「青女の祈り」
へドリスには旧王宮街を舞台にした「青女の祈り」という有名な物語がある。戦地に
村娘は青く美しい髪を
娘には歌詠みの才もあった。毎日村の子どもたちと連れ立って海辺に向かい、そこで
炎陽の季、娘の身体に異変が起きる。酷暑の時季であるにも関わらずひどく冷え込んだ手足。氷菓子を含んだように冷たい吐息。身動きができないほどの寒さでかちかちと奥歯を鳴らし、一日中、毛布に
それは
涙はすぐに氷の粒となり、娘の
日を追うごとに容態は悪化していった。病は一つひとつ、娘の積み上げた努力を否定した。
畑を歩けば作物が
やがて雪を
それでも娘は、愛する人への祈りを
季節が巡ると病はさらに娘を追い詰めた。
ある朝、
ついに浜の砂上で力尽きた彼女は、
――おまえは綺麗だ。声は海よりも綺麗だ。いつか歌詠みになれ。
娘は笑う。
――あなたの声も、匂いも、姿も、波を
音の出ぬ
本当は、願いはそれだけではなかったのかもしれない。だが娘の命はそこで果てた。死は彼女を待たなかった。
すると孤独な娘を
竜は夕映えの
あの青く美しい髪の面影を残してたなびく雪雲に寄り
青女の雪は異国の地に降り積もったのだという。
*
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