永遠の愛
katsumi1979
第1話
それは冬の出来事だった・・・。
俺と彼女は今年の春にやっと結婚式をやることが決まった。
思えばここまで決まるのに道のりは険しかった。
彼女の両親からなかなか認めてもらえなかった。
当時俺と彼女はまだ20代前半だった。お互い若すぎるというのもあってなかなか認めてもらえなかったのだ。
そして10年の月日が経ち自分の収入も安定し彼女の両親にもやっと認められるようになった。
今日は独身最後の彼女とデートだ。
お互いの仕事の関係上なかなか会えないが、夜になり俺は前から予約していた
高級レストランで彼女と食事を取ることになった。
「いよいよ、私たち結婚式だね」
「ああ、お互いいろいろあったね」
そう言う会話から切り出し、今までの辛かった話や楽しかった話などをした。
「ねぇ、
「しないよ。俺はずっと
だからいろんな壁も二人で一緒に乗り越えられたんじゃないか」
俺がそう言うと、恵美は少し目が潤んでいるように見えた。
一番幸せを感じるときはお互いが愛し、そして愛される時だと俺は思った。
やがて食事が終わり、夜も更けたので俺はタクシーを拾い恵美を乗せた。
「じゃあ、気をつけて」
「うん、隆司も気をつけてね」
そう言って恵美と別れた。
◆◆◆
そしてその深夜、彼女の両親から信じられない出来事が俺の耳に入ってきた。
恵美を乗せたタクシーが交通事故を起こし重体となってしまった。
急いで俺は恵美が運ばれた病院へと駆け寄った。
恵美はすでに手術室で治療を受けていた。そしてその場所には彼女の両親の姿も見えた。
「なんで・・・どうして・・・」
「聞くところによると交差点の場所でトラックと衝突してしまったみたいなの」
恵美の母親がそう答えた。
「そんな・・・」
俺はそのあとの言葉も続かなかった。
今、何も出来ない自分がとても腹立たしい。この手で治してやりたい・・。でもそれはできないのだ。医師を信じるしかなかった。そして9時間にも及ぶ手術の末、その結果が知らされる事となった。
「おい、恵美は?! 恵美はどうなったんだよ!」
俺はその医師に激しく問いただした。
「やめなさい、隆司くん! 落ち着きなさい!」
彼女の父親が俺を必死で止めようとした。
そしてようやく落ち着いた頃合いを見て医師が口を開いた。
「ご家族の方だけこちらに来て頂けないでしょうか?」
医師は両親だけを呼び俺は拒否される。
「待て! 俺にも聞く権利はある!」
「申し訳ございません、ご家族の方以外はご遠慮願います」
医師がそう言うと、俺は恵美にもしものことを想像してしまった。
「こちらへ」
医師がそう言うと彼女の両親は医師のあとについて行った。
◆◆◆
もしもの事・・・。俺が考えていたそれが的中した。
恵美は脳に致命傷のダメージがあり悪い事に打ち所も悪く帰らぬ人となった。
信じられなかった。信じたくなかった。まさかこんな事になるなんて・・・。
そして恵美は自宅へ引き取られ、恵美の両親は関係者に連絡し、早急に葬儀の準備へと取りかかった。
通夜までに少し準備期間があり、通夜の日時が決まるまで安置所、つまり遺体を一時的に保存する場所だ。
俺はそこで泣き崩れた。しばらくそうしてると、葬儀の方の心遣いからか、今この部屋では俺と恵美が二人きり。
恵美の顔はとても綺麗だ。今死んでいるとは思えなかった。
ちょっと打ち所が悪かっただけで動かない、話さない。
そしてお互い二度と笑えあえない。
「恵美・・・」
その名前だけをずっと恵美に向かって言い続けた。すると突然恵美が目を開き俺の体に勢いよく抱きついてきた。もの凄い力で離すことができない。
「めぐ・・・!」
俺は冷たい恵美の手が咄嗟に口を塞がれる。
自分の体温がどんどん奪われる。恵美の目は瞬き1つせず、真っ赤に充血しており、
恵美は一言だけ言った。
「離してほしい?」
か細い弱々しい声で、そう言われた俺はゆっくりと首を横に振る。すると恵美はにっこりと微笑む。恵美は一人で死んでゆくのが寂しかったのだろう。そう思った瞬間俺はどんどん体温が低下し始め、意識もだんだん遠のく。
普通に考えれば絶対おかしな話で、こんな事をされれば必死で暴れ、もがこうとするだろう。だけど恵美の寂し気な一言と真っ赤な目を見たときそれは出来なかった。
そう考えると俺は一人で死んでゆく恵美の姿がどうしても耐えられなかった。
恵美が俺と一緒に死ぬことで幸せを感じるならそれを望みたい。
俺らはどんな時でも二人で乗り越えきた。だから俺は恵美の希望通り叶えたい
それが求めていた恵美からの愛だったら俺は受け入れる。
俺ら2人に与えられた永遠の愛だから・・・。
俺が死んだあとは何らかの形で自殺したという事で処理された。
またこの話は口外されることもなかったという。
あなたは彼の死を受け入れられますか?
ー完ー
永遠の愛 katsumi1979 @katsumi2003
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