第17話
薄く、小さな雨が落ちる中で、僕と教授は集会所の縁側に座っていた。
「……怪しまれなかったんですか?」
「彼らは神秘が起きたと思ったようだよ。なんでもこの村の言い伝えと似ているとか」
「そんなもんですか」
「相乗効果かもしれないぞ。魔法を信じていない村人たちが、一瞬でも信じたのかも」
また来なければ、と教授は含み笑いを堪えきれないでいる。
厚い雲は切れかけていて、もうすぐ雨が上がる気配がしていた。雨に濡れた地面が少しずつ乾く香りが、あたりに漂ってくる。ずっと雨のベールに隠されていた景色が、淡い光に照らされて、輪郭を露わにしていった。
——これが、雨あがりなのか。
僕は、もう逃げたり隠れたりしなくていいんだ。雨上がりの草木が醸す香りを、胸いっぱいに吸い込む。——心地よかった。
余韻を残して落ちていく数滴の雨を掴む。
その濡れた右手で、左手に握っていた石に触れた。真珠のように丸々とした、虹の輝きを秘めた宝玉。
龍神が消えた後、僕はこの石を握ったまま、台地に現れた。龍神は何も言わなかったが、これは託されたものだとすぐにわかった。僕自身も、龍神から力を預かる際に、契約を交わしたのだ。これは、その契約から生まれた、新たな力だ。——僕はこれから、この力の使い道を、正しく考えなければならない。
「一からやり直しってことですかね」
「そうだな、大学教授とのマンツーマン授業だ。誇りたまえ」
集会所の中には、老人たちの笑い声が響いている。誰かが大きな声で民謡を歌い出し、そのうちに何人もの声が重なった大合唱になった。現地の言葉で歌われるその内容は、僕にはうまく伝わらなかったが、教授が言うには、「ハレの日を祝う歌」とのことだった。
僕たちは明るく力強い歌声を背中に聞きながら、森の中の小道でそっと車を走らせていった。
雨男は龍を送る サーム @sarm2
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