【ぼくと彼女のたった一つの約束】 ~大好きなきみの笑顔を絶対に曇らせたくない~
kazuchi
〇
――僕には名前がない。
それに
だって面白いんだぜ、ずっと追いかけても飽きない最高の友達!!
そいつが、僕の目の前にいてくれることに感謝した。
僕は叫び声を上げながら、そいつを追いかけたんだ。
おーい待ってくれよ、よしっ、絶体に捕まえてやるぞ!!
そいつは僕を
はあっ、はあっ、全然捕まえられないや…… だけど最高に楽しい!!
何だ、この気持ちは、すごーい、凄いや!!
僕はテンション
ぐるぐる目が回るよ、そいつ、って言ったから怒ってるのかな?
じゃあ訂正する、君、ちょと待ってくれよ、僕と一緒に遊ぼう。
君ともっと仲良くなりたんいんだ……。
やりたいことがある、君を枕にして眠ったら気持ちよさそうだ。
いつのまにか僕は鬼ごっこに疲れて眠ってしまったらしい。
むにゃ、むにゃ、喉が渇いたな。だけど面倒くさいや。
もう少し眠っちゃおう。僕は寝るのも仕事なんだ……。
僕のもう一つの仕事はちょっと面倒くさい。だって気持ちよく寝てるのに、
いきなり叩き起こされて、身体を触られまくるんだ。
まあ、おやつを貰えるから別にいいや。大好きなミルクの味がする、
サクサクした丸いおやつ。
でも食べ過ぎには注意だ。お腹がごろごろしちゃうから。
だけど美味しいからいっぱい食べたい。
僕は、沢山おやつを貰う方法を編み出したんだ。
どうだ!! 凄いだろ、特別に教えてあげようか?
それはとにかく動き回ってやんちゃにすること。
そうすれば自分のお部屋にすぐ戻れるし、
いつものお姉さんからおやつを貰えるんだ。
だけど寂しいのは、どんどん僕の仲間が減っていくんだ。
ここに来てから何人とお別れしたんだろう。
仲の良かったあいつ、ちょっと虫が好かなかったあいつ、
みんな遊び仲間だった……。
ある日、僕はお引っ越しをした。
身体が大きくなったかららしい……。
みんなのいる相部屋から一人部屋に移動だ。
うるさくないのはいいけど、寝心地が悪いんだよな、ここは。
僕は身体も大きくなってきた、目の周りの毛で見えずらいんだ。・
前はお姉さんが僕をお風呂に入れてくれて、シャンプーをした後、
床屋さんしてくれたんだけど。最近はあまり床屋さんしてくれないな、
気持ちいいからもっとお風呂に入りたいんだけど。
ここではちいさい子のほうが優先なんだ。
僕は一番お兄ちゃんだから我慢しなきゃ。
一人部屋に移ってから、めっきり遊んで貰えなくなったな……。
知らない人に抱っこされるのも減った。
ご褒美のビスケットも少なくなったんだ。
前に聞いたことがある。大きくなったらここから出てかなきゃならないって。
どこに行かされるかは知らない……。
僕もそろそろ出て行かなきゃいけないのかな?
怖いところだと嫌だなあ……。
大きくなった自分の足を見てそう思った。
ここでは僕が一番お兄ちゃんだから……。
*******
「――お母さん、私この子がいいな」
ん、久しぶりに声が掛かったぞ、何日ぶりだろう。
でも、またすぐにお部屋に戻されるんだろうな。
「
顔を上げると女の子と目が合った。黒目がちの可愛い娘だ。
まあ僕のほうも目はくりくりして大きいけど。
真剣なまなざしで僕を見ている。女の子が満面の笑顔で言った。
「この子、可愛いいな……」
いつものお姉さんが僕を部屋から抱きかかえる。
「はい、おしりを持って。気を付けてね」
僕は女の子に抱っこされた。
小さな手で頭をナデナデされる。気持ちいいな。
僕の友達も思わずピコピコ動いてしまう。
君とも仲良しになったんだよね。
身体が大きくなって、噛んだり舐めたりして遊べるようになったし。
女の子の手が偶然、僕の友達に触れてしまう。
あれ? 全然嫌じゃない。前にぎゅっ、て握られたときは、
飛び上がるほど嫌だったのに。
分かった。この子は優しく握ってくれるんだ。
だから大丈夫なんだな。
「真奈美ちゃん!! ワンちゃんの
女の子のお母さんが慌てて注意する。
「大丈夫ですよ、最近はタッチングと言って子犬のうちに、
身体中を触ってあげると、飼い主さんとの関係も良くなりますから」
いつものお姉さんが二人に説明してくれる。
「ねえ、ワンちゃん、ウチに来ない?」
女の子が僕の目を見つめながら呟いた。
「お母さん、私この子に決めた!!
名前も考えてあるんだ、ショコラって……」
名前のなかった僕は、その日からショコラになった。
「ショコラくん、真奈美とずっと一緒にいてくれる?」
真奈美ちゃんは僕にそう言ってくれた……。
「ショコラくんは、今日から家族なんだから!!」
僕は決めた!! この女の子をずっと守るんだ。
悲しいこと、つらいことから全部。
もし僕が先にお空にいっても、
上からずぅっと見守ってあげる。
僕を家族にしてくれたお礼に……。
特別に僕のお友達も握らせてあげる!!
僕はしっぽを最上級にピコピコと振った。
むぎゅう。
「ショコラくん、ありがと……」
真奈美ちゃんの手の中で、僕の友達も嬉しそうだった……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます