第4話_東京ユグドラシル3

破壊された券売機の上には都内の特に山手線の路線図が表示されていた。大部分が剥がれ落ちていたが、それが東京の路線図であることぐらいはわかる。

もっとよく調べようと駅の方に近づこうとした時、駅舎の中、ずっと奥の方からうなるような機械音が響いてきた。低く鳴るそれはモータの回転音のように聞こえる。ガシャガシャと何かが動く音もする。もしかして人間がいるのか?物陰に隠れて様子をうかがうことにした。

しばらく見ていると、改札の向こうから白い何かが出てきた。見たことない形状だが、どうやらロボットのようだ。4本脚だが虫のような関節の構造になっている。パッとみた感じは蜘蛛に近い。ボディ表面はなめらかな白い装甲に覆われていて、顔にあたる部分にはごつごつとしたカメラユニットが見える。

僕は慌てて身を隠した。ロボットのカメラなら肉眼で見えない距離でも発見される可能性がある。サーモカメラが付いていないとも限らない。

ロボットは偵察をするかのようにしばらく開札付近をうろうろしていたが、やがて駅舎の奥へともどっていった。思わず隠れたが、おそらく正解だろう。あれに言葉が通じるとは思えない。僕はその場からなるべく静かに逃げた。途中、振り返ってみたが、何も追いかけてはこなかった。

橋を渡るとその先はビルやマンションが立ち並ぶ街だったが、ここもやはり廃墟になってしまっている。アスファルトも苔や雑草に埋もれつつあり、長年放置されていることが伺える。道の真ん中に乗用車が放置されていたがあちこちが錆びて、もう10年は放置されているように見える。

この世界は何なんだ?どうして滅んだ?とにかく静かだ。ここは死者の国なのだろうか。

そこまで、目の前に広がる光景に圧倒されてきた僕だが、ふと視界に入ったあるものに釘付けになった。

巨木だ。巨木が見えている。雲に突き刺さるほど高く伸びた巨木。ビルの合間に覗くそれはどう見ても高さ数百メートルはあろうかという巨木だった。それはまるで……

「……世界樹だ」

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