第5話 幽霊騒ぎ

 矢羽井伊織は、猫又のスズと出会い100個の体質を集めるため友達を100人作ることになった。現在矢羽井が集めた体質は自身を含めて四人。上利美里の幸運体質、震川実のビビリ体質、月間透のストーカー体質で矢羽井の不運体質だ。矢羽井と上利と震川の三人は同じクラスに体質を持っていそうな人を探したが見当たらなかった。他クラスを探してみようかと話が進んだ時に月間がニコニコ顔でやってきた。

 「矢羽井ちゃ~ん!」

 「あ、月間さんどうしたの?」

 「私~あれから体質のこと調べたんだ~」

 「そ、そうなんだ」

 「それで~じゃあん!ビッグニュースを手に入れたよ!」

と食い気味に言う月間は矢羽井の手を掴みどこへ連れて行こうとしたが上利と震川に阻止される。

 「そう言いながらどさくさに紛れて伊織ちゃんをどこへ連れて行こうとしないで!」

 「ちっ!もう少しであんなことやこんなことを出来たのに!」

 「怖い!真顔であんなことやこんなことって何!」

 「いいから早く訳を話して月間さん。伊織ちゃんから離れようか」

 「仕方ないな~上利さんがそう言うならねえ?」

と言う二人は笑っていたが見えない火花が散っていた。見ていた矢羽井は苦笑いをしていたがきりがないので矢羽井が言うと喜んで訳を話した。

 「「「幽霊騒ぎ?」」」

 「そうなの!近頃一階の女子トイレで女の子のすすり泣く泣き声が聞こえてくるんだってー」

 「そんな噂聞いたことない。本当なの?」

 「本当よ。三組の女の子たちから聞いた情報なんだから!」

とウインクをする。月間に不安な三人だが調べてみる事には始まらない。

 「も、もも、もし、本物だったらどうする?」

と震川が遠慮がちに言うと三人はそろえて言う。

 「「「...その時は見なかったことにしよう」」」

 「そ、そうだね...触れる仏にに祟りなしっていうしね!」

 「神だよ」

 「まあ、取り上えずみんなでレッツゴー!」

と月間に連れられて三人は放課後に礼のトイレに向かった。


5話「幽霊騒ぎ」

 「ここが例の噂のトイレなんだね」

 「嘘かと思って調べてみたけど噂は本当だったんだ」

 「あの...皆...少しいいかな?」

 「とにかく一度入って調べてみないと始まらない。皆行こう」

 「聞いてる?ねえ...ちょっと待って...」

 トイレに来たもののある問題が発生した。それは...

 「僕、男の子だから中に入れないよ!」

と震川が声を荒げて言う。ドアを掴んだ矢羽井と向かおうとした上利と月間はその一言を聞き気が付いた。そう、震川は男子...つまり女子トイレには入れないのだ。

 「ごめん...忘れてた」

 「それはそれで傷つく...」

 「そうだよね。震川君は男の子だから女子トイレには入れない...」

 「だから...僕抜きで頑張って...」

 「分かった!矢羽井さんと上利さんと行ってくるね。知ってるー廊下も出るらしいよー」

 「ええ!」

 「月間さん...震川君に意地悪しないで...」

 「ごめんごめん、つい。震川君の反応が面白いからー」

 「酷いよ...でも待ってるから...なるべき早く終わらせてきてね」

と不安そうに言う震川に矢羽井は優しく声を掛ける。

 「早く終わらせるから待っててね...」

 「ううん...じゃあ、皆...頑張って...」

 「よし、行こう!」

と月間が言うと矢羽井・上利・月間は女子トイレの中に入った。


 「中は普通のトイレみたいだね」

 「当たり前でしょ?学校のトイレなんだから」

 「調べるとして一体何をすればいいの?」

 「とりあえず...個室から見て見よう?」

 矢羽井たちはそれぞれ個室を調べてみたが特に不思議なことは無い普通のトイレだった。掃除用具入れも開いたが箒等が閉まっているだけだった。

 「何もないね。気のせいだったのかな?」

 「そう言えばすすり泣く声ってどこから聞こえてくるの?」

と上利が聞くと月間は窓を指さして言う。

 「あそこの壁際の窓から聞こえるよ」

 「あそこから?」

 「そう!」

 「調べてみよう」

と上利が近づいた時一瞬だが矢羽井の目には誰かが立っているような気がした。

 「あれ?もしかして...」

矢羽井が壁際に触れようとした時にこの女子トイレに誰かが近づいた。


 矢羽井たちが女子トイレを調べている同時刻...震川は一人壁に背を向けてぶつぶつ呟いていた。

 「怖い...怖いよ...皆何してるんだろう...もう入って数分立ったよ。そろそろ出てきてくれてもいい頃なのに...」

 「もしかしたら...皆は幽霊に食べられて...そんなのやだ!でも僕男子だから女子トイレ入れないし...かといって一人でいるのは嫌だ...」

と廊下をうろうろ歩き回っていた。そんな震川の元に誰かが近づいていたが震川は気づく気配がない。震川に近づき方に手を置いた。方に手を置かれた震川はパニックになり大きな声で叫んで気絶した。


 「ぎゃああああああああ!」

と震川の叫び声を聞いた矢羽井たちは驚きドアを開けて女子トイレから出ようとするとドアが開いた。

 「この悲鳴...震川君!」

 「どうしたのかな?」

 「私見てくる!」

 「待って矢羽井さん!あれ?」

 「何やってるの...あなたたち」

女子トイレに入ってきたのは眼鏡をかけた女子だった。

 「あの...あなたは?」

 「私は可視麗子。風紀員の...」

と可視が途中で話している途中で月間が制服のあることに気づき遮った。

 「あ!制服のネクタイの色、私たちと同じ青色だ!可視さんも同じ一年生だ!」

と指を指して言う月間に呆れ可視はため息を吐いた。

 「そう...私はあなた達と同じ一年。私のクラスは一年三組よ。それを言おうとしたの。話を遮られたから言いそびれたわ」

 「ごめん、ごめん!」

と月間が軽く謝ると矢羽井に訳を聞いてきた。

 「私は風紀員として学校を巡回しようと思って回っていたの。そうしたらこのトイレの前で同じ学年の男子がうろうろしていたから声をかけたら気絶しちゃって...何かいたずらでもしてるのかと思って確認も兼ねてきたの」

と可視が言うと矢羽井たちは納得した。

 「そうだったんだ。震川君の悲鳴が聞こえたから出たのかと思って心配して!」

と月間が言うと可視は眉を下げて言う。

 「出るって何が?」

と可視が聞くと食い入るように上利と月間が言う。

 「「幽霊だよ。幽霊騒ぎ!」」

 「最近このトイレですすり泣く声が聞こえたっていう噂があるでしょ?」

 「私達はその噂を聞いて矢羽井さんと上利さんとついでに気絶した震川君と調べに来たの!それでそれで...そうだ!可視さんって風紀員でしょ?そう言う噂何か聞いてない?」

と二人は聞くが可視は更に深いため息をついた。

 「幽霊騒ぎ能和さんのことは聞いてるわ。最近この学校で噂になってることは私も知ってるわ「じゃあ、この噂って...」はあ...ばかばかしい。幽霊なんている訳ないでしょ?そうやっていたずらをする生徒を注意するのも風紀員の仕事だから」

と可視が言うと二人は肩を下した。

 「「なーんだ。ただの噂だったのか」」

 「当たり前でしょ?この学校は古い伝統があるからそう言う噂も立ちやすいのは仕方のない事よ。それを面白半分でやるのは良くないわ。今回は厳重注意で罰則も何も無しにするから早く下校して。ついでに気絶している彼も起こしてくれる?」

 「分かった!」

 「でも、どうして噂が立ったのかな?」

 「このトイレの窓は見てもらったように隙間風があるからそれがすすり泣く声に聞こえただけ」

 「そっかー。噂の正体はこの窓が原因だったんだね」

 「そう、近々...この窓は新しくするつもりよ」

 「それなら安心だね。あの...可視さん。私達興味本位でごめんね」

と上利が謝ると可視も続けていった。

 「いいの...分かってくれれば。私はこの後また巡回があるから先に帰って」

 「うん!月間さん、伊織ちゃん帰ろう!」

 「...」

 「伊織ちゃん?どうしたの?」

先程から壁を見つめ何も話さない矢羽井に上利は話しかけたが聞こえていないのか返事がない。帰ろうとした上利も傍へ駆け寄る。

 「伊織ちゃん?その壁がどうかしたの?」

 「ねえ...この壁...もしかして...」

矢羽井が壁に触れようとした瞬間女子トイレのドアが開き、その場にいた全員が振り返った。ドアを開けたのは気絶していた震川だった。

 「矢羽井さん!」

 「震川君!」

 「さっき幽霊が...あ!」

震川は自分が女子トイレのドアを開け中に入ろうとしていることに気が付き一瞬固まり、直ぐに弁解した。

 「違う違うよ!女子トイレに入ろうと思ったわけじゃなくて!」

 「もう~震川君~そんなに女子トイレに入りたかったの~」

 「違うよ月間さん!」

 「照れちゃって~ねえ~」

 「もう、上利さんまで!」

 「本当は~矢羽井さんのこと見に来たのかな~」

と月間と上利にいじられた震川の顔はリンゴのように赤くなった。

 「違うよ!僕はそんなつもりじゃないよ!うわあああん」

と女子トイレの入り口で泣きだした震川を矢羽井は背中を摩り、二人は可視に注意された。


 廊下に出た矢羽井たち。震川は半べそをかきながら体育座りをしてぶつぶつ呟いている。矢羽井は背の背中を摩った。

 「グズ...違うもん。僕そんなんじゃないもん」

 「分かってる。分かってるよ震川君。私たちの事心配で助けに来てくれたんだよね?」

 「正確には伊織ちゃんだけどね」

 「ギクッ!違うよ...二人も助けるつもりで」

 「声ちっさ!」

月間に言われた震川は図星なのか声が次第に小さくなった。その様子を様子を見ていた可視は一息ついた。

 「あななたち仲がいいのね」

 「そうでしょ!私達、友達だから~特に私と矢羽井さんが」

と皆を引き寄せた月間は矢羽井を抱きしめる。その手が制服のに入ろうとした所で上利と震川は止めた。

 「何?」

 「何じゃない」

 「その手は何...月間さん」

 「魔が差しただけだよ。魔が」

 「油断も隙も無いない。全く...」

すると下校するサインのチャイムが鳴った。

 「チャイムが帰らないと」

 「後は私に任せて皆は帰って」

 「ありがとう...可視さん」

 「いいの...そうだ。矢羽井さん」

教室に戻ろうとした矢羽井を可視は呼び止めて聞いた。

 「ねえ...何で女子トイレの壁をずっと見ていたの?」

 「それは...見えたの」

 「見えたって?」

 「一瞬だけど私と同じ制服を着た女の子があの壁に立っている気がしたから」

 「えっ!それって矢羽井さん...あなたはもしかして見え..」

可視が何かを言いかけた時に遠くから上利たちの呼び止める声が聞こえた。矢羽井はすぐ行くと言い、可視に向き合う。

 「でも、気のせいかもしれない。それじゃ...可視さんまた明日」

と矢羽井は言うと教室に戻った。

 「......」

一人廊下に残った可視はしばらくその場に立ち尽くした後、再び例のトイレに入った。誰もいないトイレに入った可視は壁に向って言った。

 「もう大丈夫だよ...さん」

と可視が言うとトイレからすすり泣く声が聞こえてきた。その声を聴いた可視に口元は笑っていた。


 翌日、矢羽井、上利、震川、月間は案の定遅刻をして綾里に注意され、教室に向っていた。

 「今日も遅刻しちゃった!」

 「何でうれしそうなの...月間さん」

 「だって~こうして矢羽井さんと一緒にいれ...「ああああああーもういい」なんでよ~」

 「朝からお腹いっぱい!」

と上利は月間に呆れて言っていると体育教師の遠藤に呼び止められた。

 「遠藤先生。どうしたんですか?」

 「実は連絡するのを忘れてたんだが今日はクラス混合の男女別で体育の授業があるから、皆に伝えておいてくれ」

 「分かりました。伝えておきます。ところで先生、体育は何をするんですか?」

 「今日の体育は男子がバレーボールで女子がサッカーだ。男女の種目は違うが三人のチームに分けたミニゲームをするつもりだ。そのチームもクラス混合だと伝えてくれ。ちなみにチーム分けは出席番号だ。よろしく頼むな」

と言うと遠藤は職員室に戻った。

 「今日はサッカーだって!同じチームがいいね矢羽井さん」

 「話聞いてた?出席番号だよ。あなたは月間で伊織ちゃんは矢羽井だから無理よ」

 「大丈夫!違うチームでも心は繋がって同じチームだから!」

 「「うわ...」」

という月間にドン引きした二人と矢羽井は苦笑いをした。月間の態度は変わらず三人は無視していると保健室から可視が出てきた。可視に声を掛けると可視はゆっくり振り返った。

 「あなたたち...昨日の」

 「月間だよ!」

 「...そうね。彼女こんなにテンション高いの?」

 「気にしちゃダメよ」

 「そうなのね。覚えておくわ」

 「あれ?可視さん..怪我したの?」

 「私?違うわ...影野さんに使うの」

 「「「影野さん?」」」

矢羽井・上利・震川が首を傾げたが噂好きな月間は影野を知っているのか食い付いた。

 「今、影野さんって言った?影野さんて...あの」

月間が言いかけたがチャイムが鳴ってしまった。気になった三人だったが慌てて教室に向かった。


 体育の授業では月間は矢羽井と組めずポーカーフェイスをしていたが内心は荒れて貧乏ゆすりが止まっていなかった。そしてなぜか語呂合わせで上利と月間は同じチームになった。矢羽井は可視と影野と言う他クラスの女子と組みことになったのだが何故か影野の姿はない。可視に聞いたが影野について何も言おうとしない。可視のクラスメイトは何かコソコソ話していた。

 「やっぱり影野さんいないね」

 「なのにチーム組むとかありえないわ」

 「影野さんは...」

とぶつぶつ呟いている。影野について気になった矢羽井はもう一度可視に話しかけた。

 「ねえ、影野さんは休みなの?」

 「...いるよ。ここに」

と可視が指を指すと一瞬だが可視の隣に体育着を着た女の子が見えた気がした。女の子が見えるとコソコソ話していた女子はコソコソ話を辞めた。そのままミニゲームが始まった。矢羽井と可視しかいないが誰も何も言わず2対3で負けそうになる。その様子を観戦していた上利と月間は助っ人に入ろうとした。

 「このままじゃ不利よ!」

 「そうだね。影野さんがいないのに誰も助っ人しないんだろう?」

しかし、他クラスの女子に止められる。

 「どうして入る必要がいるの?」

 「だってこのままじゃ不利じゃない!」

 「何言ってるの?ふりじゃないよ。だって三人そろってるじゃん」

 「「え?」」

 「矢羽井さんも可視さんも影野さんもいるんだから必要ないよ」

と言われてしまう。二人は顔を見合わせた。

 「今なんて聞こえた?」

 「影野さんがいるって...皆には三人に見えるの」

 「おかしい...こんなことあり得ない。ねえ?もしかしたら誰かが体質を持ってるんじゃない?」

 「そうじゃないと考えられない...でも誰だろう?」

 「必然的に考えたら可視さんかな?」

 「確かに可視さんならあり得るかもしれない。試してみよう?」

 「そうだね。試すってどうやって?」

 「私に任せて!」

と上利は言うとスズを小さな声で呼んだ。するとスズがやってきた。

 「さすが幸運体質」

 「でしょ?」

 「でも、なんでスズを?」

 「スズは私達体質者しか見えないからスズに可視さんが反応したら体質者ってことだよ」

 「なるほど!天才。試してみる価値はある。スズお願いね」

 「はい、にゃん!」

と元気よく言うと矢羽井の所まで走っていった。

 「考えたね。スズを使うなんて」

 「これが一番分かりやすいから...それにいくらしっかり者の可視さんでも猫が飛び出して来たら驚くはず。しかもそれが自分にしか見えていなかったら尚更!」

 「なるほどね」

 「うん!そう言えば...影野さんについて言いかけたでしょ?影野さんって一体誰なの?」

 「それは...!!」

月間が影野について話そうとしたが矢羽井の方から悲鳴が聞こえた。二人が急いで駆けつけると可視と矢羽井が互いに怪我をしていた。しかし、二人は驚いた表情で固まっていた。遠藤が二人に声を掛け矢羽井を上利が可視を月間が支えて保健室まで連れて行った。保健室は養護教諭が出張で不在だが保健員の月間が鍵を開けた。

 「二人とも怪我を見せて...二人とも浅い傷でよかったね」

 「ありがとう月間さん」

 「ありがとう...」

 「いいの、いいの!私は保健員だから~それに矢羽井さんを治療出来て嬉しいし~」

 「そ、それならなにより...あの...もういいよ月間さん」

 「そう?ここも見てあげようか?」

と矢羽井の片腕を摩り体操着をはさみで切ろうとして震川に止められ上利にチョップされた。

 「痛いじゃない」

 「やめなさい!」

 「月間さんが言うと冗談で聞こえないし、別に意味で聞こえてくる」

 「あ、あの...震川君...胸触ってる」

 「えっ!ごめんごめん!」

月間から矢羽井を引きはがしたものの運がいいのか悪いのか矢羽井の胸を触ってしまった。震川は土下座をして謝った。矢羽井は許したが震川はセクハラをしてしまったと言い切腹しようとして止めるのが大変だった。

 「はあ...はあ...なんで保健室来ただけでこん何疲れるんだろう」

 「本当にごめんなさい...僕もう今日このロッカーから出ない」

と保健室のロッカーの中に入って言う。

 「震川君、私は怒ってないしロッカーから出てきて...実は保健室に震川君も呼んだのには理由があるんだ」

 「え?そうなの」

と顔を出す震川に上利と月間はツッコんだ。

 「「あ、出てきた」」

 「待たせてごめんね可視さん」

 「いえ...大丈夫」

 「実はね可視さんは..」

 「「そうなの!幽霊騒ぎの原因は可視さんなの!」」

 「...違います」

 「「え?」」

矢羽井に被さる様に二人は言うが直ぐに可視に否定された。何も知らない震川は訳が分からない顔をする。

 「え?どっち?なにが?」

と混乱し、矢羽井と可視は顔を見合わせる。

 「一から説明するね。まず、幽霊騒ぎの正体は可視さんじゃなくて影野さんだよ。影野さんもここにいる可視さんも私達と同じ体質者なんだ」

 「「「ええええ!」」」

 「ちょっと待って可視さんが体質者なのはなんとなく分かってたけど影野さんも!」

 「でも、姿が見えないよ!」

 「待って!影野さんって誰?」

と各々が混乱した。一連のやり取りを見ていた可視さんはため息をついた。

 「一から話します。私は人には見えないものが見える体質です」

 「そうなんだ...でも影野さんは?」

 「彼女はずっとここにいるよ」

と矢羽井が言うと三人驚きの声を上げた。矢羽井は目の前にする椅子に向って言う。

 「話して大丈夫だよ、影野さん。ここにいるのは種類はちがうけど同じ体質をもっている人だから」

と言うと椅子が動き出し、傍から声が聞こえた。

 「良かった...可視さん以外に体質を持ってる人がいたんだ。私の名前は影野。影野消子。私の姿は見えないとおまう。私は透明体質なんだ」

と影野は言った。


 数分前...矢羽井は違和感に気づいた。先ほどまで気配がなかったが一人多い気がして止まなかった。もしかしたら誰かの体質が働いているのかもしれないと思った矢羽井は可視を疑った。しかし、何かが違う気がした。試しに誰に居ない所にボールを蹴るとボールが一人でに動いたのだ。それを見ていた女子や遠藤たちは気にしていない。不自然な出来事に戸惑う矢羽井だったが一瞬だげボール蹴る少女が見えた。体育着には”影野”と見えた気がした。

 「影野さん...」

と呟いた矢羽井を可視は見逃さなかった。矢羽井は可視が周囲とは違う本当に気づき彼女がやはり体質者であると確信した。遠くから不審そうに見ている上利・月間が見え、体質者には体質がかかていないことに気が付いた。可視がゴールを決めようとした時、目の前にスズが飛び出し、矢羽井・可視・影野は驚きぶつかり軽いけがをした。すると効果がきれたのか皆先ほどのように戻った。

 「今...猫が」

 「スズ...なんでここに」

 「上利のアイデアにゃん!」

 「美里のアイデア?」

 「そうにゃん!伊織、やったにゃん。体質者を見つけたにゃん!」

 「え?やっぱり可視さんが?」

 「それだけじゃないにゃん!透明で見えないかもしれないけど伊織の目の前にいる彼女も体質者にゃん!」

 「影野さんも体質者...ってことはやっぱりそこにいるの?」

 「...」

 「矢羽井さん...あの...影野さんは...」

 「安心して...私も体質を持ってるの。私は不運体質。このスズは猫又で体質を集めてるの」

 「体質...」

 「そうにゃん!スズの姿は体質を持ってる人しか見えないにゃん!」

 「そうだったんだ。だから皆には見えなかったんだ。影野さん、大丈夫。矢羽井さんに話そう?私は見える体質。影野さんは...」

 「私は...影野消子と言います。私は透明体質です。でも...私の姿が見えたの?」

 「一瞬だけど見えたよ。詳しい話は後で話そう。怪我しちゃったし、美里と月間さん、それから震川君も読んで話そう」

 「うん...」

 「分かったわ」

と言うと上利と月間さんがやってきた。


 一方震川と言うと...こっそり上利に連絡を貰い教師に言い訳をして保健室に向かった。

 「せ、先生...お腹が張り裂けるほど痛いです」

 「何!それは大変だ。行ってこい!」

 「は、はい...」

体育館を抜けだした震川だが保健室から戻ってきた時に教師に弄られ恥ずかしかった。

 「震川!腹が張り裂けるほど痛かったらしいが大丈夫か!」

 「大丈夫です...」

 「そうか!よかった!皆!震川みたいに腹が張り裂けそうなる前に痛くなったらいえよ!」

 「先生~」

その日の放課後...震川はロッカーに閉じこもりすすり泣いた。後日ロッカーから泣き声が聞こえたという噂が流れたらしい...

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

不運体質 矢羽井さん! 時雨白黒 @siguresiguro

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ