海老フライ定食は燃えているか

霜花 桔梗

第1話 決断、海老フライ定食を選ぶ

 わたしは今、難局を逢えている。学食で海老フライ定食にするか、メンチカツ定食にするかだ。


「何、悩んでいるのだ?理沙なら両方食べれるだろ」


 失礼な発言はクラスの上位カーストでイケメンのノブタカ君だ。わたしは休み時間はいつも教室のすみで一人、文庫本を開いて読んでいた。


 そう、上位カーストのノブタカ君などとは世界が違っていた。わたしに対してノブタカ君は珍しいモノでも見るかと思うほどであった。


「わたしは海老フライ定食が食べたいの!」


 観察してくるノブタカ君に大声で返す。昼ご飯の発券自販機の前でざわざわと広がる雑音が印象的であった。。


「なら、俺も海老フライ定食な」


 わたしの前に座り、一緒に食べ始める。二年生なのに噂ではK大にサッカー推薦で合格したとか。T大はスポーツが弱いからW大でもいいとか。


 本当か嘘が分からない情報が流れていた。


 しばしの無言の後で……。


 わたしがモグモグと海老フライを食べていると。


「俺、本気だからな」


 ノブタカ君がそう言うと、立ち上がる。海老フライ定食は全て食べられていた。


「明日も一緒に海老フライ定食を食べような」


 そうか!ノブタカ君は海老フライ定食が食べたかったのか。何やら違う気もするがクラス内でカーストにも入っていないわたしに用事などないはず。


 そして、しばしの昼休みに母親とメッセージ交換をする。


「今夜のおかずは何ですか?」

「海老フライよ」


 ガーン!


 やはり、メンチカツ定食にするべきであった。ここは……。


「ファミレスでパスタでも食べていい?」

「ダメです、今日は留学生が初めてホームステイ先である。我が家に来るのです。しっかりと挨拶しなさい」


 ケチ……。


 でも、この高校に留学してくるのだから、色々、会う機会が多そうだ。


 イケメンならいいな……。


 しかし、先までクラスのなかでナンバーワンのノブタカ君と一緒だった。


 性格がいいなら、モブキャラでいいや。


 そんな事を考えながら自宅に着くと玄関に見慣れない靴があった。


 ホームステイの留学生はわたしより早く着いていたらしい。


 わたしはリビングに入ると、金髪でグリーンの瞳であり、女神の様な女子が座っていた。


 しまった、わたしは英語が大の苦手だ。何か話しかけられたらどうしよう。


 混乱していると。立ち上がり、ハグをしてくる。わたしが戸惑っていると……。


 ここは、異文化交流だ、我慢しよう。さらに、後ろに回り、わたしの胸をもみもみしてくる。この慣れた手つきはもしや……。


「I am ガチ百合」


 イヤ、雰囲気で判るわ。そう、ガチ百合の金髪美人である。


「ジョブ、ジョブ、日本語はマスター済みです」


 最初からそう言ってくれ。


「わたしの名前は『ピバティー・ヘレン』です。ヘレンと呼んで下さい」

「あ、わたしは理沙です」

「えへへへへ、それで、わたしに理沙の揉まれた胸はストライクゾーンです。理沙は後ろから揉まれて感じましたか?」

「ガチ百合だな……一緒に海老フライ定食でも食うか?」


 世の中にはガチ百合を好む人もいる。世界は広いなと思うのであった。



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