最終話 魔物の都市へようこそ!


 グモブ公爵を成敗してから二年が経った。


 奴は色々と非道なことをするので有名だったのもあって、それを成敗した俺達は国中から英雄だともてはやされた。


 都市アルダがドラゴンの呪いから救われたことも、その英雄譚と共に加速度的に広まっていく。


 結果として今のうちはドラゴンが落ちるよりも人口が増えている。


 しかも公爵家の領地も全て奪ったので、今のアルダ家は全盛期の記録を更新中だ。


「はっはっは! 笑いが止まらんなぁ! もう向かうところ敵なしだ!」

「ライ、調子乗り過ぎ」


 俺は屋敷の私室で豪華な椅子に座って、無駄に高いワインを飲んで豪遊している。


 横にはドレス姿のサーニャ。彼女とは先日結婚したのだ。


 元々義理の妹だったので生物学上も問題はない! 倫理的にもセーフだろう!


 公爵を倒して右手うちわ状態なので、我が道を好きに生きることに決めたのだ。


「ところでライ。ドラゴンさんがもっとお酒欲しいって」

「……どんだけ食うんだあいつは!?」


 都市アルダは超金持ちになった結果、今までは食費の関係で養えなかった魔物も召喚している。


 ドラゴンも一頭だけだが呼んでしまった。空を飛べるので航空便として使える上に、戦争時には超強力なコマとなるからな。


 それにドラゴンってすごくロマンあるからつい……。


 まあ呼び出したドラゴンがものすごくがめつくて、人間よりもかなり経済に詳しいのは驚いたが。


 しかも契約に超うるさい。なんか以前に他の人間に仕えていたことがあって、その時と比べて待遇が悪いだとか言ってくる……。


 なんか以前はドラゴン専用の厩舎をいくつもあったとか、毎月一度は酒飲み放題があったとか……どんなVIPだそれは。


「それとデュラハンさんがまた伝説の鎧が欲しいって。もう普通の鎧じゃ満足できないの」


 デュラハンはグモブ公爵の切り札、竜殺しのヴァーダルを殺した英雄として祭り上げられた。


 だがその時に使った鎧や剣は倉庫にしまっている。


 理由は簡単だ、普段から使っていると劣化していくからである。


 ここぞの時に使い物にならないと困るので、普段はしっかりと手入れだけして封印しているのだが……デュラハンはすごい鎧に心を奪われてしまった。


 あいつからすれば伝説の鎧は、世界トップクラスの豪邸のようなものだからな。


「大金を得た成金が生活基準落とせなくなったやつだな」

「どうするの?」

「放っておけ、いつか慣れる」


 あの鎧レベルのものはそうそう作れない。


 あれだってドラゴンの骨や鱗を大量に使って製造した逸品だ。


 そんな物を何度も要求されても困るので、デュラハンにはあの鎧の存在を忘れてもらおう。


 他にもすごい魔物は大勢呼んだ。海のチート魔物であるリヴァイアサン、神に近い獣である麒麟など。


 今の都市アルダは空にドラゴン、海にリヴァイアサン、陸に麒麟という最強態勢だ。


 もううちにちょっかいをかけてくる奴はいない。


 迂闊に手を出して来たら完膚なきまでに粉砕すると宣言してるしな。


「それとアダムス教会がペガサス様を一頭、譲り受けられないかって言ってるよ」

「……ちゃんと環境を整えるなら献上するって言っておいて」


 それでもアダムス教会には頭が上がらないままだが。


 あそこは大陸中に強い影響を持つからなあ……。


 残念ながら全て思い通りにとはいかないが、大抵のことは望むように進められる。


 もう俺に怖いものは魔物しかいない! 


 魔物? あいつらは未だに俺の思うようにならないよ……今日も魔女が新鮮な人間が数体欲しいとか言ってきたよ。どうしろと。


「他の魔物の要求も全部言うね。ドワーフが超高級なお酒いっぱい、ケルベロスはお菓子いっぱい、サキュバスは男性ホルモンムンムンのいい男」

「最後どうしろと」

「レイスは幼女の身体、ケンタウロスは絶世の美馬、ユニコーンと吸血鬼は処女いっぱい」

「少しは要求を自嘲しろよ!? 幼女の身体って何するつもりだ!? 絶世の美馬とかお前らの美醜分からん! ユニコーンと吸血鬼は性癖丸出しじゃねーか!」


 本当に魔物たちも少しはこう手心を……都市アルダが発展していくにつれて、彼らの要求もエスカレートしていくのだ。


 そのうち女体盛りとか言われそう……辛い。そんなの俺が欲しいわ。


「それでどうするの?」

「レイスには幼女の人形、ケンタウロスは近くにあるの雌馬いっぱいの牧場に連れてけ、ユニコーンと吸血鬼には結婚してない熟女……いや殺されそうだからやめとこ……犯罪者の女をあてがってやれ。処女かは知らん」

「酷い」

「こんなの真面目に対応できるわけないだろ! サキュバスはなんか性欲強そうな男を紹介してやれ!」

「わかった」


 まったく……人類蔑みの令にも限界はあるんだぞ。


 いくら魔物様と言っても、何の罪もない人間を犠牲にはできない。


 それをしたら民衆が逃げて行ってしまうからなぁ……人権? そんなの知らないよ。


「アルダ様、国王がいらっしゃいましたね。お出迎えして欲しいね」


 オバンドーが部屋に入ってきて来客を知らせてくれた。


 国王は何度も俺に王宮に来るように言ってきたのだが、散々無視していたらとうとう出向いてきた。


 彼は俺に対して恨みを持っている。公爵は国王の親族で仲が良かったからな……。


 なので下手に王宮に行くと暗殺の危険があるので、ずっと上洛を拒否していたのだ。


 だが今の都市アルダはこの国にとって凄まじく影響力のある存在だ。


 もはや経済の中心と言っても過言ではなく、王であろうとも軽視できるような存在ではない。


 領主である俺が王と会うのを拒否していると、国としても物凄く困ってしまう。


 他国への外聞があるからな。国王と俺の不仲説が広まると、周辺諸国が俺にすり寄ってきて独立などを促しかねない。


 だが俺が王宮に行くのを完全に拒否しているので、とうとう王が仕方なく面会しに来たというわけだ。


 俺としても国が割れて騒動が起きるのも面倒なので、アピールとして会ってやることにした。


 そして都市アルダの入り口に出向くと、王の豪華な馬車が止まっていた。


「……来たか。遅いぞ! この余を待たせるとは!」


 王は馬車から出ずに窓から顔を覗かせて叱責の声をあげてくる。


 なるほど、随分と偉そうな態度だ。ならば立場を教えて差し上げなければならない。


「失礼しました。もてなしの準備をしていましてね」


 俺が指を鳴らすと、周囲から一斉に魔物たちが現れた。


 空からドラゴンやペガサスの大軍が飛来してきて、陸には大量のケンタウロスが走り寄ってくる。


 更に俺が指さした先の海からは、クラーケンが海面から現れてその巨体を晒していた。


「なっ、なっ……!」


 王はパクパクと口をあけて金魚のような馬鹿面を晒している。


 ここで舐められたらまた公爵みたいに、下手にちょっかいをかけてこられないからな。


 俺は王に対して勝ち誇った笑みを浮かべていた。


 これでもう公爵の再来はないだろう。国王も公爵ばりに評判が悪い人間だが、やったらどうなるかわかってるよね? 


 そんなことを考えながら俺は大きく息を吸った。


「魔物の都市へようこそ!」


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これで完結です。

短い字数での完結なのもあって少し終わり方に失敗した気もしますが……楽しく書けました。


あまり評価は芳しくなかったですが、個人的にはこれまでで一番好きに書けました。

また新連載も考えていますのでよければよろしくお願いいたします。

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借金まみれの貴族ですが魔物を使ってチート内政します! 純クロン@弱ゼロ吸血鬼2巻4月30日発売 @clon

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