第9話_東京ユグドラシル8
気になることは多々あるが、それを彼女に聞いても不審がられるだけだし、大体、彼女も知らない可能性もある。
彼女の言う通りコロニーと呼ばれている場所まで行けば、何かがわかるかもしれない。
自動改札機まで来た。僕が最初に見た駅とはうって変わって清潔で明るい駅だ。自動改札機も現役で廃墟感は無い。多少古びてはいるが、ごく普通の駅だ。
彼女は改札機をひょいと飛び越えた。
「ほら、早くおいでよ」
良いのかな?と思ったが、見渡しても駅員はいないようだし、手持ちもない。
僕も真似して飛び越えようとしたら、微妙に高さが足りずつんのめってしまった。
「ふふっ、どんくさー」
くそー日頃の運動不足のツケがここで来たか。
改札機を越えるとすぐにホームがあった。上り線、下り線の線路がありその先に反対側のホームが見えている。
LEDライトが明るく照らしているが、やはりホームに人影はない。
「コロニーとやらはどこから向かうんですか?」
「どこって、線路を歩いていくんだよ。他に道なんてないじゃん」
さも当たり前のように言われた。
まあ、確かに電車に乗るわけではないのであれば、ここを進むほかない。むしろ、地上の状況を見た今では、あれほど不気味に見えていた地下鉄トンネルにむしろ安心感がある。電車が通らないのであればただのトンネルだ。
彼女はホームから身軽に飛び降りてすたすたと線路上を歩いていく。
僕も彼女のあとを追って線路上に降りた。今まで地下鉄の線路なんてそれほど良く見た記憶はないが、こうやってみると、色々な配管や配線が通っていて、ところどころに信号機と思われるものや、よくわからない機械等が設置されている。駅から少し歩くと、さすがに薄暗くはなるが、一定間隔で照明が設置されている為思いのほか歩きやすい。ところどころに人が通るための扉や枝分かれした道があるが、これは線路を整備するためのものだろうか。電車に乗っている時は全て一瞬で通り過ぎてしまうから気が付いていなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます