第48話

 3人で眠るベッドの中で、それぞれのステータスウインドウをざっと確認する。


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氏名:水月 夏海

所有奴隷:ゼマ


ジョブ:{☆【魔法使い】32① ☆【戦士】6 ☆【騎士】10 ☆【神官】32① ★【賢者】15 ★【女神の使徒】 【剣士】61 【斧使い】23 【槍使い】10 【市民】54}


HP:11340

MP:17140


スキル:<PA:乗馬2> <PO:地図作成5>


*ユニークスキル:<PA:転移D>


魔法:【回復魔法】4


*所持金:598万2520ギル (内訳非表示。金塊等はアイテムとみなして加算せず)


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氏名:リーシャ・エテルナ・ハイヨルド

地位:平民


ジョブ:{☆【魔法使い】28 ☆【戦士】13 ☆【騎士】7 【剣士】53 【斧使い】14 【槍使い】9} 【都民】11


HP:5750

MP:7050


スキル:<PA:乗馬2>


魔法:【土魔法】5


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氏名:ミーナ・ラングレー


ジョブ:{☆【騎士】34① ☆【魔法使い】23 ☆【戦士】7 【剣士】35 【斧使い】8 【槍使い】8} 【町民】8


HP:5390

MP:6690


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寝室前で自室に戻ったゼマのものは以下だ。


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氏名:ゼマ


ジョブ:{☆【魔法使い】3 【剣士】3 ☆【便利屋】3 【槍使い】1} 【森の民】6


HP:1680

MP:2480


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私の場合、【神官】までレベル30を超えたので、その専用技の1つである、『ホーリーサークル』が使えるようになった。


この技は、レベルに応じて一定範囲の味方を一度に回復できるものだ。


必要MPが1回1000と高くつくが、私なら連発しても問題ない。


リーシャは【土魔法】が5になっている。


出会った時には既に4だったし、土木作業の手伝いや、ウオーターエレメントとの戦いで、随分使用しているのだから当然だろう。


ゼマはたった1日で、【剣士】と【槍使い】のジョブを得た。


午後だけでも、ゴブリンを400以上倒したらしい。


私のように魔法で楽をせず、きちんと槍と盾で戦ったそうだから、明日には盾のスキルさえ取れるだろう。


いや、【斧使い】も取得して、【戦士】まで取っていそうだ。


早々に乗馬を習わせる必要がある。


本人曰く、ミーナの料理の手伝いがしたいそうだから、さっさと乗馬スキルを取らせて、その後、彼女の手伝いをして貰おう。


ゼマはこれまで戦いを避けてきた。


狩猟すら嫌がったそうなのに、今では戦闘意欲に満ちている。


その高い潜在能力のお陰もあって、これからどんどん頼もしくなってくれるだろう。


迷宮の30階層を突破して、ギルドランクをAにしたら、これまで控えていた事にまで手を広げても良い。


カズヤが戻って来るまであと1か月くらいだろうし、それまでは駆け足で進まないと、おちおちデート(彼にはそう言わないでごまかす)もできないだろうから。


リーシャの豊満な胸に顔を埋め、さっさと眠りに就いた。



 朝6時。


リーシャとゼマを連れて、ソニの村へ跳ぶ。


応対に出て来てくれたカナエに、ゼマに乗馬の指導をしてくれるよう頼み、馬の使用料である銀貨1枚と、指導料として魔物のお肉セット(自分が習った時と同じ内容)を渡す。


それから自分は遠乗りに、リーシャは土木作業へと散って行った。



 いつもより少し遅い8時、迷宮前でミーナと合流し、入り口近くの魔法陣で9階層に跳ぶカナエ達を見送って、ゼマを4階層に連れて行く。


「ここの魔物はトレント。

火魔法が弱点だけど、なるべくならこの斧と盾で戦ってね。

【斧使い】さえ取れれば、ゼマは【戦士】にもなれるし、盾スキルを覚えれば、あとは乗馬スキルだけで【騎士】にもなれるから」


鉄の斧を渡しながら、彼女にそう指示を出す。


「かしこまりました」


「勿論、集団を相手にする際には、魔法で数を減らしてからにしてね。

それからこれがお弁当。

念のためにMP回復薬も5本持っていて」


「ありがとうございます」


深々と頭を下げてくるゼマと別れ、自分達は26階層の昨日の位置へ。


「階段を見つけたら直ぐに上に進もう」


ミーナの斧に火属性を付与し、本日の戦いを始めた。



 12時30分。


お弁当を食べ終えて、カナエ達のドロップ品を預かりに行き、その足でゼマの様子を見に行く。


「調子はどう?」


「お陰様で、【斧使い】と【戦士】が手に入りました」


「やっぱりもう取れてるのね。

一体どれくらい倒したの?」


「・・300くらいでしょうか」


「この場で設定を変えちゃうから、少し待ってね」


「はい」


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氏名:ゼマ


ジョブ:{☆【魔法使い】4 ☆【戦士】1 ☆【便利屋】4 【剣士】5} 【槍使い】3 【斧使い】1 【森の民】6


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「これでもう使う武器や手段には拘らなくて良いから、自由に戦って。

それにしても、本当に成長が速いわね」


「ありがとうございます。

昨日からのドロップ品が少し溜まっておりますが、今お渡しした方が宜しいですか?」


「給料日ごとに纏めて貰うから大丈夫。

因みに、他の階層でお金が落ちた場合には、それは自分の物にして良いからね?

ここのトイレは有料の方を使って貰ってるから、その費用にでも充てて」


「分りました。

・・あの、午後からは5階層で戦っても宜しいですか?」


「ん、どうして?」


「この階層だと魔物の動きが遅くて、盾を使う機会が少ないのです」


【便利屋】を持ってるから、敏捷性が高いのかもしれないわね。


「う~ん、5階層のリトルボアは、個人推奨ジョブレベルが12だからね。

パーティー戦なら問題ないけど、あなた1人で大丈夫かな?

・・1度戦ってみて判断しようか。

盾で魔物の攻撃を受けてみてくれる?」


「はい、ありがとうございます。

勝手を言って申し訳ありません」


「じゃあ5階層に跳ぶね」


階段付近に転移して、近くに居た敵と戦って貰う。


リトルボアの突進を両手で構えた鱗の盾で受けたゼマは、1歩後退あとずさったが、そのまま敵を火魔法で攻撃して倒す。


ステータスウインドウを覗くと、HPの減りは10程度だった。


鱗の盾の性能のせいもあるけど、これなら大丈夫だね。


「今の戦い方で頑張って。

ここは無理して武器を使わなくても良いから。

HP回復薬とMP回復薬をもう10本ずつ渡しておくね。

惜しまなくて良いからどんどん使って盾スキルを取ろう。

何かあったら連絡してね?」


「はい、頑張ります」


彼女に回復魔法を掛けて、自分もリーシャ達の下に戻る。


戦闘を再開して1時間で、27階層への階段を見つける。


それを上った先には、先程までとは色違いの相手が居た。


『ファイアエレメント。個人推奨ジョブレベル40。火属性回復。ドロップ品はノーマルが魔石、レアが金貨1枚』


「強くなってもドロップ品は同じだね。

しかも火属性は回復か。

でも水属性が弱点になるから寧ろ有難いかな」


<特殊鑑定>を使いながら独り言ちる。


「ミーナの斧とリーシャの剣に、水属性を付与するね。

私、ちょうど【水魔法】のレベルを上げたかったから、先に進みながら無双してくる。

レベル1の【水魔法】じゃ10分しか効果が持たないから、その頃また戻って来る」


「はいはい。

こっちは地道に頑張るわ」


駆け出していく夏海の後ろ姿に、呆れたようにリーシャが声をかける。


それから夕方の5時40分まで、各階層で戦うメンバー達は、自分達の敵をひたすら狩りまくった。



 「今日の戦果は、鉄の剣13本と、鱗の盾が1つね。

ドロップ率に関するスキルを持っていないのに、本当によく落ちるわね。

・・随分頑張ってるんだ」


入浴後、村まで送り届けたカナエ達のステータスを覗きながら、夕食用の食べ物を渡してあげる。


「夏海さんがこの村に関与してくださる間だけのご厚意ですので、こちらも精一杯それにお応えしないと失礼に当たりますから」


当然のことのようにそう告げるカナエに、私は言う。


「世の中にはね、恵まれていても、人に何かをして貰っていても、そのことに胡坐あぐらをかいて、ろくに努力しない人達が大勢いるの。

自分がして貰っていることに素直に感謝ができるのは、それだけで一種の才能なのよ。

私があなた達に手を差し伸べたいと思うのは、2人が持つ、そんな才能のせいなの」


元の世界では、親に塾に行かせて貰いながら全く勉強しない人、学校に通いながらスマホしか弄っていない人を大勢目にしてきた。


親が必死に稼いでくれたお金を自身に使って貰いながら、そのことに有難味を感じない子供達。


そういう人が、私はあまり好きではなかった。


正直、この2人に掛けているお金や手間は少なくはない。


でもそんな事が全く気にならないくらいの大きな満足感がある。


お金に代えられない価値がある。


私は今、そんなことが溢れた世界で生きている。

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