第2話 上利さんは幸運体質です
「にゃあ~と一緒に100個体質を探してほしいにゃん」「にゃあ~と君は友達にゃん」「これからよろしくにゃあ~」
夢を見た。白くて言葉を話すの猫又に話しかけられて、友達になって...それから私と同じ体質の人を見つけるという不思議な夢を。そんなはずがないし、都合に言い夢を見たのかもしれない..目を覚ませば夢が覚めていると思った。きっと目が覚ませば...目が覚めて欠伸をして窓を開けたら朝日がまぶしかった。制服に着替えて白い猫又がいて...
「あれ?猫又?」
見間違えかと思いもう一度見ると元気そうに手を挙げた。
「おはようにゃん伊織~!!」
「ああ...夢じゃなかった...あれは現実だったんだ!!」
「何言ってるにゃん?伊織~時間やばいにゃんよ~」
「え、あああああああ!!遅刻だああああああ」
言われたように時間を見ると登校時間ギリギリだった。私は慌てて家をでて学校向かったが案の定遅刻をした。この遅刻が彼女と出会うきっかけになるとはこの時思いもしなかった。
『上利さんは幸運体質です』
私は上利美里、中学一年生です。父親の転勤で引っ越してきました。ここは環境もいいし人も優しそうな人も多そうでよかったです。今日は転校先の学校で自己紹介をするのでとても緊張しています。上手く自己紹介できるか不安です。それに...今ある問題が起きてしまいました。それは...道に迷いました。
「ここ...どこ?慣れないせいか迷った。どうしよう」
誰も歩いている様子はなく近くに地図があればいいのに何もない。こういうように困ったときは祈るようにしています。私は運が良い方で困った時も何かと回避してきました。道が分かるようないい方法は...と考えていた時同じ制服を着た女の子が走っているのを見かけて声をかけようとした時、体に衝撃が走ったような感覚に陥りました。女の子も驚いたのか走るのを辞めて立ち止り私と目が合いました。
「あの...私は上利美里って言います」
「え?あ、えっと..私は矢羽井伊織です。あの...こんなところで何してるんですか?学校は?」
「最近ここに引っ越してきたばっかりで道に迷って...」
「そ、そうだったんだ...」
「あなたは?」
「私は...!!」
その時学校のチャイムが鳴り女の子・矢羽井さんは私の手を掴むと走り出した。
「あ、チャイムが...」
「チャイムが...ごめんね!!遅刻する~」
彼女に手を引かれて走っていると目の前でおかしなことが起こった。目の前でガラスが割れたり、目の前で看板が降ってきたりしたけど何故か運よく当たらず業者の人が看板を掴んで事が済んだ。彼女は驚いていたが気にせず走る続けた。その後も不運なことが起きたけど回避することできてよかった。
「あの...ごめんね。勝手につかんで走っちゃって」
「そんな謝らないで!学校まで案内してくれたもん」
「でも...途中でおかしなことが起きたでしょ?」
「あれ?でも何とかなったし大丈夫!!」
「なら、よかった...」
「もしかしてあんなこと良くあるの?」
「え...」
「だってガラスが割れたり看板が落ちてきたのに驚いてなかったから...むしろ助かった時に驚いた感じで」
「それは...」
「にゃん~と、ここに二人目の体質の子を見つけたにゃん~!!」
「「!!」」
矢羽井さんは下を向いて何かを躊躇っているようだった。まずいことを聞いてしまったのかと思い謝ろうとしたら目の前に白猫が現れた。スズをつけて尻尾は一つじゃなくて二つある。白猫を見ていたら抱きしめたい衝動に駆られて思わず抱きしめた。
「か...か..」
「か?にゃんにゃん?」
「か、可愛い~すべすべで可愛い~~!!」
「にゃん!!」
「あ、上利さん!!スズが、スズが苦しがってるから!!」
「ご、ごめんなさい。可愛いものを見るとつい...」
「そうなんだ...ってスズが見えるの?」
「スズってこの子?」
「そうだよ。普通の人には見えないのに」
「そうなの?私にははっきり見えるよ?」
「それってまさか...」
「そうにゃん!!この子も特別な体質をもつ人間にゃん」
「特別な体質?」
「そうにゃん。君は日々過ごす中で何か変わったことは起きなかったにゃんか?」
考えてみれば今まで疑うほど運が良かった。まるで幸運であるかのように...これも体質。今まで起きたことを猫ちゃんことスズちゃんに説明するとスズちゃんは飛び跳ねて言った。
「それはまさに体質にゃん!!君の場合は幸運体質にゃんね。伊織と真逆にゃんね」
「矢羽井さんと真逆ってことは矢羽井さんも体質を持ってるの?」
「そう...私は上利さんと真逆で不運体質なんだ」
その言葉を聞いた時、彼女が驚いたことや躊躇ってことも納得した。私はこの体質でいいことがたくさんあったけど彼女は今まで大変な目に合ってたのかもしれない。
「こんなことを言っても信じてもらえないかもしれないけど...私はこの猫又のスズと一緒に100個ある体質を集めてるんだ。それをスズは回収しなくちゃいけなくて...その方法が友達になることなんだ」
「友達に?」
「そうなんだ。100個集まるまでは回収することは出来ないみたいなんだけど...ごめんね急に...もしよかったら...私と友達に...」
「私は...」
矢羽井さんは真っ赤な顔をしてこちらに手を差し伸べた。彼女の話が嘘じゃないのは分かってるし本当だ。現に先ほどまで猫又のスズと普通にはなしていたし、私はこの子と...友達に...
「こらああああああ!!矢羽井、何分遅刻してると思ってるんだ!!」
突然職員室のドアが開くと教師の一人に怒鳴られて驚いた。
「「!!」」
「すみません」
「まったくお前は...!君は例の転校生か」
「転校生?」
「昨日話しただろう?今日から矢羽井、お前と同じクラスメイトになる上利美里(生徒)だ」
私はお辞儀をすると彼女も軽く会釈した。早く教室に戻るよう言われた私たちは教室へ向かい彼女は軽く怒られた後中へ入っていった。いよいよ私の番で緊張したけどもう一人じゃない。彼女がいるから...そう思うと安心できて緊張はしなかった。
「私の名前は上利美里です。よろしくお願いします」
と、言い自己紹介は無事終わって安心できてよかった。担任の教師が私の席について話している時に、心の中で彼女と一緒がいいと祈っていたら通じたのか担任は手を叩いて私に言った。
「そうだ、矢羽井の隣の席が空いてるからそこでいいか?」
「はい、大丈夫です」
私は言われた通り席に着いた。彼女は驚いていたけど声を掛けたらお辞儀をしてくれた。直ぐにHRから授業が始まった。
そして放課後になるとクラスメイトがたくさん話しかけてきて彼女と話たいが中々離せず彼女は教室を出て行ってしまった。直ぐに追いかけようとしたけど直ぐ見失ってしまった。クラスメイトに彼女に事を聞くと皆口々に答えた。
「矢羽井さん?知らないな...」
「多分図書室じゃない?たまに委員会で見かけるけど」
「ありがとう。行ってみるね」
教えてくれた女の子に礼を言って図書室にに行くが矢羽井さんは見当たらず学校司書の人に聞くとついさっき出ていったと言われて慌てて下駄箱に向かった。矢羽井さんの下駄箱を確認すると靴があった。
「もしかしたらまだ、教室にいるのかもしれない」
と、思い教室にいくと猫又のスズと矢羽井さんが教室にいた。矢羽井さんは自分の席で塞ぎこんでいた。教室に入ろうとしたが矢羽井さんたちの会を聞いて中に入れなかった。
「ねえ、スズ...上利さんと友達になれるのかな」
「なれるにゃんよ。伊織ならにゃん」
「...今朝あんなこと言っちゃったけどよく考えたらおかしいよね。急に体質の話なんかしてさ。あんなこと言っても普通信じるわけないじゃん。やばい奴だって思われて終わりだよ」
「そんなことないにゃん、上利はいいやつにゃんよ」
「分かってるよ。明るくて元気でさ...私と正反対。私は上利さんと違って明るくないし、暗いしさ...」
「そんなことにゃいにゃん!!」
「スズは優しいね。私...今まで友達なんかいたことないんだよ。この体質のせいって訳じゃない。人が怖いんだ...友達になるって言ってくれる子はいたんだよ。でもいつも言われるんだ...あんたなんか友達じゃないって...私の周りにいると誰かが巻き込まれるし、いつか取り返しがつかなくなる...それが怖いんだ。どうせ嫌われて、傷つけていなくなるなら...最初から居なくていいって思ってたんだ」
「伊織...ごめんにゃん、スズがちゃんと見ていなかったからにゃん!!」
「違うよ。体質なんて関係ないよ...最初からダメなだけだからさ。スズと出会って思ったよ。一人ってこんなに寂しくて...友達を作るのがこんなに怖い事なんて知らなかった。こんな私だけど...上利さんと友達になれるかな...」
と、言う矢羽井さんは大粒の涙を流しながら手で涙をぬぐっていた。その姿を見た時、私はたまらず教室に入った。勢いで大きい声で矢羽井の手を掴んで叫んだ。
「矢羽井さん!!」
「!!上利さん...えっと...」
「なれるよ、なれる。私があなたの友達になってあげる。約束する矢羽井さん。私はあなたのことを知らない...あなたが過去にどんな目に合ってきたのかは分からない。でも、私はあなたと友達になりたい!!」
「でも、私は不運体質で巻き込んだりひどい目に合ったりしたら」
「そんなのくそくらえだよ!!だって矢羽井さんは悪くないでしょ?悪いのは不運体質で矢羽井さんじゃない。一人で苦しむんじゃなくて私は矢羽井さんの支えになりたい。二人なら不運体質なんて怖くないよ。私は幸運体質だよ。不運なんて私の体質があれば平気だよ」
「上利さん...でも私...」
「一人が寂しのも怖いのもよくわかるよ。私もここに来た時不安だったからさ。でも矢羽井と出会ってそんな不安無くなったんだ。友達を作るのは怖くないし、友達は楽しいってこと私が教えてあげる。だから...私と友達になってください」
と、手を差し伸べて頭を下げた。矢羽井さんは躊躇っていたがスズに後押しされ私の手を握ってくれた。
「私で...いいの?」
「うん、矢羽井さんがいいの!!」
そう言った時矢羽井さんは照れたのか顔が赤くなった。私と矢羽井さんが手を握ったことで二つ目の体質が集まり辺りが光輝いた。
「これで2個目の体質が集まったにゃん!!」
「すごいね...話はほんとだったんだ」
「嘘みたいだよね?」
「うん。でも、私たちが友達になったのは本当だよ」
「そうだね。上利さん」
「美里...」
「え?」
「美里でいいよ」
「なら、私も伊織でいいよ。美里これからよろしく」
「私も伊織ちゃんって呼ぶね...これからよろしくね伊織ちゃん!」
私たちはお互いの名前を呼び合い笑いあった。放課後...スズと伊織ちゃんからいろいろな話を聞いた。体質の話は他の人には秘密だとかスズについてとかその他もろもろだ。転校先で多くの不安はあったけどもう大丈夫...これから彼女と伊織ちゃんと一緒に頑張っていこう!なんたって私たちは友達なんだから!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます