9
エボニーは、再び転移魔法を使い、ウィスタリアと真太とポコと合流した。
「無事に終わったみたい……だね」
エルビジェの自宅の中で、ウィスタリアはエボニーに言った。
「ああ。もう大丈夫だ。それより……」
エボニーは、部屋の隅にいる魂壊竜を見た。天井を破壊しないように、丸まって身体を非常に小さく縮めている。
「なんでいんだよ」
「我は貴様のモノだと言っただろう。貴様の居るところに我が居るのだ」
「お前のそういうところは変わってねえんだな。だったら、とりあえず、この家に住んでくれよ」
「ふむ……。良いだろう」
「魂壊竜って……以外と普通のドラゴンなんですね……」
その光景を見て真太が苦笑いで言った。
「まあな。ドラゴンといっても色々いるし、魂壊竜は人間にもなれるぞ?」
「えっ!? そうなんですか?」
真太は驚いた表情をした。
「ああ。人間の姿で生活していた時期もあったらしい。ちなみに、魂壊竜がこの世界に来た理由は神にも等しい存在と幼女談義で喧嘩になって神にも等しい存在の魂を壊そうとした罰らしい」
エボニーは淡々と話す。
「そんな理由で……。なんか……かわいそうですね……」
「哀れブヒ……」
真太は冷めた目で魂壊竜を見つめていた。
「人間の姿になったのも見てみたいかも」
一方で、ウィスタリアはきらきらした目で魂壊竜を見つめていた。
「ふむ。確かにこの姿のままでは色々と不便だしな」
魂壊竜は目を瞑り集中し始めた。すると、徐々に体が光始め、やがて人の形に変化していった。光が収まるとそこには小さな女の子が立っていた。その姿はまるで人形のように可愛らしく美しい容姿をしていた。
髪の色は銀色。瞳の色も同じ銀。肌は透き通るような白さ。肉体年齢は十歳ぐらいだろうか。服装は、どんな原理かは知らないが、ピンク色のワンピースを着ていた。
そんな可愛らしい幼女に変身した魂壊竜は、一目散にエボニーに飛びついた。
「エボニー!」
「うおっ!? お、おぉ!?」
エボニーは突然抱きついてきた幼女と化した魂壊竜の頭を撫でながら言った。
「意外と……アリだな」
「えへへ……エボニー……」
「ちょっとエボニー! それ親の仇! わかってる!?」
ウィスタリアは怒っているのか嫉妬しているのかわからない顔をしていた。
「あぁ。もちろんわかっているとも」
エボニーは魂壊竜を抱きながら、ウィスタリアに顔を向けて笑った。
「そっか。よかった。エボニーがロリコンになったと思ったよ」
「復讐は良くないしな。それにしても、なんというか……」
エボニーは魂壊竜を見て微笑んだ。
「こうして見ると可愛いな。まるで本物の幼女みたいだな。撫でたくなるぜ」
「エボニー。今すぐこの子から離れなさい。エボニーが穢れるわ」
エボニーの目の前には、無の表情と化したウィスタリアが立っていた。
「おい。それは酷い言い草ではないか?」
「エボニーは私だけのものなんだからね!」
ウィスタリアは幼女と化した魂壊竜を睨みつけていた。
「違う。我だけのモノだ」
魂壊竜はウィスタリアに向かってそう言うと、ウィスタリアの顔が真っ赤に染まった。
「は、はぁ!? あんた何言ってんの!?」
「お前が先に言ったんだろう」
魂壊竜は呆れたようにため息をついた。
「なっ……うぐぅ……」
「落ち着けって二人とも。どっちも俺が好き。それでいいだろ?」
「「よくないっ!」」
二人は声を合わせて叫んだ。
そんな訳で、滅んだかと思われた世界でもどうにかこうにか、人々は今も生きているのであった。
壊れた世界の絶望の中で 夜々予肆 @NMW
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