家庭内追放1

 俺は一応、有事に備えある仕込みをし部屋に入るとまず、長いよるのと思われる髪の毛が散乱していた。

 そして、奥のベットで義母が力ずくでよるの髪を手で握り引っ張ている。

 俺でも引いちゃう程には地獄絵図な光景が広がっていて、一瞬呆然とてしまった。

 鬼畜なぼっちを引かせるとは流石だぜ...!

 だが、流石に助けなければいっけないので俺は義母を抑えつけた。

「やめろー」

 それでも義母は髪を引っ張るのをやめない。

「おい、聞こえてるのか!?おい!」

 よるは怯えているからか、無言で義母は興奮して我を失っているのか反応がなかった。

「おい!やめろ!」

 何度、言ってもやはり反応がないので致し方ないだろう。

 俺は義母の手首を強く握りありったけの力を出し、よるから引き離した。

 それと同時に義母が壁に吹っ飛んでいき、時間差でバンっと身体と壁とがぶつかる音が聞こえてきた。

 夜の髪に関しても義母はとっさのことで、判断を見誤ったのかよるの髪から手を離したのでおそらくある程度は無事だろう。

「おい!?何があった!」

 おそらく、寝ていたであろう父があの音で起こされたのか、物凄い剣幕でやってきた。

 部屋の中にはぴんぴんしている息子と髪の毛を抜かれ、俯いている娘と吹っ飛ばされ泣き崩れている妻。

 ...だんだんと先の展開が見えてきた。

「おい!血の繋がりがないからか!」

 父親が全体重を掛け頬に拳をぶつけてきた。

 脳が揺れ、意識が一瞬飛ぶと気がついた頃には俺は義母の近くに吹っ飛ばされていた。

「なあ!?再婚した俺がわるいのか?なあ!」

 馬乗りになり、何度も何度も殴られ続ける。

「痛いよ。やめてよ。ごめんなさい」

「よると母さんの方がいてえんだよ!」

 口内が傷ついたのか、口から多量の血が出てくる。

「そんなに夏目が好きか!?」

「うんn!」

「お前!」

 さらに殴る力が強くなる。

「許してください!」

「なら、なんで俺の娘と妻を傷つけてんだよ!」

 何度も何度も何度も何度も。

 とにかく殴られ続ける。

「おい!なぜ、あんなことをした!」

「もう、いっか」

「おい!答えろ!」

 俺は右手に力を籠め、喉ぼとけを思いっきり殴った。

「ぅぅぅぇ!!!」

 父は苦しそうに喉ぼとけを抑えている。

「そもそも、悪いにはお前の馬鹿女だろ?」

 俺は父の両肩を抑え、腹の中心部に向かって膝蹴りをした。

 すると父は床に物凄い勢いで倒れ込んだ。

 正直、以前よるの同級生の男子の身ぐるみ剥がした時はあまり気が進まなかったが、今回は身体が喜んでいる気がした。

 感情としては理解が出来ないが、心臓の高鳴りが止まらない。

 俺は先ほどの父を真似て馬乗りになり、何度も殴り続けた。

「やめ...」

「お前も薄々気づいてたんだろ?」

「な、なにがだ」

 俺は父が抵抗できないように父の手を抑えつけた。

「義母さんがよるが一週間引き籠っている事に深く関わっているってことにだよ」

「そ、そんなわけ!」

「あるね。だから、さっき晩飯の時も頑なに俺の意見を否定したんだ」

「...」

 この沈黙はもう肯定しているのと同じだろう。

「これなぁーんだ」

 俺はズボンからスマホを取り出した。

 さっき、下半身は攻撃されなくて助かった。

「お、お前...!」

「ボイスレコーダーでーす」

 青ざめている父を横目に再生ボタンを押したのだった。



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