第6話_東京ユグドラシル5
どうしよう。外に出ようと動いたらすぐにバレそうだ。ここの柱の陰でやり過ごすしかない。
だが、ドラゴンはよほど飢えているのか、しつこく僕を探し続けているようだ。
意を決して飛び出すべきか僕が悩んでいると、ドラゴンは突然何かを見つけたようで、走りだした。
僕がいる場所とは関係ない方へとドスドスと音を立てながら走っていく。意外と走るのも早い。
などと観察している場合ではない!
とりあえずあんなものが闊歩している地上は危険だ。建物内ならとりあえず隠れられるだろうか。
ドラゴンが向かった方向とは反対方向にとりあえず進む。この辺りはやつの縄張りなのかもしれない。早く脱出するのが吉だ。
とは言っても、僕このあたりの土地勘無いんだよな。このあたりというか、記憶がないので知っている場所なんてないのかもしれないが。
町名や駅名を見ると「見たことはある」気分になるが、実際歩いてみても見覚えは無い。
左右をよく確認しながら慎重に進むが、どうやらさっきのドラゴンはどこかに行ったようだ。空を見上げても影はない。
慎重に身を屈めながら暫く道を進んでみるが、やはり廃墟ばかりで人影は見当たらない。本当に東京が廃墟になってしまったのか?それとも、この地域だけ放棄されたのか?
できれば後者であってほしいが、今のところどちらとも言えない。
この通りに立ち並ぶ廃墟は比較的綺麗に見えるがとにかく緑の侵食が凄い。とあるマンションなんかはベランダ側が完全に蔦に覆われていて、ちらっと見える室内も何かの植物が生えているようだ。
窓ガラスは殆どの家が割れている。
少し歩くと、再び大きな交差点にたどり着いた。
そこには無数の車が停められたまま放置され、朽ちていた。
歩道橋は中間部分が折れて落下してしまったようだ。階段の部分だけが今も変わらない。
信号機は傾いていたりランプのついている部分がなくなってしまっている。
そしていずれも錆びと緑に覆われていた。
緑に溢れているのに生物の気配がない。鮮やかなのに生気がない。不気味だ。
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