山賊と肉と霧

霧は少々嬉しく、軽めな足取りで道ならざる道を歩いていた...が、それに水を差すものがいた。

「あっ…、あんた……ゴホッ…なんか食えるものを置いて行け… ゴホッ……」


山賊である。…だが、おおよそ霧の知る山賊とは違うものだった。

着る物が山賊なのに所々汚れてはいるものの普通の村民のである。

武器も、クワやピッケル、スコップだらけ。

1番マシな武器でさえ鉈という状況。


何より健康状態だ。 体付きはとても細く弱々しい、顔色も悪い、どう見ても栄養失調の状態である。 これに対して霧は、

「分かりました。 ですが少々質問をします、何故そんなに武器がショボいのですか?そして食い物は、何が良いですか?」

…大した感想は持たなかった様だ。

「あっ…ぁぁ…食い物は出来れば、 肉が良いな…栄養がつく……ゴホッ……あと、武器や服については、言いたく無い……ゴホッ…」


「そうですか…。取り敢えずこれを食べて下さい。……貴方達の状況下については、後ほど聞きますね。」

……なにがなんでも聞き出すつもりの様だ。


そう言って、霧が取り出したのは、大型霧獣の肉である。この肉は、道中襲い掛かってきた象型個体を仕留めた肉だ。


「あっ…、あんた……こんな高級なのは、流石に貰え無い……ゴホッ…」


その言葉を聞いて霧は考えた。

………はて? そんなに高級な肉だったか?

大型霧獣の肉は、文明が滅びる3000年前での牛肉(ロース)くらいの価値であった筈だが…。

あぁ…そうか…、この人たちはそれすらも買う金は無く。

かと言って、大型霧獣を狩る事も出来ないくらいこの人達は弱っているのだろう。

因みに大型霧獣は健康な成人男性が3人いれば無傷で狩る事が出来るレベルの動物である。

それが60人近くいて出来ないとは……………かなり事態は深刻である。


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霧に巻かれて死ね 由良戯 @dke3050

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