第2話 テーマパークでGO 2022
それは、春めいていた、爽やかな日に、あすみが話しかけてきた。
「ねえ、テーマパークに行かない」
嫌だ。あんなジェットコースターに乗ると、気絶してしまう。それに、こいつは、俺が怯えるところを、楽しむ、変な癖がある。手こずる相手だ。あの廃校の件で、反省していると思っていたが、俺は、全くこいつの性格を、掴んでいなかった。
「1人で行ってこい」
「誰が一人で行くのよ、だいたいあんたが、主役なんだから」とあすみは、ずるがしこく、笑った。
こいつ、狙ってやがる。もしも、途中で機械が止まったら、どうしてくれる。
「スリルと冒険が、私たちを呼んでいる」とあすみは、拍車をかけた。
「観覧車だけだったら、行ってやる」とおれは、譲歩した。すると、あさみは、
「あれは、恋人同士がやるものよ、そんなの、つまんない」あっさり断られた。
次の日曜日、待ち合わせた場所で、俺は、言った。
「今日は、俺の命日に、なるかもしれない」
「スリルと興奮とアドベンチャー、楽しもうね」
「今度、できたテーマパークで、なんと、お化け屋敷もあるよ」あさみは、ざっくりと言う。
「お化け屋敷、なしな」突っ込む俺。
「強くなれ、ハルオ」
なんだかんだで、、テーマパークに、着いた。待てよ、金はどうする?やはり、俺が出すべきか。
「2人分、お願いします」と、あさみは料金を払った。
「さあ、行こう」
「ありがとう」と言いつつも、ひもを感じている俺。
ジェットコースターは、登る時は、ゆっくりだ。あすみの顔は、前を向いている。
「なあ、時速何キロだ」
「200キロオーバー」クスクスと笑うあさみ。
「おろしてくれ」思わずバーを掴む手の力が、強くなる。
「ぎゃー」風圧が、顔に当たる。声も聞こえない。
ふと、あさみを見ろと、そんな俺を見て、笑っている。こいつ、やっばり。
もはや、一回目で、気が全力で抜けた。帰りたい。
「はい、アイスクリーム」と言って、あさみが手渡した。
「ふふふ」とあさみが笑った。
「何がおかしいんだ」心当たりは、あったが、尋ねてみた。
「怖がりねえ」
「怖いものは、こわい」
「じゃあ、本番のお化け屋敷、行こう」あさみの勢いが、増してきた。
本番じゃなく本命だろうがと、俺は悪態を、心の中で、つぶやいた。
いやな予感だ。まさか、また本物が、いるわけじやないだろう。そもそも、今度は人がいる。しかも、昼間だ。
「お前、1人で入ってこい」
「そういうこと、私に言う」あさみは、すねた。
「悪かった、行こう」
中に入ると、江戸時代だった。いかにも、それらしき雰囲気がある。井戸から人が出てきたり、部屋が不気味だ。不思議なことに、怖くない。
「ねえ、赤ん坊の声が、聞こえない」とあさみが尋ねた。
「いや、聞こえない」とおれは、答えた。周りをみても、赤ん坊は、いない。
すると、、突然、目の前の人形が動き出した。
「えっ」とあさみ。飾りの人形で、中は人は、入っていない。武士の姿をしている。この、ありえない光景に、俺は一目散に、逃げ出した。
「待って」とあさみも、ついてくる。そして、武士は二人を追いかけてくる。
「なんまんだぶ、なんまんだぶ」心の中で、読経した。いや、そもそもが、ありえない。これには、なにかわけがあるに、違いない。もしかすると。
「赤ん坊を探そう」と、俺は、あさみに声掛けた。
「何、赤ん坊」
「ここに、生きている赤ん坊がいるんだ」と俺は言った。
「なぜ」
「誰かが、捨てたんだ」と俺は、答えた。
赤ん坊の親は、もう死んでいるかもしれない。でも、赤ん坊は、いきていて、救い出せば、この状況から、抜け出せるかもしれない。武士は、刀を抜いてきた。
「あさみ」と俺は、あさみをかばった。武士の振り落とした刀は、俺の背中を切った。
「大丈夫」あさみは、尋ねた。これは、怨念か。背中に激痛が走る。それでも、あさみだけは、守る。武士は、動かなくなった。そして、うつ伏せに倒れた。
「探そう、あさみ」
「わかった」とあさみ。
おそらくに、見つけやすい場所に、赤ん坊を隠したはずだ。それは、畳の下にいた。捨てられて、まだ、あさい。
「信じられない」とあさみ。
「とにかく、施設の人に渡そう」
「あさみ、ご機嫌だな」ニコニコしているあさみに声掛けた。
「ないしょだよ」とあさみ。
あさみは、ときどき、ないしょを使う。これは、これでいい。背中の傷は、施設の人が手当てしてくれた。何より、赤ん坊は、救われた。
「また、行こーね」とあさみが言った。
「勘弁してくれよ」
と俺が言うと、あさみは、笑いながら、こう言った。
「また、守ってね」
「それは、わからないが、そんな男になりたいと思っている」と、言いながら、俺は、あさみのなんだろうと、考えていた。
あいつとGO 2022 美乃坂本家 @fit2300get
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