第8話_東京ユグドラシル7
そこには僕と同い年ぐらいの少女が立っていた。
どうやら僕を助けてくれたのは彼女のようだ。すぐにでも感謝の言葉を述べるべきなのだが、すぐ真後ろでドラゴンの頭が少女を食いちぎろうと暴れているのが大変気になる。
「あれ、聞こえてる?耳やられちゃった?」
「あ、はい聞こえてます」
「それはなにより。でも外歩くならもうちょっと装備整えないと危ないよ。どこのコロニーから来たの?」
「コロニー?」
「そう、アキバじゃないよね。君、見たことないし」
僕はありのまま全て話した。
「ふーん?なるほど?」
なるほどとは言っているが、全く理解できて無さそうだ。僕もよくわかってないので、仕方ないのだが。
「うーん、とりあえず私たちのコロニーまで行こうか。ここで立ち話もなんだし」
そう言って彼女が壁際のパネルを操作すると、下から隔壁がせり上がり、地下鉄の入り口を完全に封鎖した。壁の向こうからは微かに竜が暴れている音がする。
地下鉄の階段部分には浸水対策のバリケードがあるものや、終電以降に地下を閉鎖するためのシャッターがついている場合はあるが、こんなしっかりしたものは初めて見た気がする。外側から開けられるのだろうか。
「この扉凄いね」
「え、こんなのどこにでもあるでしょ?」
どこにでもあるかはなんとも言えなかったので、僕はあいまいに濁した。
それから僕たちは階段を下り、地下道にたどり着いた。この道を真っ直ぐ行けば自動改札があり、地下鉄のホームに繋がるはずだ。
「コロニーにいくっていってたよね。電車に乗るの?」
思わずタメ口で聞いてしまったが、まあ、年齢的には同じぐらいだし、敬語というのも堅いので、しばらくこれでいこう。
「電車は今日は走らないよ。大丈夫、そんなに遠くないし安全だから」
今日はということは、走る日もあるのか。ますますよくわからないな。見た限り、地下道は蛍光灯が点灯していて、清潔で安全な感じがする。ここだけ見れば、ごく普通だ。
しかし、一歩地上に出ればドラゴンが飛び回り廃墟だらけ。
電車が走るためにはそれなりの電力が必要なはずだ。電力はどこから供給されているのだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます