第2話 始まり

この社会は腐っている。いつだって権力のある人の影に怯えながら機嫌を取り、下手に周り、相手のために自分の考えをどんなに素晴らしいものでも笑顔で握りつぶす。そんな社会のなにがいい?どんな価値が存在する、友情?そんなものはただ怯えて弱いものが他の力に打ちのめされないよう集まっているだけだ。この世に幸福なんてのは存在しない。ああ、母さんが自らの身を挺して教えてくれた最大にして最後の教えだよ。

母さんのお葬式が終わり僕は親戚の家で生活することになった。知らない家の知らない部屋で初めて母さんの仏壇に手を合わせた。知らないうちに、奥歯を噛み締めていたようで顎が痛い。幸い、この家はもともとの家と近いので必要になったものはすぐに取りにいけるし、不自由ない生活を送らせてもらっていた。

「瑛太くん、明日から学校よ。楽しみでしょう」

僕の気持ちを何一つとして理解していない叔母さんが、言ってくる。

「うん。楽しみ」

何が、楽しみでしょうだ。行きたくない、この生活になんの意味がある?僕がこの生活をしていることで得する人間はいるのか?僕を唯一愛してくれていた母さんはもういないんだ。

 次の日、叔母さんと学校に必要なものを買いに行った。学校が同じなので買い足さないといけないものはあまりなく、あまり顔を合わせていたくなかったのでありがたかった。そんななにもない、くだらない、いらない日も何も感じることはなく過ぎていった。更に次の日、僕は夢を見た、どうやら昼寝が長くなってしまったらしく今はもう5時を回っていた。母さんが呼んでいる夢を、僕は母さんが好きだった。このくだらない社会にいるくらいならと、家を出た。少し歩くと川が流れている。少し前にダムの放流でもあったのかいつもより水位が高く少し濁っているが、橋の上からでも川底の石は見える。まるで磁石になったかのように僕は流れるように橋に足をかけた。あとは体重を移動させるだけ。やっと体が重力にそって落下し始めた。

ガシッ

落下が止まった。それしか感じなかった、ゆっくりと後ろを振り返ってみると息を弾ませたきれいな女子が僕を抱きかかえている。そして、よいしょっ、という掛け声とともに僕を橋の上に転がした。少し擦りむいた気がするが別にいい、ゆっくりと上を向くと

「あんた何考えてるの!このまま落ちてたら死んでんだよ!」

と思い切り怒鳴られた。どうでもいいだろ。

「あなたの命はあなただけのものじゃないんだよ!」

うるさい、僕の命は僕のだ。母さんもいない。

「もし、わたしが追いついてなければ、、、」

恩を売りたいのか・誰が助けろっていた。

「って、あれ斎藤くん?」

だからなんだ、おいその目をやめろ。僕だと気づいて、憐れむような目をするな。

「その、お母さんのことは聞いたよ。残念だったね、これからも、人生を大切にしないと。お母さんのためにも。」

そんな事を言いながら、手を差し伸べてきた。

「うるさいっ、そんな目で僕を見るなっ!母さんのことをわかってるふうに言うな!何がお前にわかる、僕の何もわかっちゃいない!」

差し出された手をはねのけながら叫んだ。思いっきり睨むと少したじろいだ。その間に、僕は背を向けて走り出した。その場には、驚き立ちすくむ女子と桜が夕日に照らせれていた。

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桜のように僕達は 雨坂ナヲ @amasakanao

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