第3話 震川君はビビり体質です

 僕の名前は...震川(ふる)実といいます。僕は...その...ビビりやすい体質で...ちょっとしたことでも怖がる性格なんです。そのせいか...中学生になったにのも関わらず学校に行くのに怖がってしまって今日まで不登校です。このままではいけないと思ってはいるものの...外に出ると怖いんです!外に出たら車に轢かれないかとか、怖いヤンキーの人にカツアゲされたらどうしようかとか、鳥の糞が降ってくるとか、考えたらきりがないんです。でも、そんなこと気にしないで学校に行くべきだと思ってはいるんです。学校に行けなくなった一番の理由は...いじめでした。あの時のことは忘れたくても忘れられない。嘲笑う声と見捨てた教師の冷めた表情が忘れられなかった。


 「だって~震川がいちいちビビるから悪いんだろ~?」

 「ねえねえ?震川~やってみろよ~土下座~」

 「気持ち悪い...話しかけてこないでよ。こっちもで同類だと思われるじゃない」

 「先生...あの...僕...いじめられてて...」

 「そんなことでいちいち言いに来るな。だいたい皆は友達のいないお前と遊んでやってるんだから別にいいだろ?いじめられてるんだったか?言っておくがいじめられるお前に原因があるんだよ。俺も忙しいんだ...もういいか?仕事の邪魔なんだよ。お前は...」

思い出したくもない昔を思い出してきていたフードを深く被った。落ち着いて深呼吸をして乱れる息を整えた後、鏡に映る自分を見てため息をつく。

 「僕が男なのにすぐ怖がるから...皆も面白そうに...」

 「大丈夫...大丈夫...はあはあ...酷い顔だな...大丈夫..また同じとは限らないし...行くだけ言ってみよう。そうだ!前にテレビでやっていたように見た目を変えれば好印象で良いらしいからやってみよう!」


そう思った僕はイメージだけでも変えようと前髪だげでも染めようとしたがいつものようにビビって手が滑り髪全体にブリーチがかかり思わず叫んでしまった。

 「あああああ!!失敗したああああああああああ!!」


 『震川君はビビり体質です』

 「痛いな...まだヒリヒリする」

 僕は結局、髪を金髪に染めてブリーチの痛みに耐えながら登校することになったのだが...学校なんて言ったことが僕は完全に迷った。人に聞くのが怖いし...聞こうとしたら僕の格好が悪いのかすれ違う人は皆僕を避けている気がする。やっぱり金髪にフードを深く被ってるのが悪いのかな...誰かいないかな...僕でも話しかけられそうな人は...その時、僕と同じ制服を着ている女子二人組を見つけた。片方は僕と同じ金髪でカチューシャをしている女の子だった。彼女の方は見るからに明るそうで話しかけ無くても分かる。彼女から滲み出る陽キャ感が怖い...。もう片方の彼女は...あれいない。さっきまで近くにいた気がするのに..

 「あれ?どこいって...」

 「あの...私たちに何か用...ですか?」

 「え?うわあああああああ!!!」

 「ご、ごめんなさい...驚かすつもりはなかったの」

 「い、いや...僕こそ...その...ごめん」

 「いいの...あの聞きたいことがあって..なんで私たちを見てたの?」

 「そっそれは...」

 「まさか伊織ちゃんのストーカーじゃないよね!!」

 「ち、違うよ!僕は...その...がっ学校に行き先を聞こうとしたんだ」

 「学校?」

 「そうなんだ...僕は...ずっと不登校で...でも学校に行こうとしたんだけど」

 「「だけど?」」

 「道が分からなくて...その...教えて...ほしくて」

 「......」

 「あの...ごめんね。急にこんなこと言われて嫌だよね。ごめ...」

 「いいよ」

 「うん」

 「え?」

 「だから伊織ちゃんも私もいいよって言ったの」

 「いいの?だって僕...見た目こんなだし...」

 「見た目気にしてしてたの?」

 「うん。前髪だけ染めようとしたらいつもみたいにビビっちゃって...」

 「それでそうなったんだ」

 「そうなんだ。やっぱりおかしいよね...」

 「似合ってるよ。私はいいと思うよ」

 「ありがとう...」

 「ねえ?もしよかったら私たちと一緒にいかない?私たちもこれから学校いくから。どう?」

 「いいの?」

 「一緒にいこう?私は矢羽井伊織」

 「僕は震川実」

 「私は上利美里だよ!さあ行こう二人とも」

 そう言った上利さんは僕と矢羽井さんの腕を掴んで歩き出した。学校に向か途中で二人と話した。楽しそうに話す会話を聞いていいなと心の中で思っていると僕に話が降ってきた。

 「ねえ?そう言えば聞いてもいい?」

 「何?上利さん?」

 「震川君ってどうして今まで不登校だったの?」

 「え......」

上利さんの言葉を聞いた時に昔のいじめを思い出してしまった。ど、どうしよう...こういう時なんていえばいいんだろう。なんでもビビっているから小学校の時に周りからいじめを受けたことがあって怖くて不登校になりましたなんて言えない。なんて言えば...本当のことをいたら二人も僕のこと...いじめるのかな...


 「......美里、そういうことは気軽に言っていいことじゃないよ。傷つく人は言葉一つで傷つくから...」

 「!!ごめんね震川君」

 「いいんだ。僕が...ビビりやすいからだめなんだ。そのせいで小学生の時にいじめられて...それが怖くて...なかなか学校に行けなくて...行かなくちゃいけないのは分かってるんだけど...怖くて今日までかかっちゃたんだ。馬鹿だよね僕...ちょっとしたことでビビっちゃって...そのせいでいじめられて」

矢羽井さんと上利さんにいじめられていたことを話した。二人は話し終わるまで真剣な表情で聞いてくれた。


 「そんなことないよ」

 「矢羽井さん?」

 「そんなの震川君のせいじゃないよ。怖がったりビビったりすることは誰だってあるよ。私だって怖かったから...」

 「いじめなんて最低な人間がすることだよ。震川君の話しを聞いたけど悪いのはいじめた側だよ。許せないよそんなの!」

 「ありがとう。矢羽井さん、上利さん。二人に話したおかげで楽になったよ」

 「ならよかった...」

 「スズもよかったにゃん!!」

 「え、スズ!」

 「どうしてここに?」

 「それはにゃん~」

突然白い猫が現れてしかも話した?僕は驚いて固まっていた。

 「白猫...何で言葉を話して...」

 「それはにゃん~」

 「まって、震川君。スズが見えるの?」

 「そうみたい..何でこの猫話して...」

 「にゃあ~はスズっていうにゃん。にゃあは猫又で...あれ?どこいったにゃん」

 「震川君が消えた」

僕は咄嗟に看板の裏に隠れたが数分で上利さんに見つかった。驚きビビってしまったことを謝るわけを聞いた。

 「成程...体質を集めるために...」

 「そうなんだ。スズが怖がらしてごめん!!」

 「いいんだ。ちょっと驚いただけだから...」

 「その割には離れてにゃんね」

 「そりゃあそうだよスズ。いきなり現れたら誰だって驚くよ...」

 「ねえ?スズが見えているってことは震川君も体質を取ってるんでしょ?」

 「え?僕も?」

 「そうにゃん!君が持っているのはビビり体質にゃん」

 「ビビり体質...」

 「そうにゃんよ。にゃんを見れる人は皆体質を持ってるにゃん」

 「体質を二人はどんな体質を持ってるの?」

 「私は幸運体質だよ!」

 「私は不運体質なんだ」

 「不運体質...そうなんだ。じゃあ今まで大変だった?」

 「うん。トラブル続きで今まで大変だったよ毎日怖かったし、友達のことでいろいろ悩んで...だから震川君の気持ちが分かるよ。友達に裏切られたり嫌われるのは辛いよね。私もその痛みを知っているから友達なんて作るつもりもなかった。一人で生きていくんだって思っていたけど..周りを見て思ったんだ。友達がいて羨ましいって私も友達が欲しいなって思ったの。同時に私と友達になってくれる人がいるのかと思ったら作るのが怖くなった。美里と出会ってこの子と友達になりたいって思えた。でも、美里は私と違って明るくて周りと直ぐに打ち解けた。私が友達になっていいのかなって思って声をかけられなかった。でも、美里は私と友達になってくれたんだ」

 「友達を作るのは難しいし怖いけど友達といると楽しいって初めて思えたんだ。だから震川君...もしよかったら私たちと友達にならないかな...」

 「え...友達に?」

 「うん、私と友達になってくれないかな?」

 「矢羽井さんと友達に...」

矢羽井さんは僕に手を差し伸べた。僕は彼女を見つめた。矢羽井さんは僕と同じように形は違えど友達で傷ついたことがある人だ。人の痛みを知っている彼女なら友達になれる気がした。僕は...彼女の手を掴んで言った。

 「僕でいいなら...僕矢羽井さんと友達になるよ!」

 「ありがとう。震川君」

 「よかったね伊織ちゃん!それに私もこれでお友達~と!これからよろしくね」

 「よろしく。矢羽井さん...と上利さん」

 「よろしくね...震川君」

僕が手を握ったことで光り輝きスズと言われたの猫又が喜んだ。

 「にゃん~!これで三人目にゃんね~」

 「そうだねスズ!この調子で頑張ろうね伊織ちゃん、震川君」

 「うん、そうだね」

 「ねえ?」

 「「どうしたの?震川君」

 「僕たち何か忘れている気がしない?」

 「何かって...!!学校だ!」

 「今何時って...9時過ぎてるよ!!」

 「遅刻だ!行かないと。伊織ちゃん、震川君走るよ!」

 そう言った上利さんに僕と矢羽井さんは腕を掴まれ走ったが間に合わず案の定遅刻しました。不登校の僕が登校してクラスメイトや担任の先生は驚いたけど差別することなく温かく迎えてくれて安心しほっとした。しばらく登校するのが怖かったが二人のフォローもあって僕のビビり体質は受け入れられた。いじめのことを気にしていたがこのクラスではそう言うことは無く良かった。今では学校に行くのが楽しみなんだ。

 朝起き制服に着替えて待ち合わせの場所に行く。手を振ると矢羽井さんが手を振り返してくれる。僕は元気に挨拶をした。

 「おはよう...矢羽井さん、上利さん」

 「おはよう!!震川君」

 「おはよう...美里、震川君」

 「さあ~いこう二人とも!!」

 「ええ」

 「うん」

僕らが元気に返事を返すと上利さんは僕らの手を引いて歩き出した。二人のおかげで怖かった学校に行くことが出来て本当に良かった。僕はビビりやすい性格で迷惑もかけるかもしれないけど二人のために出来ることをやっていこう

 「ありがとう矢羽井さん、上利さん」

と、僕が言うと二人は笑った。


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