第11話_東京ユグドラシル10

いや、まてよ。本当に出ることができないのか?

「東京の外がどうなっているか、君は知らないの?」

「昔は道があって、電車も走ってたって聞いたことがあるよ」

「今は?」

「わからないの」

分からない?どういうことだ?見えないってことか?消滅?

「うーん、そこにたどり着いて、帰還できた人がいないというのが正確なのかな」

つまりそこを目指したものは誰一人として戻らなかった。

「危ないから行くなって言われてるし、もう行こうとする人はほとんどいない」

そんなことってあるのか?ここは東京だろ?他県に行くのが命がけだなんて。

「私にはここしかないけど、あなたはもしかすると外から来たのかもしれない。だから、帰れるといいね。あなたの場所に」

彼女はへへっと笑った。

「そうだ、何か聞きたいことある?コロニーにつくまでの間教えてあげるよ。もしかしたら何か思い出すかもしれないし」

「ありがとう。君は優しいね」

「でしょー?」

何故か自信満々に彼女は言った。

「じゃあまず名前が知りたいかな」

「あ、言ってなかったっけ。私はノヤ。ディグアウターやってるよ」

ノヤって言うのか。ちょっと変わってる名前だな。ここではこういう名前がスタンダードなのかもしれない。

「ディグアウターってなに?」

「うーん、地下道や地下路線を歩き回って使える物を探したりしてる。地上の建物にも時々潜るよ。さっきはちょうど良い建物無いかなって調べてたの」

トレジャーハンターに近い感じなのかな。

「地上はどうしてああなってしまったの?」

「いろんな説があるよ。でも、お父さんは「真実を知る世代の人達はみんないなくなった」って言ってた」

真実を知る世代?いなくなった?

てことは誰もわからない?

うん、とりあえず考えるのやめよう。考えてもわからん。

「じゃあ、あのでっかい木は?」

「でっかい木?東京ユグドラシルのこと?」

「多分それ。そんな名前なんだ、あれ」

「あれ、もともとは木じゃないんだよ。確か電波塔だったかな?」

「電波塔ってことは人工物ってこと?」

「そう、元々は大きなタワーだったんだけどその外壁に植物が生えてああなったって聞いたよ」

「へぇ」

東京で電波塔といえば東京スカイツリーが有名だが、まさかあの巨木が元々はスカイツリーだった?

「でもあそこはドラゴンの住処になってるから。時々探索に行くディグアウターもいるけど、近づけずに戻ってくるの。何かありそうなんだけどね」

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