第7話_東京ユグドラシル6
辺りを見渡すとコンビニの廃墟を発見した。自動ドアは開いたままになっている。
僕は試しに中に入ってみることにした。
けして広いとは言えない店内。よくあるコンビニって感じだが、棚に商品は一切なかった。昔、僕の住んでいた町で大地震が起きた事があった。その時買い占め騒動もあったが、その時でさえこうはならなかった。ガム一個すら残されていないし飲み物も空だ。店内は荒らされたという雰囲気ではないが、何が起きたのかは想像できない。
何かこの地域に起きたであろう出来事のヒントが無いかと思ったのだが。
ここにいても仕方がないので、コンビニの外に出た。
まだ日は高い。そういえば、今何時なんだろう。自分の左腕を見てみたが、腕時計はしていなかった。まあいいか。そのうち分かるだろう。
その時だった。
再び空が陰ったのは。
つんざくような咆哮が轟いた。
思わず身が縮こまり両耳を手で押さえる。
ヤバイヤバイヤバイ
上を見上げると、やつが凄まじい速度で降下してくるところだった。さっきのドラゴンだ。間違いない。
まだやつの縄張りを抜けたわけじゃなかったんだ。きっと上空から探し続けていたんだろう。
コンビニに逃げ込もうかとしたとき、「こっちだよ!」と声が聞こえた。
僕ではない誰かの声を久しぶりに聞いた気がする。
声の方に目をやると地下鉄につながる階段から人影が覗いていた。
「走って!早く!」
誰かが手を振っている。全力でそこを目指して走る。
すぐ近くで咆哮。でも耳をふさいでいる場合ではない。
階段に走りこんだら、そのまま手を引っ張られた。
「うわっ」
勢いあまって数段転がり落ちる。
とても痛いが、今はそれどころではない。
慌てて体を起こすと、直ぐ目の前でドラゴンと目があった。
「ひっ!!」
地下鉄入り口に首を突っ込んでいる。
幸いにもドラゴンは頭が大きすぎて、狭い通路に引っ掛かり、これ以上進めないようだ。
走りこんだ時に手を引っ張ってもらえなかったら、あの牙にやられていたかもしれない。
「安心して、こいつ火は吹かないから。これ以上は入ってこれないの」
そういわれてすぐ脇に人が立っていることに気が付く。
「初めて見る顔ね。あなたもディグアウター?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます