の葉で隠れている。葉が一定の感覚で落ち、まるで管理されたような場所にも感じる。
少し怖いなと不覚にも思ってしまった私は出口へと向かう。息が切れ始めた頃私はその異変に気づき始めた。なぜだ、なぜ出口かないんだ、と。
もしかして現実離れしたようなことが起こったんじゃないのか__
それが間違いではないことはすぐにわかった。柵に囲まれているはずだから私が歩いた方向と逆に歩けばいいじゃないかと。外から見た時はそこまで幅は広く見えなかった。
行きたかった。ただ、そちらにいくほど木の密度が狭くなり私をまるで閉じ込めるような怖さを出していた。
仕方がなく出口とは反対に進んで行った。自然と涙が零れてきた。
「…私はなんて事をしたんだ。ごめんなさい」
「お姉さん、大丈夫?」
急にかけられた声はまるで少年のような子供の声だった。
栗色の髪…?赤い目…?
日本では珍しい容姿なのに服装は和服という不思議な様子を醸し出している。
まるで人形のような整った顔をした可愛らしい少年は無邪気にその場所でただひたすら笑顔だった。
「ええと、きみは…」
少年が現れたことにより怖さは少年への違和感へと移り変わった。
なぜここにいるんだろうか。
「ぼくは、ゆうげつって呼ばれてるよ!お姉さんは?」
「私は零だよ。優月君はどこからきたの?ここにいて大丈夫なの?」
「そのへんから!零さんこそどこから来たの?」
「入口から来たんだけれど…」
どう説明すれば良いだろうか。あからさまなファンタジーのような話をしても信じて貰えないだろうし。
「迷子になったの?」
「そう、そうなの。広くて迷っちゃって」
「へえ!ならこっちおいでよ」
「ええ!?うん。」
着いてくのは少し心配だがここを出るにはこの少年を頼る他ない。
幼い力とは思えない握力で自分の腕を引っ張られるまま、少年に着いていくことにした。
しばらく時間が経つと、薄暗かった森は段々と明るくなりそこには__
「鳥居…?」
たしかにそこには鳥居があった。
赤々しく不気味な雰囲気を漂わせているものが。
「もうちょっと進んだらつくからねー」
やっと外に出られるのか、と思い不覚にもほっとしてしまった。
だが、その先にあったのは出口ではなかった。
「ぼく、ここに住んでるんだよね」
私はへなへなと地に足をつけてしまった。目の前にあるのは少し古くなった和風の家。真ん中には昔ながらの戸が存在感を出しながら存在している。
戸から鳥居までの道には綺麗な石畳が敷かれており少年が歩く度にコツンコツンと音がする。
周りには青々と茂った芝生があり、なんとも言えない幻想的な雰囲気がある。
ああ、私はもう戻れないんだ。
そう思う他に選択肢は無かった。
罪状の社 矢代 @YashiroMori
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