3話 陰謀と結末
「トリュフ家は
小学校に通う五年生・佐藤コナラは先週キノコ狩りで、命を狙われた帝であるポルチーニさまと出会い。ポルチーニさまから密命を受け、きのこ帝国の密偵となった。舞茸将軍とともに捜査に乗り出す。疑わしきはエリンギだと、コナラはいう―。
①ポルチーニ帝
②トリュフ家(地下闇組織と繋がり)
③マツタケ家(以前、エリンギを雇っていた)
「犯人をあぶりだすため、今はポルチーニさまは行方不明ということにしたので、オレは賭けに出た―。」
「どうやって?」
「やさい広場では、きのこオータムフェアをやっていた」
「マッシュルームステーキ」「舞茸バター炒め」「椎茸入りスクランブルエッグ」
「マツタケご飯」「しめじとベーコン炒め」「なめこと卵のあんかけうどん」
「ポルチーニ香るパスタ」「トリュフ塩のカルボナーラ」「エリンギとネギの生姜
スープ」
「それで、オータムフェアの最終日、きのこ関係者が審査して、一番美味しいものを次期帝に選出することになったんだ」
「選ばれたのは?」
「トリュフ塩のカルボナーラ……」
「美味しそうね」
母・有希子は想像するだけでうっとりした。
「でも、周りの人が言うんだ。不正があったんじゃないかってね。きのこ界隈で大騒ぎになったんだ。」
「コナラさん、エリンギが怪しいと思うなら、一番美味しい投票で一位にならなかったわね。トリュフは一位に相応しいと思うわ」
「実は数日後、賄賂を断ったきのこ担当パート従業員さんが名乗り出た。だからトリュフ家の票は無効になった」
「一位は賄賂の影響だったのね……。せっかくトリュフが食べ放題だったのに、その方、人間の鑑だわ」
「オレは再び提案した。
「オレはエリンギに罠を張って、時を待った……ところが……」
「犯人は――椎茸だったんだ」
「!!」
有希子は飲んでいたコーヒーを思わず吹き出しそうになって、マグカップをテーブルに置く。
「し……椎茸⁉ 急展開だし、意外ね。どんな罠を仕掛けた?」
「簡単さ、昨日きのこ帝国から
「でも、椎茸がどうして闇組織と? たしか、椎茸は倒木している木や枯れ葉で自生するものよね? 地下で育つトリュフ家とは関係ないじゃない」
「そこにエリンギが関与している。エリンギは植物が枯死した根部で育つ……つまり地下だ、エリンギも
「ポルチーニの側近エリンギが登場ね。そこからどうしてシイタケ家が⁉」
「エリンギは近年、人工栽培に成功して、日本で一般的に食されるようになった新参者。一方、椎茸は昔から食された不動の人気のきのこだ。その昔、椎茸は高級食材だったのに、今や一般食材。いくら三大勢力の香りがいいからって美味しさは負けない自負がある。トリュフ家が
「ぶっ……コホン。ふ、不倫ってこと……?」
「椎茸が帝になれば三大勢力を潰し、再びトップに躍り出る。罠にまんまとかかり、食材に一番早くスクランブルエッグに入ったのは……椎茸だった。それが佐藤家の食卓だ!」
コナラはドヤ顔をする。
「……は?」
有希子は腕を組みコナラを見据えた。
「最初に、誘拐した犯人は、椎茸の一族だ……。ポルチーニさまの正妃であるシイタケ皇后さまが指示した……えっとぉ……」
「……ほぅ―それで?」
「だから、母さん。オレは犯人の椎茸は食べられない! 残していい?」
「……」
コナラは真剣だ。二人の間に緊張が走る。母はコーヒーを飲み干し、ゆっくりとマグカップをキッチンの流し台に置く。
「詰めが甘い。却下! 全然、密偵じゃないし。第一、エリンギに何のメリットがあるのよ」
「ええー! 頼むよ~母さん、オレの好きなスクランブルエッグに大嫌いな椎茸入れないでくれよぉ~」
「はい、残念ね。10分で食べて」
母は悪魔のような笑みを浮かべた。
※佐藤家のルール:嫌いな食べ物は、母・有希子を説得できれば食べなくてよい。
「兄ちゃん、諦めて食べなよ。SDじーずだよ」
ヨーグルトを食べ終わったクヌギを横目で見ながら、椎茸を残すことに失敗したコナラは母の前でうな垂れた。
おしまい
きのこ帝国の密偵 青木桃子@めまいでヨムヨム少なめ @etsuko15
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