第4話 月間さんはストーカー体質です

 ストーカーと聞くとあなたは何を思い浮かべる?ストーカーは一人の人に付きまとう変人?相手に付きまとったり追いかけたりして相手を追い込んでいくその様子を楽しんでいる変態...ストーカーにはそういうイメージがあるっていうけどそんなことはないわ。私は純粋にその人が好きで見守りたいけど自分が声をかけるのもおこがましいだけだと思うの。そう、見守っているのよ!見守っているだけなの...私は彼女を...

 「矢羽井さんを見守っているだけなの」

と、言う少女・月間透つきまとうは電柱から顔を出し矢羽井たちを遠くから見ていた。

 「今日も見守るからね矢羽井さん」

そう彼女は矢羽井伊織に付きまとうストーカーである。


『月間さんはストーカー体質です』

 「ねえ?美里、震川君少し相談があるんだけどいいかな?」

 「相談?伊織ちゃんがいうなんて珍しいね」

 「僕でよければ聞くよ」

 「実は...最近視線を感じるんだ」

 「「......」」

 「??あれ二人ともどうしたの」

矢羽井は二人にそう言うと二人は頷き矢羽井の腕を掴み職員室に向かい、上利が相談室の鍵を借りる。矢羽井は訳が分からず二人に連れられるまま相談室に入ると二人は鍵とカーテンを閉めた。

 「あ、あの...二人ともどうしたの?なんで相談室の鍵を借りたの?」

 「それが...あの...矢羽井さん」

 「ごめんね伊織ちゃん。あなたに謝らないといけないことがあるの。いい知らせと悪い知らせどちらの方から聞きたい?」

 「え、いい知らせは?」

 「四人目の体質を持つ人を見つけたの」

 「それはいいことだね...それで悪い知らせって何?」

矢羽井がそう聞くと上利は震川と顔を見合わせてため息をついた。相談室のロッカーに上利が近づくとロッカーが激しく動く出した。

 「え、ちょっと待って...中に誰かいるの?」

 「安心して......中にいるのは私たちと同じ体質を持ってる女の子だから」

 「??なんで閉じ込めれるの。可哀そうだから出してあげないと」

 「...出してあげたいのはやまやまなんだけど...ほら...ね?」

 「二人ともさっきから何を隠してるの」

矢羽井にそう言われた二人はため息をつき上利はロッカーをあげた。中にはクラスメイトの月間透がいた。

 「え、月間さん!」

 「彼女も同じ体質を持っているんだけど...その体質がやっかいで」

 「厄介って?」

 「最近視線を感じるって矢羽井さん言ってたでしょ?僕も上利さんに聞いたら上利さんも同じように感じてたんだ。でも、僕たちが一人でいる時や上利さんと二人でいるときは視線は何も感じなかった。僕らは誰かが矢羽井さんにつきまとってるストーカーがいることに気づいたんだ」

 「二人で犯人を捕まえてやろうと思って震川君と伊織ちゃんの家の傍で張り込んでいた時に捕まえたの」


**

 (回想は会話のみ)

 ストーカーを捕まえるため矢羽井の家の傍で様子を見ていた上利と二人と震川がいた。

 「いい震川君。私たちは伊織ちゃんの平穏のためにつきまとうストーカーを捕まえるわよ」

 「うん!でも...上利さん、ストーカーなんてどうやって捕まえるの?」

 「ストーカーは悪質でしょ。今は視線だけで済んでるけどいつ盗撮さてもおかしくないでしょ」

 「そうだね。ドラマとかだとよく家とかに侵入されて...写真を盗撮されたり...家で過ごしている様子を盗撮されたり...盗聴されたり...脅迫文が届いたり...!!矢羽井さんが...」

 「ドラマの見過ぎ...行くよ」

 「え?どこに行くのってそっちは矢羽井さんの家の敷地内だよ」

 「知ってるわ。だから行くんじゃない!ストーカー...いや全ても男のロマンでしょ?」

 「何が?」

 「覗き」

 「はあ!」

 「しー声が大きいよ。ストーカーに聞かれたら聞かれたら困るでしょ」

 「それ以前に矢羽井さんに知られたらまずいよ...覗いていないとはいえ...勝手に敷地内に入ったって知ったら僕...絶好って言われて友達じゃなくなったらどうしよう!」

 「矢羽井ちゃんも事情を離せば許してくれるしそこまでじゃないんじゃ」

 「分かってるよ...矢羽井さんは優しいからそんなことしないのは知ってる...そもそも僕らは矢羽井さんに付きまとってるストーカーを捕まえにいたわけだし何も悪いことはしていない」

 「そうよ。まあ勝手に敷地内に入ったら住居侵入してるけど...全部ストーカーは悪い!悪質ストーカーを捕まえるわよ」

 「うん!やろう」

二人は物陰に隠れると風呂場の前に誰かが立っていて堂々と覗いていた。直ぐに捕まえようかと思ったが証拠をつかむ必要がありストーカーが携帯電話を取り出した所で取り押さえた。

 「そこまでよ、ストーカー!」

 「!!」

 「矢羽井さんに付きまとうストーカーは捕まえてやる」

 「ちょっと待って」

 「ストーカーのいう事を聞くわけないでしょ」

 「そ、そうだ。だいたい覆面なんかして顔を見せろ」

震川が覆面を取るとストーカーの正体は同じクラスメイトの月間透だった。

 「月間さん!」

 「ストーカーの正体はあなただったの」

 「あなたたちは上利さんと震川くん!なんでここに?」

 「それはこっちのセリフよ。あなただったのね、最近伊織ちゃんにストーカーをしてたのわ」

 「ストーカーじゃない!私は四六時中矢羽井さんのことを見守っていただけでストーカーはしていない」

 「「それをストーカーっていうの/んだよ」」

と、二人でツッコミを入れた時スズがやってきた。

 「何やってるにゃん?」

 「スズ、実はこの子が」

 「何?この猫ちゃん」

 「「え?」」

 「あなたスズが見えるの?」

 「見えるけど...何で?」

 「にゃ、にゃん!君も同じ体質を持ってるにゃんね。君の体質はこうにゃん!」

スズが月間に自身の体質を言う。同じ体質を持つことを知った月間は喜んで協力すると言った。体質を持っていないならこのまま警察に突き出そうとしたが本人の許可もなく通報すれば自分たちも住居に侵入したことは変わらない。ここは穏便に話をして矢羽井にストーカー行為をしないことを条件にこの場は解散となった。


 「というわけで月間さんがストーカーの犯人で、彼女はストーカー体質だったの」

 「なんでストーカーしたかについて聞いたら...体質のこともあるけど...矢羽井さんと友達になりたかったんだって...それが体質のせいかストーカーしたみたいなんだ」

 「そうなんだ。状況は良く分かったけど...勝手に侵入してそんなことしてたの」

 「「!!」」

 「ストーカーを見つけるためとはいえごめんなさい」

 「私も勝手にごめんね伊織ちゃん」

 「二人が私のためにやってくれたことだからいいよ...ただ次は何かをするときはちゃんと言ってね。今回は何も怪我がなくてよかったけど本当に凶悪なストーカーならこんなもんじゃ済まないよ。怪我して最悪死んじゃうかもしれないんだから...」

矢羽井に泣き目でそう言われた二人は反省し改めて謝った。三人のことはいとど落ち着いたが問題は残った。

 「ひとつ聞いてもいい?」

 「何?伊織ちゃん」

 「さっきの話しを聞いて一度落ち着いたんだよね。ならなんで月間さんはロッカーに入れられてたの?」

 「今朝、さっそく約束を破って矢羽井さんをストーカーしようとしてたんだよ」

 「こんなこともあるかと思って早起きして見張ってたら案の定ストーカーしようとしてたの!だから後ろから捕まえたんだ」

 「そうなんだ...」

 「もう安心だからね!伊織ちゃん」

 「なんて言うか私の知らないところでこんなスリリングなことが起こってたんだね...」

 「でも大丈夫だよ!ストーカーの正体は分かったから!」

 「それはいいことだけど...月間さんのことどうする?スズに聞いたら元の性格もあるけど体質のせいもあるから体質を集めれば月間さんのストーカーも治るみたいだよ」

 「そうなんだ...でも...それまで月間さんをどうするか」

矢羽井と震川が悩んでいると上利が懐から更に紐を取り出した。

 「「え、美里/上利さん!」」

 「取りあえずすべてが終わるまではこのまま縛っておこう。そうすれば伊織ちゃんに何も被害が起きないから」

 「ちょ、ちょっと待って!それをしたら別の問題が!」

 「そうだよ上利さん!そんなことしたら逆に捕まっちゃうよ!」

 「ここは穏便にいこうよ」

 「とりあえず月間さんから話を聞いてみよう」

矢羽井はそう言いながら月間をロッカーから出して話を聞いた。

 「私は入学初日に道に迷っていた時に声をかけてくれたのが矢羽井さんなの。初めてで緊張していた私に声をかけてくれて手を繋いで教室まで案内してくれてね。そのあと席を確認して言ってくれたの。あなたの席はここだよって!そのあと私たちは二人で手を繋いで帰ったわ。あれはいい思い出だった...それから私は矢羽井さんと友達になろうと思っていたんだけど中々機会が無くて...せめて矢羽井さんのことを知ろうと思って見守っていたの」

 「そんなことがあったんだ。本当なの?伊織ちゃん」

 「...全然違う」

 「え?手を繋いでもないし...一緒に帰ったこともない」

 「違うの?だって月間さんが」

 「全部彼女の妄想だよ...本当は違う。あの日私は...」

 入学初日に矢羽井は教室へ向かおうとしていた時に月間を見つけた。周りをきょろきょろしていて道に迷ったのだと思ったが話しかける勇気がなかった。しかし、見て見ぬふりは出来ず声をかけたが手は繋いでいないし、席は座席表を指さしただけで何も言っていない。帰りは一人で帰ったので月間と手を繋いではいない。先ほど月間が話したことはすべて彼女の妄想である。

 「なるほど...全然違うじゃん!」

 「なんとなく月間さんと矢羽井さんの話を聞いてストーカーの被害に合う人とストーカーをする人の違いが分かった気がする」

 「...やっぱりこのままロッカーに縛ろう」

 「ええ!待って待って!分かったからもうしないから」

 「そう言ってするのがストーカーだし、月間さんあなたでしょ?」

 「上利さん...落ち着いて...ねえ?」

 「スズの話では体質のせいもあるし...体質を集めればいずれは回収できるからそれに賭けてみよう」

 「矢羽井さんがそう言うなら僕はいいよ」

 「そうね。伊織ちゃんがそうしたいなら私は従うわ。だからいつでも言ってね。このストーカーに襲われましたって言ったらすぐ駆けつけるから!」

 「僕は上利さんが時々怖いよ」

 「え?なんか言った?」

 「...何でもないよ!」

決して笑ってはいない上利に見られた震川は顔をそらした。二人がそんなやりとりをしている時に矢羽井は月間に話しかけた。

 「月間さん。二人の話からあなたのことを聞きました。私はあなたがストーカーをしていたことを訴えるつもりもないよ。ただ...もうこんなことしないで欲しいの。月間さんはそんなつもりはないと思うけど...すごく怖かったんだ。つけられたり視線を感じたり...ここ最近はずっと毎日怯えてたの。怖くて怖くて堪らなかった。もし、月間さんが私のことを思って見守ってくれるならこんなこと二度としないでほしいの。月間さんの気持ちは分かったから。今日からストーカーじゃなくて普通の友達になってくれないかな」

 「え...矢羽井さんと友達に?」

 「そうしたら見守る必要はないし...普通に友達として話せるでしょ月間さんは私のために一応見守ってくれたわけだし...私と友達になりたいと思ってくれたんだよね」

 「うん!」

 「なら、私と友達になろうよ」

 「いいの?矢羽井さん」

 「いいよ。月間さん」

 「ありがとう!」

矢羽井に差し出された手を月間は握り二人は友達になった。

 「やったー矢羽井さんとお友達になれた!約束するよ矢羽井さん。今日からストーカーはやめるよ」

 「本当!月間さん」

 「だって私たち友達だもんね」

月間が矢羽井と友達になったことで辺りが一瞬光だしその光は矢羽井の家で寝ているスズの元へ届いた。

 「これで一安心だね上利さん」

 「そうだね。伊織ちゃんがそう言ったから月間さんのストーカーも何とかなりそうだし」

上利は二人の様子を見て月間がもう矢羽井にストーカーをしないだろうと安心していたが...

 「ねえ矢羽井さん?」

 「どうしたの?月間さん」

 「友達になったわけだし...さっそく」

 「さっそく?どうしたの?」

 「今、矢羽井さんが履いてるパンツって何色なの?」

 「え...月間さん?」

 「...!!ねえ?上利さん。今、月間さん矢羽井さんにパンツの色聞いてなかった?」

 「き、気のせいじゃない?」

 「だから~ストーカーの一環じゃないの。ただ知りたいだけ...これは友達としてのスキンシップなの!という事で矢羽井さん!矢羽井さんのパンツを私に見せて!」

 「言ってる側から何言ってるのこの変態!」

上利は懐からハリセンを取り出し月間の頭を叩いた。

 「ぎゃふん!何するのよ。せっかくいい所なのに」

 「何がいい所でスキンシップよ。ただの変態じゃないの!伊織ちゃん...やっぱりこの変態なんとかしよう」

 「ええ...困ったな...」

 不運体質、幸運体質、ビビリ体質ときて四つ目の体質はストーカー体質だった。彼女はもう矢羽井にストーカーはしないと言ったがスキンシップというセクハラの被害に合いそうだ。

 「これからどうなることやら...」

矢羽井にスキンシップと称したセクハラをしようとする月間にそれを防ごうとする上利。二人を止めようとしたが二人に責められ矢羽井に助けを求める震川という地獄図をみて矢羽井は思わずそう呟いた。



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