第6話

「ようは、このドアが開けばいいんだろ。」

「あ、はい。」

一樹さん。

異様な気配を感じますが、何を考えているのですか?

嫌な予感がして逃げようとした私を一樹さんが追い詰める。

「ゆうり、天の岩戸って知ってるか?」

天の岩戸?

たしか、古事記に出てくるお話ですよね。

岩戸に閉じ籠ってしまった天照大神を楽しい躍りによって出てこさせるっていう。

「こっちで楽しいことをしてれば、あいつらも勝手に出てくると思わない。」

「楽しい事というのは、躍りでしょうか。」

「ふふ。」と一樹さんは笑う。

「違うよ。もっと楽しいこと。きっと、あいつらも黙っていられなくなるよ。」

一樹さんの声が耳にかかり、ゾワッと全身の毛が逆立つ。

「嫌です!私は、楽しくないです!」

「俺は楽しいけどな。すごく。」

「誰かきたら、どうするんですか?」

「誰かきた方がドキドキする?」

ヒィッ。

肩に頭を載せないでください!

「駄目です!ほんとに、駄目です…んぅっ。」

一樹さんの手があばら骨の周辺に触れ、私は小さく悲鳴をあげる。

「ゆうりって、よく見ると可愛いよな。」

「ちょっ、一樹さん。こんな時に、何言ってるんですか?」

「こんなときか…。じゃあ、どんなときならいいの?」

「どんなときって……。」

あわわあわわわわ。

パニックで頭が真っ白です。

「ゆうりから、キスしてくれたらやめるけど。」

キ…キス!?

おぇぇぇ~。無理です~。吐きます。

でもこれ以上、近寄られても困るし…。

「「「そこまで!」」」

かたく閉ざされた天の岩戸が開きました。

「ゆうりちゃん。大丈夫?」

「ゆうりさん。怪我はありませか?」

「ゆうゆう。ちょっと無様で可愛い。」

大丈夫です。

怪我はないです。

な、なんですと!?




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神楽家のメイドになりまして。 瑞稀つむぎ @tumugi_00

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