可愛いのは残酷

猫が亡くなった。

中学の時からかっていた猫だった。


お風呂から上がると、動かない猫を抱きしめる母がいた。


急ぎ足で駆けつけた。でも時間はゆっくりと感じた。


まだ暖かさが残る。だが、肉球は真っ白に染まり冷たさがましていた。大粒の雫がポロポロと愛猫に落ちてゆく。


死とはこういうものだと訴えかけるように、猫の目は開いたまま。


「生きることをよく頑張ったんだね」

そう投げかけて、目をとじらせた。


小さいダンボールの中に入れ、冷たくなった愛猫を撫でていた。


虚無感。


猫を火葬する時間になった。私は火葬場に行けなかった。行きたいけれど行けなかった。心が行けないと思ったのだ。


未だに死んだ猫の柔らかい毛並みと冷たさが蘇る。

死はそういうものなのだ。

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未完成 たぬまる @suzutamaru

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