第3話_東京ユグドラシル2
「何があったんだよ……」
思わず独り言がこぼれる。
現実ではないようだ。なんだか頭がふわふわする。こんなの映画やゲームでしか見たことが無い。
「誰もいないのか?ここだけなのか?」
独り言がやけに響く。
自分が地下で寝ている間に世界が滅亡したんじゃないか?と考えたが、そんなことはあり得ないとすぐに否定する。だが、世界の変化はその一帯だけではなかった。
歩けど歩けど同じような廃墟が続く。道端に止められた車は錆びつき、動かなくなってからしばらくたつことがうかがえる。
僕は唯一の生き残りなのか?という疑問が湧く。死にたくはないが、こんな世界で生きるのも嫌だった。
とりあえず、この町の中心地を目指そう。そこに行けば何かわかるかもしれない。
そう考えて彼は町の中心部に向かった。少なくとも、この世界には電気がある。さっきモニターが付いていた。地下鉄の線路にも明かりがあった。という事は、発電所は稼働しているはずだ。まだ文明は滅んでいない。きっと人間もいるはずだ。
少し歩くと、橋にたどり着いた。だが橋の下を流れるのは川ではなく電車の線路だ。草に埋もれつつある10本近い線路がまるで大河のように流れているが、電車は待てども一車両も来ない。橋の手前には駅があるが、駅名は文字がかすれてしまっていて、読むことができなかった。辛うじてJRの表記が読める。
やはりここも廃墟化してしまっている。人は誰もおらず、自動開札機も電源が入っていないようだ。そして、ここはひどく荒れていた。券売機は全て破壊され地面に無残にも転がり、自動開札機も2台は根元からへし折るように破壊されている。床も壁も何の汚れかよくわからないものでべったりと汚れ、蛍光灯は引きちぎられたかのようにぶら下がっている。
ただ事ではないのはわかっていた。しかし、どこかフィクションの出来事のようなふわふわした感覚で、ゲームの世界に迷い込んだような気分だった。どこか、自分の目で見たものを信じられなかったのだ。ここに来るまでは、映画のセットか何かかもしれないと心のどこかで思っていた。しかし眼前に広がる明らかに破壊された痕跡や、見慣れたものが朽ちて放棄されている様子はフェイクには見えない。リアルだ。当時の人々の混乱がうかがえる。ここで、この町で大勢の人が亡くなったのかもしれない。下手したら国中でなにかが起きて、この辺りは放棄されたのではないだろうか。もしそうであれば、ここは人が生存できない危険地帯という事になる。
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