その音は突然、教室に鳴り響いた

@tomitayume

第1話 犯人は誰?

プゥーーーー


その音は静寂の教室に突如鳴り響いた。

僕は後ろの席から聞こえてきた

この音の正体を知ってる。


オナラだ


オナラとは

誰もが何度も出したことがあり、聞いたことがあり、我慢したことのある音


苦手な英語のテスト中に聞こえた音に

僕は必死になって笑いを堪えていた。


(高3年になってテスト中にオナラするなよ)


心の中でツッコミを入れ、

テストに集中しようとしたが

どうしてもオナラの主が気になってしまう。


僕の学校ではカンニング防止の為に、テストの席はくじ引きによって決められる。

席にはそれぞれ番号がふってあり

教卓から見て右の列先頭から1番、その後ろの席は2番となり、生徒数25人のこのクラスでは

5列目の1番後ろの席が25番となる。

今回のテストでは僕は18番の席に座っている。

だから犯人は4人〜6人程に絞られる

あー振り向きたい

早く振り向いてオナラの主を知りたい

そう思いながらも僕はテストに集中をした


(えっと…Replacementの意味は入れ替えだから…)


プゥープププ


(そんなバカなっ!)


しかも今度はかなり大きめの音だ。

さっきと同じ奴か?

音は同じ方から聞こえてきた気がする。

そんなことを考えていると、

周りからクスクスという笑い声が聞こえ、

僕も気が緩んで少し笑ってしまった。

右隣からは「くっさ」という言葉まで聞こえた。



「こらっ静かにしなさいっ!

 生理現象なんだから笑わないのっ!

 みんなもオナラするでしょ!

 テストに集中してっ!」


教育実習に来ていた、伊藤先生が叫ぶ。

伊藤先生の叱り方が幼稚園児を叱るような言い方だった為、クラスにはさらに笑いの空気が流れる。


キーンコーンカーンコーン


最悪だ…全然テストに集中できなかった

僕は机に顔を伏せながらうなだれた。

それもこれも全部あのオナラのせいだ

あの音のせいでテスト後半まったく集中出来なかった。


「ほらっ早く自分の先に戻って

 帰りのホームルーム始まるわよ」


「あっごめん、ごめん」


僕がテストを受けていた席の中村さんに声をかけられ、僕は本来の自分の席である、教卓の前

つまり11番の席に戻った。

その途中、後ろの席を見忘れたことに気がつき余計にショックを受けた。


ガランっ


僕が席に座ると同時に教室の扉が開き

クラス担任である村上先生が入ってきた


「じゃぁホームルーム始めるぞー

 みんなテストはできたかー?」


テストという単語を聞き

先程のオナラの音が蘇る

クラスメイトの何名かも思い出し笑いをしている


「なんだ なんだ なんかあったのか?」


村上先生が教卓の前に座っている僕に尋ねる


「えっと…実はですね…」


僕はテスト中におならが数回あったことを村上先生に話した


「はっはっはーはーー」


村上先生が豪快に笑う


「お前らそんなことがあったのか

 まぁわざとやったわけじゃないだろうし

 仕方ないなっ! ハッハ」


体育教師の村上先生はいつにもなく大きな声で笑った。

そんな村上先生の態度に納得いかなかったのか、


「笑い事じゃありません!」


クラスで1番頭がよく、顔もかわいい、クラス委員長の春日さんが

勢いよく立ち上がり叫んだ。


「設楽君がいった通り、さっきの英語のテスト中に オナ… オッ、放屁の音が聞こえました。 

私は不覚にもその音のせいでテストに集中することができませんでした。村上先生、今からのホームルームを使って犯人探しをしませんか?」

 

春日の提案にクラス中がざわめく


「おいおい、そんなことしてなんか意味あるのか??」


「意味があるとかないとかじゃありません。

私はテストを妨害した犯人は、人として

みんなに謝るべきだと思ったのでこの提案をし

ました。ただそれだけです」

  

犯人を知りたい僕ですら

春日さんの意見はよく分からなかった。

村上先生もあきれたように答える


「よく考えろ日村、犯人が…いや犯人っていうほどのことでもないな

もしオナラをしてしまった人がわかってお前のテストの点数は変わるのか?変わらないよな?それにオナラをしたのがお前の仲がいいやつだったらどうする?好きな人だったらどうする?何もお前に得ないだろ?

だからそんな無駄なことは辞めて、早くホームルームを始めようぜ」


村上先生の言葉に春日さんは何も言い返せず

席に座った。


さっきまで真っ赤な顔をしていたくせに

席に座る春日さんの顔はどこか満足気だった。


「いいじゃん!やろうぜっ!」


話がまとまりかけた時に叫んだのは

この学校の理事長の孫で先生達も逆らえない

みんなからの嫌われ者、久田だった。


久田は日村に何度も告白をしているという噂があり、点数稼ぎのために叫んだのは明白だった。


「久田、お前まで何を言ってるんだ」


村上先生の態度は先程とは一変し、

困った様子だった。


「いいじゃん 楽しそうだし 俺だってテスト集中できなかったし」


お前は普段からテスト真面目に受けてないだろ

きっとこの時クラス全員がそう思ったに違いない


「わかった でもやるかやらないか多数決で決めさせてくれ これだけは譲れない 

みんな申し訳ないが、今から顔を伏せてくれ

こんな茶番をやりたいやつは手を上げてくれ」


「ちっ、まぁいいか」

久田がどうだ と言わんばかりの顔で春日さんのことを見たのに気がついたのは僕だけだろう。


そして

僕たちは戸惑いながらも顔を伏せた。


「じゃぁ聞くぞ ホームルームの時間を使って

 オナラをした人物を特定したい奴っ手を上げてくれ!」


手をあげる奴なんているのか

そう思った時


「ワタシデス!」


そう叫んだのは韓国から交換留学にきている

ホウ•ヒンヒンくん君だった。

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